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2006年4月30日 (日)

シューベルト「美しき水車小屋の娘」 ヴンダーリヒ

Wunderlich_schubertよく晴れた日曜の昼下がり。明日からの美しき5月を前に「美しき水車小屋の娘」を取出した。シューマンも気になったが、まずはシューベルト。「さすらいの歌」なのだから。同時代のミューラーの詩によせたこの歌曲集は、青臭くもあるが、一度は通る憧れに満ちた日々の回顧に満ちている。シューベルトの歌曲集は好きだが、この水車小屋が以外や一番中身が重くてつらい。

 全20曲からなるが、元気良くさすらいの旅に出る若者だが、親方の娘に恋をし、恋敵、狩人の出現から陰りある雰囲気になってくる。最後は恋破れ、身を投げてしまうが、水車を回す小川だけがいつも彼を見つめ、優しくつつんでくれる・・・。何も死ぬことはないだろうが、こんな多感な気持ちを今の別次元の若人には理解できまい。
 シューベルトが付けた音楽は、抒情に満ちかつ牧歌的な雰囲気をかもしだす魅力に満ちたもので、つくづく歌を紡ぎ出す天才なのだ、と思わせる。

歌は、不世出のテノール「フリッツ・ヴンダーリヒ」の残したDG盤で。
ヴンダーリヒは1966年に階段から落ちて35歳の若さで亡くなってしまった。その若さで、カラヤンやベーム、リヒター等と共演し、そこそこの録音を残した。いかに実力があり、ひっぱりだこであったか。慎重にリリックな役どころのみを大事に手掛け、その端正で清潔な歌いぶりは、今でも充分に新鮮である。
このシューベルトは、亡くなる年の録音で、ニュートラルで淡々とした誇張のない歌は、この悲劇的な主人公の若者に同化せず、さながら小川のようなやさしさをもって見守るような歌唱を聞かせる。そして、ドイツ語の模範的な美しさも実感できる。この人が、もう少し活躍していたら・・・・、という思いは捨てきれない。
 ジャケットの良さも特筆。

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コメント

ヴンダーリヒ、素晴らしいですね。声そのものだけで魅せられます。何度聴いても飽きない名盤です。

投稿: 吉田 | 2006年5月 7日 (日) 14時13分

吉田さん、TBとコメントありがとうございます。貴プログ拝見しました。水車屋は酒が進みますね。シュライアーとギターによるものをテレビで見たことありますが、ニュアンスが細かでよかったです。この曲はいろんな歌手をあつめてしまいたくなる魅力がありますね。

投稿: yokochan | 2006年5月 7日 (日) 20時55分

シュライアーとかヘフリガーなど、美声で、かつ語りで聴かせる歌手は、ギターとがハンマー・フリューゲルの伴奏でもマッチしますね! 生で聴けたら、どんなにいいかと。

投稿: 吉田 | 2006年5月 9日 (火) 23時08分

まったく同感ですね。語りの上手な歌手には、ニュアンス豊な伴奏がとてもお似合いですよ。テレビで見たときは、ギター奏者の横に腰掛けて体を左右前後に揺らせながら歌っていました。

投稿: yokochan | 2006年5月 9日 (火) 23時58分

こんにちは。
ヴンダーリッヒの水車屋の娘、久しぶりに聴きましたが、本当に感動しました。
あまり不世出というようなことばは使いたくないのですが、まさしく不世出の天才テノールだったのですね。

投稿: romani | 2006年12月 9日 (土) 15時41分

romaniさん、こんばんは。ヴンダーリヒのような美声と様式感が完璧に調和した歌手ってめったにいませんね。水車小屋は、この人じゃないと始まりません。

投稿: yokochan | 2006年12月 9日 (土) 21時49分

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シューベルトがミュラーの詩につけた連作歌曲で、 作曲は1823年、彼が25歳の頃です。 この頃の彼は、貧困と病気にさいなまれるわ、髪の毛は抜けるわ で散々な目にあっていたと言われています。 「詩人の恋」と並んで、失恋音楽の最高峰です。 歌詞を読みながら聴いた日には…。 恋愛していないヒトでも、焼酎1本あれば朝まで泣けます。 ヴ... <a rel=[続きを読む]

受信: 2006年5月 7日 (日) 13時44分

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受信: 2006年9月 6日 (水) 07時54分

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