トルステン・ケルル テノールアリア集
第2東京タワーの計画が発表された。墨田区押上のあたりに世界一・610mのタワー計画で、言うまでもなく地上波TVのデジタル対応のためだが、またもや東京でのビッグ・プロジェクトだ。墨田・台東のあたりは都内でもやや開発の遅れているエリアだが、東京ばかりが何故?今回は東武鉄道が500億円を投じる。併せて同社は周辺に高層のツインタワーを建て、ショッピングモールも誘致し、浅草までのプロムナード的な遊歩道を計画しているらしい。鉄道も含めた大計画はおそらく2000億規模の事業であろう。何とも言いがたい大計画に商機を見出し喜ぶ向きも多いだろう。まだまだ続く、この一極集中は東京の良さを壊し、地方も崩壊させて行くように思えてならない。
気分一新、ドイツの新鋭ヘルデン・テノールの「トルステン・ケルル」を聴く。数年前からその活躍は知られていて、バイロイトでも端役で出演していた。その彼が、昨年の新国の「マイスタージンガー」のヴァルターに出演するというので期待していたが、夫人の急病で来日が流れガッカリした。
このCDは、そのマイスタージンガーをはじめとする、ワーグナーの諸役を中心とするドイツオペラからのアリア集である。
その声は、ジャケットから想像されるような、明るく軽いイメージではなく、低域から中域にかけて充実した力強い声の持主で、やや暗め。しかし、この音域は美しく響かせていて、それをベースに高音をエイッとばかり張り上げる。やや一本調子に聴こえないでもないが、なかなかに新鮮なのだ。フロレスタン・ローングリン・ヴァルターは良い。声からしてジークムントがよさそうなので、今後に期待したい。しかし、このCDでもっとも素晴らしいのが「コルンゴルトの死の街」の1曲だ。この作品のスペシャリストとしてひっぱりだこなのだから、当たり前かもしれないが、音楽のもつ滴るような世紀末の響きが、見事に歌い出せれている。
このCDの弱点は、アンゲーロフとスロヴァキア放送響の締まりのない伴奏だ。このレーベルは、若い歌手をいち早く起用し貴重なアリア集を廉価に発売してくれるのだが、伴奏がいつもこのコンビ!どうにかならないか?日本で飯森氏や若杉氏とやったほうが、はるかに良いのに。
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コメント
昨今はメジャー-レーベルが転々と身売り,更にはM&Aでこれから旬の気鋭の歌手の新譜を出して呉れる等、とてもとても‥ですよね。Eテレで観ましたドゥダメル&ミラノ-スカラ座来日公演の、『リゴレット』のジルダ役のエレーナーモシュクの『アリア集』も、Arte-Novaレーベルが制作に踏み切って呉れましたから‥。でも、このエームスークラシック、Franco-Leoniの『L,oracolo』と言う,サンフランシスコの中国人街を舞台にした短編オペラの、二組目のCDのライヴ制作に踏み切って呉れたのです。これまでボニング&ナショナル-フィル、ゴッビ、サザランド、ヴァン・アラン他のDecca盤しかなかったですから、有り難かったですね。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年1月19日 (日) 20時26分
エームスークラシックは、当初、安めの価格設定でしたが、昨今はフルプライスなところがなんとも・・ですが、ご指摘のとおり、なかなかいい目線を持ったレーベルかと思ってます。
レオーニという作曲家、正直、聴いたことがありませんが、オペラのすそ野は実に幅広く、深いですね!
投稿: yokochan | 2020年1月22日 (水) 08時10分