ミュンシュのラヴェル「ダフニスとクロエ」
寒い。熱い音楽を、と思ったが時間も深夜。音を絞っても「熱い」ミュンシュの指揮で「ダフニスとクロエ」全曲を聴いてしまおう。
1975年だったと思うが、ラヴェル生誕100年に、小沢征爾がサンフランシスコ響と凱旋して全曲を演奏した放送をNHKで観て聴いた。それが、第二組曲しか聴いたことがない自分の全曲初体験で、小沢の米国オケを統率するカッコイイ指揮ぶりと、音楽のめくるめく素晴らしさに猛烈に引かれた記憶がある。
同時に購入したレコードが、このミュンシュ/ボストン響の1枚である。RCAレーベルから出ていた廉価盤であったが、55年の録音に係わらず音が良く、私の安い装置でも実に良く鳴ってくれた。このCDでもそこそこのレヴェルで復刻されている。
何よりも、音楽の勢いが素晴らしい。一筆書きの見事な書画を見る思いだ。そればかりでなく、神秘的な部分の多いこの作品の「静」の部分も克明に描かれていて、ボストン響の名手達が鮮やかに織り成す「動」の部分との対比が実に豊かなのである。
「夜明け」の部分にすべり込む雰囲気の見事さ、その格調の高さ。「無言劇」の精緻さと「全員の踊り」の熱狂。こんな演奏を実演で聴けたら、もう興奮の坩堝だろう。
ミュンシュは68年に77歳で亡くなっているが、もう少し生きて「パリ管」とドイツ物やラヴェル・ドビュッシーを残して欲しかった。私は廉価盤だったことやコンサートホール会員だったこともあって、ミュンシュの音楽をいろいろと聴いてきた。その真髄は、ラヴェル・ベルリオーズとドイツ物にあるのではないかと思っている。
そして、ついでに一言。小沢もあの頃はよかった。早く体調を直して、ミュンシュの後を継ぐような「勢い」を取り戻してもらいたいものであります。
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