ブルックナー 交響曲第6番 シュタイン
ブルックナーの交響曲のうち、2番と6番はやや人気が薄く、CDも少ない。
私には、これらの2曲は、ヨーロッパのアルプス地方の田舎町の教会や野原の風情を他曲以上に感じられ、好んでやまない。今回聴いた6番は、大曲5番と後期3曲の間に挟まれた明るく美しい作品である。
これまで、ヴァントやサヴァリッシュ、カイルベルトで聴いていた。しかし、ホルスト・シュタインがウィーン・フィルと2番と共に録音した演奏は74年頃に出たが、以来寄せ集め全集以外は廃盤で、数十年渇望していた。これが聴きたくてならなかったのだ。
昨年、豪ユニバーサルからCD化されたが、あっという間に売切れ、全く手に入らない状況で、あきらめていたところ、1ヶ月前、出張先のHMVで発見したときは、思わず店頭で「おおーっ」と口走ってしまった。
72年の録音だから、シュタインはバイロイトでリングを指揮し始めた頃。ワーグナー指揮者としてのキャリアを確立すると共に、ウィーンでは国立歌劇場であらゆるオペラを手掛け、ウィーン・フィルともグルダとのベートーヴェンですっかり息のあっていた頃だ。
しかし、ブルックナー生誕150年の記念の年に、ウィーン・フィルによる全集を目論んだデッカ・レーベルであるが、未録音の不人気の2・6番を任されたシュタインは貧乏くじを引かされたように感じられた。
今回のCDジャケットがあまりセンスよくないので、その頃のシュタイン写真をFMfanの切抜きから。センスが向上しているかというと、シュタインのお姿だけに何とも・・・・・。
演奏は、待った甲斐あり。全体に速めの心地良いテンポに乗り、明るく開放的な雰囲気で、ウィーン・フィルのホルンやオーボエの特徴ある響きがこれでもか、というくらいに味わえる。殊更に素晴らしいのは2楽章のアダージョ。ひなびたウィンナ・オーボエの悲しい旋律に始まるが、第二主題に至っては絵のように美しい音楽が展開される。第1番や第2番の緩徐楽章とともに、自然を賛美するブルックナーの最も美しい場面だと思う。
これらの緩徐楽章の素晴らしさに目覚めた頃、私は初めてヨーロッパを経験し、ドイツやスイスの自然の風景を実際に見て、ブルックナーのこうした音楽が身近に響くのを感じた。
1楽章や3楽章は幻想に満ちた圭曲だが、終楽章はあっけないくらいに終わってしまう。ここで後期様式のような多層的な音楽が書かれていたらすごいことになっていたであろう。
しかし、そうでないところがこの曲の魅力。
シュタインの演奏は、こんな隠れた6番の魅力をウィーン・フィルと共に見事に味あわせてくれる。ゾフィエンザールでのデッカ録音も素晴らしい。
残る第2番もなんとかして欲しいぞ。
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コメント
ブルックナーの6番というとあまりブルックナーに縁のない人が主に演奏するパターンが多いかもしれませんね。バーンスタイン、ムーティ、ノイマン等々。
投稿: einsatz | 2006年3月23日 (木) 01時40分
あれっ!バーンスタインに6番あるんですか?驚きです。ノイマンもマーラー系だし、そういえば、ブルックナー系でない人々ですね。今度探してみます。
投稿: yokochan | 2006年3月25日 (土) 00時44分
こんにちは。ご参加ありがとうございます。
このシュタインのCDは、図書館で借りてきて、mp3化して保存してあります。
ウィーン・フィルの《ブル6》って、やっぱり珍しいですよね。オケとして、あんまり演奏したことがないのではないのかなあ?
次回は、そのウィーン・フィルですので、ご縁があれば、またご参加下さいね。では!
投稿: miwaplan | 2006年10月 3日 (火) 23時12分
miwaplanさん、こんばんは。TBしっぱなしで申し訳ありません。そう、ウィーン・フィル唯一の6番でしょうね。ついでに2番も。鶴首のシュタインの2番の復刻です。
ウィーン・フィルはすごいことになりそうですね。
今から企画を練りましょう。
投稿: yokochan | 2006年10月 3日 (火) 23時53分