ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」 アバド
世間の連休に則り、こちらも音楽三昧ということで、普段にも増して大曲を。最愛の曲「トリスタン」を最愛の指揮者「アバド」で聴く。
この曲で、この演奏家。となると、なかなか文章が出てこない。
それくらい、「トリスタンとアバド」は私の音楽人生において、重要なアイテムとなっている。おいそれと言語に置換えられない。
日本において、「アバドのトリスタン」の舞台が、2000年に彼のガン克服後という病み上がり上演というカタチで上演されたことは、我が国の大きなクラシック・トピックのひとつであろう。癌を患い、手術をしたアバドが果たして日本にやってくるのだろうか? こうした不安の中に、東京文化会館のピットに登場したアバドは、予想以上にやつれ、不安を抱かせる風貌だった。
はたして、この晩の演奏は、自分の音楽受容史のなかでおそらくNO1.(料金も!)と思わせるものであった。大病を経て人生の深淵を覗いてしまったアバドのこの音楽にかける執念のようなものがオーケストラ・ピットから発散されていて、その指揮ぶりにも目をうばわれたものだ。
しかし出てくる音は、決して熱くならず、透明感に溢れた繊細なもので、分厚く濃厚なワーグナーとは一線を画す、明快なものであった。聴いていて、ライトモティーフの微妙なからみ合いが透けて見えるようで、作品の出来栄えにも感心させられてしまう。ドビュッシーやウェーベルンの響きをそこに感じることも出来た。
そんな忘れられない思い出が音源として残っていないのが極めて残念。噂によるとベルリンでの全曲録音があるらしいが、オクラ入りしていると。
やむを得ず、ツギハギでトリスタンの渇望を凌ぐ。
「前奏曲」 ワーグナー作品集から、ベルリン・フィル
「第2幕」 ルツェルンのライブをDVDで。藤村実穂子のブランゲーネとパーペのマルケ王が素晴らしい。
「第3幕」 ベルリンでのライブ、海賊盤。B・ヘプナーとポラスキの理想的な歌唱、サルミネン、ドーメン、リポヴシェク等の豪華布陣。そして、BPOはすごい。
こうしてワーグナーにのめり込んでしまう自分を思うと不安になる。
残された自分の人生の限りある時間を浪費しているのではなかろうか?
大量にあるワーグナー音源をこの先聴いていけるのか?
ワーグナー以外もたくさん聴きたいし。ああ、もっと時間が欲しい・・・・。
バカだな。
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コメント
私はオペラが大の苦手ですがワーグナーとモーツァルトだけは一応持っています。
ワーグナーはただただあまりにも巨大すぎて圧倒されるだけです。
ただしとても重たいのでこの数年はオランダ人ぐらいしか全曲を聴けていません。(^_^;)
投稿: びーぐる | 2006年5月 5日 (金) 21時29分
びーぐるさん、こんばんは。ワーグナーとの付き合いはびーぐるさんがおっしゃるようなカタチが一番良いと思います。あまりの巨大さに、時間とおカネがかかり過ぎて悲しくなります。でも、もう抜けられないんです。ワーグナー地獄であります。
投稿: yokochan | 2006年5月 5日 (金) 22時56分