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2006年2月19日 (日)

ヴェルディ「オペラ合唱曲」 アバド指揮

Abbado_verdi
















 アバドのスカラ座時代の第1弾、「スカラ座のアバド ヴェルディ合唱曲集」を聴く。
74年頃の録音。レコーディングから遠ざかっていたスカラ座の久々のレコードでもあり、ロッシーニの専門家扱いされていたアバドのヴェルディ・デビュー盤なのだ。
 当時イタリアは経済的にも厳しく、欧州でも力が弱く政治的にももめごとばかりの国であった。イタリアオペラの録音は、ロンドンで行うのが安くあがり、常識であった。そこに登場したこの1枚は、本場スカラ座の実力のほどをまざまざと見せ付け、アバドのヴェルディの神々しいすばらしさを示してくれた。
市や国が助成を削減するばかりで、音楽の危機を顧みようとしない中で、アバドは辞表を叩きつけたり、数々の運動を行っていた時期だ。アバドを愛する楽員や名歌手達が、賛同し署名運動などを行い、アバドはスカラ座を去らずに以降「シモン」「マクベス」「仮面舞踏会」「アイーダ」「ドンカルロ」「レクイエム」などの超絶名演を残した。

   ヴェルディ オペラ合唱曲集

    クラウディオ・アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団
                    ミラノ・スカラ座合唱団

                       (1974 スカラ座)

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  一聴、合唱団の素晴らしさに唖然とする。
特に力強い男性合唱はこうしてまとめて聴くと薄味の日本のそれとは比較にならない。
言葉への感情移入が強く、自分達の歌を歌っている意識がそうさせるのだろう。オーケストラも全く同じで、その生き生きとした響きは血が通っていてまるで血管が浮き出て見えるようだ。
アバドはこうしたメンバーとまるで一体化し、強弱を見事につけ、ほんの数分の合唱ナンバーを迫真に満ちたオペラの一場面を思い起こさせる演奏にしている。
この人の特徴である、「極度に抑えた弱音の中で歌う」場面が随所に見られる。ことに「ナブッコ」の「行けわが思いよ、金色の翼にのって!」はソットヴォーチェで歌い始め、盛り上がり、感情の高みに達してゆくさまが見事。

スカラ座を去ったアバドは、ウィーンに行き、スカラ座にはムーティがやって来る。
ムーティもすばらしく勢いや歌心では勝るが、アバドほどの緻密さはなかった。
二人の不仲はジャーナリズムのなせるところもあるが、音楽性の違いから来たものでもあろう。
この二人のヴェルディを「マクベス」あたりで聴いてみようか。

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