ジョナサン・ノット バンベルク交響楽団 演奏会
ジョナサン・ノット指揮のバンベルク響を聴いた。
武満徹 「セレモニアル」 笙:宮田まゆみ
シューベルト 「未完成」
ベートーヴェン 交響曲第7番
こんな名曲になるとかえって食指が遠退いてしまう。もとより単独では行かなかったろう。招聘元のワールド・オーケストラシリーズのセット販売にまんまと乗ってしまった。6つのコンサートのセットで、私は争奪戦が予想された、ルツェルンとコンセルトヘボウを確実にするがために、それこそ、清水の舞台云々の気持ちで申し込んだら当たってしまった。そんな訳で全く期待しないでサントリーホールへ向かった。
武満の作品はかつてプレヴィンとN響で聴いたことあるが、印象は忘却の彼方だ。
今回、笙の繊細な音色にものすごく集中して聴いたが、この楽器と西洋のオーケストラを組合せてしまうところが、武満のすごいところ。弦や木管が笙の音色を模してデリケートな響きで応える。何だかんだで、冒頭か引き込まれてしまった。
そんな余韻を残し、印象深い克明なトレモロで未完成が始まった。遅めのテンポで繰り返しも行い約30分、ロマン的というより、かなり緊張を強いる厳しさを感じた。時折響くフォルテではかなり低音が響く。
ベーレンライター新校訂版を使用しているらしく、強弱が従来と違って聞こえる個所があった。1楽章の終わりは最後の和音がディミヌィエンドしてスウッと消えた。新鮮だ。
後半のベートーヴェンが鳴り渡り、ここで納得。前半の静と後半の動。
この一音で、重苦しさから開放された。それ以上に快調なテンポに乗せて、全楽員が体で音楽を表現しつつ乗りまくっている。ドイツのオーケストラはいずれも機能性に富むが、このバンベルク響もなかなかのもの。そればかりか、時おり、管楽器など鄙びた響きを聞かせる。かつてのバンベルクの伝統は今に生きていて、ノットの清新な音楽により、また新たな国際性も身に付けつつあるようだ。
全曲はここでもベーレンライター版を用い、2楽章と3楽章の間以外は、アタッカで一気に演奏された。両翼配置の効果も抜群で、指揮者も聴くこちらも、右に左に忙しい。
そんなこんなで、熱狂のうちに全曲が終わり、7割の入りながらも盛大な拍手がおこった。
アンコールは、ルーマニア舞曲っぽい曲で、エネスコか何かかと思ったら、リゲティのルーマニア協奏曲第4番だそうな。これは面白かった。弦の各主席がソロで活躍する名技性にとんだ盛り上がる曲だった。
ジョナサン・ノット、英国指揮者だが、なかなかの実力者と見た。
ニコニコと終始、笑顔でスマートな感じでだが、体から自信が満ち溢れていて、ドイツ各地の劇場から叩き上げてきた裏付けも充分なのであろう。
曖昧なところが一切なく、すべてに克明・明快である。かつてバーミンガム時代のラトルにも通じるかもしれない。チャレンジ精神も溢れている。
こうした人が、伝統のバンベルクの指揮者になるのだから、世界は垣根がなくなったといえるかもしれない。
カイルベルトやヨッフム、シュタインと続いた戦後のドイツ伝統はどうなっていくのか。
興味はつきないが、ブロムシュテットがしっかり桂冠指揮者のタイトルにあるし、何よりも、ノットがあり余る才能で、新たな伝統を築くのかもしれない。
気になったのが、こういう名曲になると、居眠りの人はいないかわりに、音楽に合わせて、首を振ったり、体を動かしちゃう聴衆がいること。それも今日はお隣さんで、かなり気になった。じっとしてよ。
それから、いつも必ずあらゆるコンサートで最前列にいるオジサン数人。ずっと前から気になっていたが、評論家の先生なんだろうか?毎日何してるんだろ。
オーケストラの面々も、彼らを何となくチラチラ見てて気にしているみたいだった。
まあ、ともかく予想外に楽しい一夜であった。
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