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2006年4月 7日 (金)

エルガー「エニグマ変奏曲」 バーンスタイン

Bernstein_ergar 私のフェイヴァリット作品のひとつ、エルガーの「エニグマ変奏曲」を聴く。この愛すべき曲は、私にとって常に謎である。一度さらっただけで、各変奏の由来を知らないからである。この各変奏はエルガーの周りの人物を具体的に描写したもので、すでに謎解きもされ、誰それという名前とエルガーとの交わりもCDの解説書には出ている。しかし、現在この作品を聴くにあたって、それが何だといえるのだろうか?あくまで予備知識にとどめ、無心にエルガーの高貴・高潔・ファンタジー溢れる音楽に耳を傾ければよいと思っている。今回CD棚を調べたら15種類の演奏があり、意識したわけではないが、そのほとんどが英国指揮者であった。例外はハイティンクとプレヴィン(両者はもう英国人と同じ)、シノーポリとバーンスタインであった。

ここに聴くバーンスタインのエルガーはかなり異色である。82年の録音であるが、晩年の遅く早くの様式がここでも全開で、エルガー節が堪能できるゆったりした部分、例えば聞かせどころ第9変奏「ニムロッド」は6分もかけて、極めて念入りにじっとりと演奏している。最後のエルガー自身を描いた場面ではオルガンを強調しすぎて、バランスが崩れかけたかと思うと、エンディングは思い切り引っ張って、これでもかというばかりに伸ばしてしまう。
 早い部分は、弾むように軽快に進むため、遅い部分との落差がかなり大きい。
演奏時BBC響とその解釈をめぐって険悪になったらしい。いかにもレニーらしいエピソードだが、これも作品を愛し、自分のところに引き寄せて解釈する音楽作りゆえなのであろう。

 私はこうしたエルガーは100%賛同するものでないが、無個性なユルイ演奏よりはずっと良い。そして、ひと悶着あったにしても、オーケストラの味わいが救いをもたらしている。これが、ニューヨークだったらどうなってしまったろうか。

 カップリングの「威風堂々」をはじめとする行進曲は、幾分明るすぎるが早いテンポで豪快に鳴らしきった演奏で、有名な中間部ではエルガー節ならぬレニー節が見事に決まって、万事メデタシとなる。エルガーを楽しむというより、バーンスタインを楽しむ感ありのCDと思う。最後に、ジャケットのセンスは実にすばらしいものであった。

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コメント

こんにちは。バーンスタインの「エニグマ」、
LP盤で持っています。この曲はこれが最初
で、エルガーが好きになったものです。
後に他の演奏を聴くと、確かにバーンスタイン色
濃厚ですね。特に最後のエルガー自画像の遅い
テンポと最後の引き伸ばしなど、仰る通りです。

投稿: | 2006年4月 8日 (土) 09時47分

丘さん、コメントありがとうございました。バーンスタインには、最近の指揮者にない強烈な個性がありましたね。そこがイヤミにならないところが、彼の人柄でしょうか。この盤のあとに「マリナー」盤などを聴きますとその違いに驚かされます。

投稿: yokochan | 2006年4月 9日 (日) 01時09分

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