フィンジのクラリネット協奏曲
ワーグナーばっかり聴いていたら2006年が明けてしまった。ちょっとモタレ気味の頭を子供と入浴してスッキリさせ、さあまたワーグナー、じゃなくて、ここは爽やかに英国の音楽。
新年の夜中に、静やかで美しすぎる名曲、ジェラルド・フィンジのクラリネット協奏曲を聴く。フィンジは1901年にロンドンに生まれ、1956年に白血病で亡くなった薄幸の作曲家で、作品数は少ないが、悲しいまでに美しくもはかない曲ばかりを残した。(没後50年)その中でも、この協奏曲はモーツァルトを思わせるような、長調でありながら「死」までも見つめた、澄み切った曲調で覆われている。伴奏は弦楽だけで、淡々と歌うクラリネットの背景で、ソロにも増して魅力的なフレーズを奏でてゆく。
すばらしいのは、第2楽章のアダージョで、目をつぶって聴いていると、甘く切ない死を待受けるかのような音楽に吸い込まれそうになってくる。いつまでもこのまま浸っていたい。フィンジはいつも死を予感しつつ作曲していたという。こんな音楽を聴いていると孤独に浸ることで、自分が見えてくるような気がしてくる。
じっくりと感じいった後の第3楽章。一転して、弦のピチカート乗ってクラリネット飛翔するような明るさに満ちた旋律を奏でる。でも時おり立ち止り振り返ることもやめない。ひっそりと自分を見つめながら聴く桂曲なのである。
CDは女流、シア・キングのクラリネットがやさしく敏感な演奏で、何度も飽きずに聴かせる魅力に満ちている。今回は2回続けて聴いてしまった。顎に手をあてて思索にふけっていると、娘が来て「何してるの?」、私は「いや、その・・・・・・」
さあ、今年もいい音楽を聴いてがんばるぞぉ。
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コメント
こんばんは。
yokochanさまの素晴らしい企画と選曲に啓発されて、私も久しぶりに聴いてみましたが、本当に素敵な曲ですね。
改めて実感しました。
ちょうど私の今の年齢のときにフィンジが亡くなったのかと思うと、感慨無量です。
投稿: romani | 2007年9月24日 (月) 21時06分
romaniさん、こんにちは。
フィンジはそくそくと迫るような抒情と哀愁に満ちた音楽を残した人ですね。
この作品は、私の大いなるフェイヴァリットのひとつです。
ずっとそばにおいておきたい桂曲ですね。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2007年9月24日 (月) 22時43分