ハンソンの交響曲第2番「ロマンティック」 スラトキン指揮
アメリカの作曲家、ハンソンの交響曲を聴く。
「ロマンティック」のタイトルは作曲家本人が付けたもので、いかにも近代保守派のハンソンらしい親しみやすく、メロディックな作品である。ハンソンは北欧系の家系らしく、一連の北欧作曲家のもつほの暗さやも併せ持っていて、単に映画音楽風のチープな作風に終わっていない。またアメリカ人作曲家風の、遠くを見つめるようなノスタルジーにも満ちていて、飽きさせない。
構成は、フランクを思わせるような3楽章形式で、冒頭のモティーフが全曲に現れ、循環して行く。美しい旋律が全曲に渡って満ちており、すべてがポジティブで明るい。
1930年、クーセヴィッキーとボストン響の初演という。ストラヴィンスキーやバルトークの活躍中の同時期を考えるとえらく保守的だが、アメリカという国を考えると順当な作風なのであろうか。おもしろいのは、ホルンが勇ましく鳴り響く3楽章。解説によれば、北欧のヴァイキングの角笛なのだ。その勇ましさも、ノスタルジックで甘味な甘味な主題にとってかわり、最後は輝かしくも、懐かしい雰囲気のうちに終わる。
演奏は、レナード・スラトキン指揮するセントルイス響。96年の録音だが、やや潤いのない音質ながら(EMI)、こうした曲をやらせると抜群にうまい。うまいというより、自分達の日常の音楽をさりげなく奏でている様子で、わざとらしさが全くない。スラトキンは最近BBCを辞めてどうするのか?ワシントンでは今ひとつだし。本来はニューヨーク・フィルあたりで頑張るべき人なのに、変に裏街道を選んで行くヒトなのだ。音楽を楽しく聴かせる才能にかけては、ヤンソンスに匹敵する名匠だと思うのだが。
このCDには、もうひとつ素晴らしい曲がカップリングされている。「バーバーのヴァイオリン協奏曲」なのだ。こちらも米国保守系の大家。この作品は私は、エルガー、ディーリアス、ウォルトン、コルンコールド(オーストリア)らと並ぶアングロサクソン系の美しきヴァイオリン協奏曲達として好んでいる。2楽章なんぞの泣き節はもう堪らない。
エルマー・オリヴェイラというアメリカ人のソロは、スラトキンの名伴奏に乗って万全のものだ。
AMERICA THE BEAUTIFULというシリーズの1枚、ジャケットも美しい。
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コメント
この作品、というかこのディスク以前から気になっていました。聴いてみたいなぁ。
かつてはそうでもなかったような気がしますが、ここしばらくで米国という国にはすっかり「保守的」というイメージが定着しましたね。もっとも米国の保守性はきっと今に始まったものではないと思いますが、色々なことの結果、最近ではそれがストレートな印象につながって来たのでしょう。
ところでEMIの録音ってボリューム感に欠けること多くないですか。。。?
投稿: リベラ33 | 2006年2月10日 (金) 16時28分
こんばんは。そうですね、自由の国「アメリカ」は保守の国「アメリカ」の印象が勝りますな。ご指摘の通り、この盤も録音がよろしくないです。平ったい響きが不満です。でも何故か耳に残る旋律に満ちた桂曲であります。
投稿: yokochan | 2006年2月11日 (土) 01時21分
yokochan様今晩は。このスラトキン盤は今廃盤のはずです。中学生だった80年代後半に欲しくて仕方がなかったCDです。yokochan様は持っておられたのですね。当時の私はレニーのマーラーだのドラティのバルトークだのポリーニのショパンだの欲しいCDが他に沢山あってこのスラトキンのハンソンには手が出したくても出せませんでした。気がついたら廃盤になっていました。つい最近アルテノヴァから出ているモントゴメリー指揮イェーナフィルの廉価CDを入手し、20年前から聴きたいと思っていたこの交響曲がようやく聴けました。感無量です。シベリウスやラフマニノフが好きな人なら素直に楽しめるのではないかと思いました。保守的だけどパワフルで浪漫的ですね。
余談ですがyokochan様はフルトヴェングラーの交響曲をお聴きになったことはありますか?3曲ありますが、1番と2番が凄く浪漫的でいい曲です。どちらもシベリウスとラフマニノフとブルックナーとフランクを足して割ったような長大な交響曲です。私の愛聴盤は1番がアレグザンダー・アルブレヒト指揮ワイマール歌劇場で2番がバレンボイム&シカゴです。小説にたとえるとトーマス・マンの初期の作品のような北独逸的な憂愁を感じさせます。
これも余談ですが、yokochan様はブルックナーのロマンティック・フリークスでいらっしゃるそうですが、私は最近はケルテス&ロンドン響の演奏に魅せられています。64年の録音ですが、音質は驚異的なまでに良く、全曲を60分程度の快速で演奏しています。ベーム&ウィーンフィルやブロムシュテット&ドレスデンよりも好きになってしまいました。ケルテスさん、どうしてあんなに早く亡くなってしまったのでしょうね…泳ぐならもっと安全なところで泳いでほしかったです。
投稿: 越後のオックス | 2008年12月 1日 (月) 22時08分
越後のオックスさん、こんばんは。
ハンソンのこの曲、結構好きであります。
勢いで、シュウォーツとシアトルの他の番号も揃えましたが、こちらが一番いいです。
ちなみに、最近このスラトキン盤は廉価盤で復活してます。(http://www.hmv.co.jp/product/detail/2715390)
最近、ガンゼルとシンシナシティの1枚も入手しましたので、いずれ再登場させます。
おや、フルトヴェングラーですか!聴いたこともないのに、ちょっと苦手意識を持ってましていけないことです。
お薦めとあらば、聴きましょう。
>シベリウスとラフマニノフとブルックナーとフランクを足して割ったような長大な交響曲です<
あちゃ、好きなところを突いてます(笑)
そうそう、ケルテスのロマンテックは聴いたことがないのですよ。これまた、そそられますな。
あのテルアビブの事故は惜しまれます。
あれがなければ、今はウィーンの重鎮でありましょう。
投稿: yokochan | 2008年12月 2日 (火) 23時00分