ビルギット・ニルソンを悼む
ドラマティック・ソプラノの代名詞でもあった「ビルギット・ニルソン」が亡くなったそうである。本日、車の中で聴いていたFM放送で知った。1月11日に葬儀が行われたとのことしか案内がなかったので、何日に亡くなったのかは不明。1918年生まれであるから87歳ということで、歌手生命をかなり長くまっとうし、残りの人生も充分に生き抜いたといえるであろう。
私にとっては、またお気に入りの巨星が世を去ったことで寂しい限りである。時間の流れは止められないのは当たり前ながら、往年の名歌手達の歌で開眼してきた音楽に付随する声のイメージは、オペラの諸役にすり込まれ、他の歌手ではもの足りない思いを抱かせるに至っている。
そんな代表例が、この「ニルソン」である。「イゾルデ」と「ブリュンヒルデ」はこの人の声がまずありきなのである。次いで「サロメ」「トゥーランドット」といったところ。
ニルソンの声の魅力はその強靭さにある。「はがね」のような怜悧で力強い響き。完璧にコントロールされた幅広いダイナミズム。力強さばかりでなく、弱音においても明瞭に響く歌声は時に優しく、時に怪しい。そんなニルソンだから、意外とレパートリーも広く、ワーグナーはもちろん、R・シュトラウス、プッチーニ、ヴェルディ、モーツァルトもうまかった。マゼールとのトスカや、メータとのアイーダなど、私は未聴ゆえ是非聴いてみたい。
DGに残した録音の聴きどころを集めたCDを視聴してニルソンを偲んだ。ベームとのイゾルデが圧倒的にすばらしい。加えて、72年録音のメトロポリタンのガラ・コンサートでのこれまたベーム指揮する「サロメ」が超絶的にすばらしい。役柄上はうら若い少女ながら、54歳とは思えぬ凛々とした声は驚きで、ベームの燃えるような熱さと相まって「萌えー」の世界なのである。泣きすさぶ金管が鳴り終わらぬうちに興奮した聴衆が叫びだしている。
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コメント
こんばんは。
拙ブログにコメントをいただきありがとうございました。
>力強さばかりでなく、弱音においても明瞭に響く歌声は時に優しく・・・
そうなんですよね。強音から弱音までレンジが凄いですね。それと、彼女の暖かい人柄。誰かのドキュメントで、ニルソンのアパートの部屋までカメラが入ったことがあるのですが、何ともいえない素敵な人柄が滲み出ていて、ますます好きになりました。
本当に残念ですね。
投稿: romani | 2006年1月18日 (水) 20時02分