シベリウス 交響曲第5番 サロネン
シベリウスの交響曲は、コンパクトな長さのために7曲がCD3枚に収まり、全曲を揃えやすい。2番しか振らない指揮者以外は、全曲やってしまう指揮者が多いと思う。ましてフィンランドや北欧出身者となれば、お得意のレパートリーとして、全曲取り上げるのが当たり前的になっている。
しかし、フィンランド出身のイケメン指揮者エサ=ペッカ・サロネンはシベリウスの交響曲に対して慎重で、「レミカイネン組曲」や協奏曲以外は、この5番しか録音していない。ロスアンジェルス・フィルという明るい色調のオケのシェフだから、機が熟すのを待っているのか?唯一ある、5番のCDを久しぶりに聴いて期待が膨らむばかりだ。
オーケストラはフィルハーモニア管で86年の録音。もう20年も経つのかと、驚いた。
ともかく若いイメージがあった、サロネンも48歳(同年代!)。作曲家でもあるだけに、耳が良く切れ味鋭い。音楽は生き生きと弾力性に富み、明晰だ。こんな印象は、ネットラジオで最新のロス・フィルライブを聴いても、まったく変わらない。ある意味で変わらない「ブーレーズ」を意識させる。「トリスタン」を劇場でやってしまうところも似ている。
このシベリウスは、オーケストラのニュートラルで機能的な響きにも助けられ、実に透明感に満ちた演奏だ。音響はやや薄いが、都会的なスマートさに満ちていて、お国ものなんていう言葉とは縁遠い。熱くならず、クールにシベリウスの書いた音符を忠実に再現している、そんな演奏なのだ。こうした細身のシベリウスは、バーンスタインやバルビローリの情熱からは遠くに位置するもので、男性的な一筆書きのデイヴィスや、お国もの没頭方の先達ベルグルンド・カム・セーゲルシュタムとも違う。同年代のサラステは近いものあるが、お国もの系の存在だろう。シベリウスはこれだから楽しい。
牧歌的だが、変則的な作風で聴かせ所がなく、盛り上げどころも少ない。エンディングも難しい曲だ。変に盛上げようとしたり、一部を強調したりせず、こうした特長をそのままサラッと演奏してしまったのが、このサロネン盤だ。そのクールな指揮ぶりが心地よく、さりげない抒情をとおしてシベリウスの本質が紡ぎ出されるようだ。
ロスアンジェルスのシベリウス全集に期待しよう。
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コメント
そうですね。公式には5番しかないのは寂しい限り。でもライヴではベルリンPOとの7番がありますね。なぜもっと録音しないんですかね。ちなみにベルリンPOとの5番のライヴもありますがこれがスゴイ!サロネンにはぜひ全曲録音してもらいたい。
投稿: einsatz | 2006年3月28日 (火) 01時27分
7番ライブがあるんですか?私は4番ライブのテープ持ってますが、現代音楽のようにクールです。いっそのこと、ベルリン・フィルで全曲を望みたいところですな。
投稿: yokochan | 2006年3月28日 (火) 22時00分