サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」 メータ
梅雨の走りに馴れてしまったせいか、なまじ晴れたりすると気持ちはいいが蒸し暑くて疲れてしまう。まったく贅沢なもので、音楽を聴く環境は夏以外がよろしい。
本格的な梅雨と夏を迎える前に、濃い音楽を聴いてしまおう、ということで今晩はサン=サーンスのキテレツな交響曲を取り出した。
しかも演奏は、若い頃のグラマラス・ゴージャス指揮者メータとロス・フィルの黄金コンビで。
表題のまんま、オルガン付きという以上にそのオルガンが激しく付いている。ピアノも大活躍する。2楽章構成だが、実質的にそれぞれ2部からなるため、4楽章あるとみて良い。そして終盤の盛上りはスゴイことこのうえない。だんだん年を取ってくると、こうした部分は聴いていてツライ、というか恥ずかしい。時間も考慮しヘッドホンによる試聴だが、当時のデッカの鮮明でマルチ的な録音による音の塊が両耳から、これでもか、というばかりに突入して来て、一人恥ずかしくなってしまう自分がいたりする。
いやはや・・・・、と思いながらも、だんだんと耳の快楽を呼び覚ますようになり、もう一回聴くはめに陥る。なんだ、完全にサン=サーンスとメータとデッカ録音部隊の術中にはまってるじゃん。
メータの指揮は、この当時は実に切れ味鋭い。指揮ぶりを見てもわかるとおり、メータは切るように指揮をする。しかし硬直的にならないところが、抜群のリズム感のよさと耳の良さなのだろう。今回、久方ぶりに聴いて作品も含めて見直したのが、オルガンの入っていない冒頭楽章のシンコペーションのリズムの刻みと2楽章にあたる緩徐楽章の旋律の美しさ。この洒落た抒情が、サン=サーンスの良いところか。
やはり、メータはこういう曲がうまい。でも度々聴ける演奏ではないな。
一気呵成のミュンシュや、フランスを感じさせるマルティノン、じっくり型のアンセルメといった往年の巨匠に比べると、ちょっと色がなさ過ぎるかもしれない。
試みに、少しスピーカーから音を出してみた。意外や最後の場面で音が混濁する。
録音年代(70年)ゆえか、廉価盤ゆえか、貧弱な装置ゆえなのか?
「ツァラトゥストラ」「春祭」「惑星」等、メータの指揮で面白いように鳴るレコードを親しんできた身としては、ちょっと寂しい思いがする。
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コメント
この曲は私の貧弱な装置ではとても手に負えません。
わが町が誇るミューザ川崎シンフォニーホールとサントリーホールで実演を聞きましたがやはり生は圧巻でした。
投稿: びーぐる | 2006年5月24日 (水) 09時31分
こんばんは。いいですね、両方とも自前のオルガンが壮麗に鳴り響いたのでしょうね。私は生では一度も聴いたことがないです。
投稿: yokochan | 2006年5月24日 (水) 23時06分
yokochan様今晩は。メータは80年代にスランプに陥っていたようですね。この時期の彼の演奏には得意なはずの後期ロマン派などにも冴えないものが多いです。ファンの数もかなり減ったといいます。アンチ・メータの人に「何を聴いてメータを嫌いになった?」と聴くと必ずと言っていいほど80年代の演奏をあげます(私の友人にもおります)。70年代の演奏は宝の山なのにもったいないなぁと何時も思っております。私などは、ロンドン・フィルを振ったトゥーランドットやウィーン・フィルを振った復活は大好きですし。ロサンゼルス・フィルを振ったチャイコフスキーも。
90年代以後のメータは再び気合の入った演奏をするようになったと思います。90年代半ばにベルリン・フィルを指揮してサン・サーンスの第3番を再録音していますが、なかなかの好演です。カップリングされているフランクの交響曲も決して悪くありません。
投稿: 越後のオックス | 2008年10月22日 (水) 18時30分
越後のオックスさま、毎度ありがとうございます。
メータは、70年代から好きでしたね。
ロンドンレーベルとともにあった感じで、ロスフィルとの名録音の数々は、今CDで買い直して聴いても新鮮なものです。
80年代は、デッカからCBSに移籍したことと、ニューヨークでのよそ行き的な印象が、イマイチ感を伴なっているのでしょうね。
アメリカでなく、ヨーロッパのポストをえればまた違っていたのではないでしょうか。
ウィーン、ベルリン、ミュンヘン、フィレンツェでの相性は非常に良いですから。
BPOとのサンサーンスとフランクは未聴です。
すごい濃厚な組みあわせですね。
投稿: yokochan | 2008年10月23日 (木) 23時22分
このLAPO時代のメータのサン・サーンス&スクリャービン、演奏者と曲目の顔合わせからして是非一聴してみたいものです。当時のKINGrecordのLPの襷裏に、『もうお持ちですか?ベストセラーを続けるクラシックの名演盤』と、ファンのプライド意識を煽るような宣伝文句が在り、その下の紹介盤に、このメータのサン・サーンスも在りまして、『アニタ-プリースト/オルガン』とクレジットが、ございました。ただ、当時Deccaがこのコンビの録音に使用のUCLAロイスホールには、パイプオルガンが設置されていたのでしょうか。この曲の収録に良くあるパターンの、オルガン別録りかも知れませんね。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年9月22日 (日) 06時45分
この13年前の記事いらい、この演奏は聴いてませんので、オルガンの詳細は不明ですが、別録音ではないかと推察します。
発売時は話題となりましたが、いまは、忘れられてる録音のひとつかと思います。
リマスタリングが望まれます。
投稿: yokochan | 2019年9月22日 (日) 16時48分
御表記のUCCD-7110、先日ディスク-ユニオン大阪館で、偶然遭遇しまして迷わず購入しました。『LAPO時代のメータに、肩透かし盤無し!』の愚生に於けるジンクス、いまだに生き続けておりました。ダイナミズム、叙情的な楽想の歌わせ方、そうやって欲しいなぁ‥とこちらが思うように運ばれて行くと言った赴きですね。先日ユニヴァーサル-インターナショナル輸入盤で発売の、LAPOとのDecca録音集成セットに、確か含まれておりませんでしたので、ホッとしました。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年10月22日 (火) 09時50分
デジタル時代になって、ベルリンフィルと再録をしてますが、未聴です。
でも、まったく話題になりませんでした。
やはり、メータは、70年代男かもです。。。
投稿: yokochan | 2019年10月25日 (金) 08時26分
Teldec-レーベルでしたかね。レコ芸の新譜広告に、『超A級のサウンド!』のキャッチ-コピーが、あったような‥(笑)。今度の来日公演も¥4.3&3.8の入場料では、ちょっと手が出ませんねぇ‥。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年10月25日 (金) 14時52分
メータ・BPOの来日の演目は、しかもブルックナー8番で、同時期のティーレマン・VPOと完全にかぶりますね。
これらの演奏会に気軽に行ける方のお財布がうらやましすぎます。
ヤンソンスもそうですが、病気がちの大家、椅子に腰かけて、指揮する姿は、わたしには痛ましく思いますが・・・
しかし、聴いてもみたいですが、メータならイスラエルと最後のコンビの来日を望みたいところでした。
投稿: yokochan | 2019年10月29日 (火) 08時36分