「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「パリアッチ」 新国立劇場
新国立劇場の「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「パリアッチ」を観劇した。
9日15時開演。若い頃はイタリア物はかなり聴き尽くしたものだが、この十数年はドイツ物ばかりで、イタリアオペラの舞台は本当に久しぶりだ。
今回食指が動いたのは、指揮者が注目のファビオ・ルイージであることによる。この俊英の日本オペラ・デビューなのだ。以前N響でドビュッシーを聴き、大いに気に入った。音楽を構成豊かにキッチリまとめあげるのがうまく、オーケストラも弾きやすい指揮ぶりだった。スイス・ロマンド、ライプチヒ、ウィーン響に続き、ドレスデン国立歌劇場のポストを得て、正に日の出の勢いの人だ。イタリアオペラはともかく、ワーグナー、シュトラウスもバッチリ振れる。ブルックナーやマーラーも何でもいけるマルチ指揮者がルイージである。
それから今回上演で注目したのが、シュナウトのサントゥツァとフランツのカニオという、共にトーキョーリングで聴いた、ワーグナー歌手がヴェリズモオペラをどう歌うか?こんな興味から今回上演に行くことにした変わった私である。アリアの度に拍手があったり、音楽が鳴り終わらない内に拍手が始まるなどで、久々ゆえ、感興がそがれたが、これはしょうがない。
さて、まずは舞台から。演出はアサガロフというチューリヒ歌劇場の監督によるもので、2年前のプリミエだ。2作品共、同じ舞台装置・同じ群集・同じ時代設定(1950年代)として、作品の共通性を意識させるもの。よけいなことをせずに、普通でよろしい。装置もシンメトリーでわかりやすく、演技も妙な動きもなく安心。
「カヴァレリア」は唯一のイタリア人、クピードのトゥリッドウが文句なしにすばらしい。言葉と歌が一体化しているのをことさら感じたのは、他の歌手のせいか? 明るさをともなった良く通る声はなかなかのもの。そして、シュナウトのサントゥッアは、予想とおり体型が立派すぎて、浮気されても・・・という見た目の何だか感がまずあった。声は当然立派だが、私にはブリュンヒルデやフリッカに思えてならなかった。他の日本人歌手は問題なし。
「パリアッチ」を続けて聴くと作品の精度というか、緻密さが、レオンカヴァルロのこの作品のほうが上であると思われる。そんな思いを抱きながら、この2演目めを観たものだから、こちらの方が感銘が深かった。まずは、フランツのカニオがそれほど違和感がなく、高域は硬いものの良く伸びていた。「衣装をつけろ」は何かボソボソ歌っていてやや興冷めだったが、最後の場面では迫真の演技と歌を聴かせ聴衆を引き付けた。他の諸役もまず上出来で、ことにネッダの大村が若々しく見映えも良かった。
最後に、期待のルイージの指揮するオーケストラはまさに期待通り。全般に速めのテンポを取り、オケや歌手をグイグイ引っ張っていく統率力を見せた。立ち止ったり、伸ばしたりいったところがまったくなく、かつての大見得切るような歌や演奏とは無縁の世界を目指している。ふたつの作品の中間にある間奏曲は、磨き上げられた美しさとオペラティックな雰囲気に満ちた名演だった。心理的な劇性をスマートな表現で目指したものだけに、途中途中で入る聴衆の因習的な拍手は、音楽の流れを阻害していたようにしか思われない。
ともあれ、久方ぶりの「イタリア・オペラ」は適度な長さでもあり、楽しかった。
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