オルフ 「カルミナ・ブラーナ」 プレヴィン
オルフという不思議な作曲家、「カルミナ・ブラーナ」という音楽のカテゴリー。いずれも特異な存在である。オルフの劇音楽以外の作品はあるのだろうか?管弦楽作品や器楽作品なんて、見たこともない。
そして「カルミナ・ブラーナ」は声楽作品なのだが、舞台作品なのだろうか? わからん。おまけに、「カトゥーリ・カルミナ」「トリオンフィ」(だったかな?)と三部作を形成するらしいが、その2作はまったく聴いたことがない。
ヨッフムやライトナーが録音しているが、顔も似た地味な二人が、オルフを得意にしたことも、また不思議。
何だかよくわからないオルフではあるが、この曲を無心に聴けば、聴き手を原始的なまでに明るく、楽しく、憂愁なる気分にさせてくれる。
オルフの音楽を言葉で羅列すると、「単純」「繰返し(オスティナート)」「原始的」「リズミック」「古代やギリシァの賛美」「中世」「暗黒」「淫靡」・・・こんな感じだろうか。
いずれも脈連のない世界だが、これらを感じさせる多彩な音楽が次々に展開される。
テクストは中世、南ドイツあたりの学生や修道僧の歌に求められていて、ラテン語。
いずれも生命感・生活感溢れる歌詞になっていて、人間の営みを歌っている。
冒頭と最後におかれた有名な部分「おお、運命よ」の歌詞はなかなかに深い。
「おお運命よ 月のように姿は変わる 常に満ち 常に欠ける。
不快なこの世も つらいのは一時 次には気まぐれに
遊戯のこころに味方する 貧乏も 権力も しょせん氷のように解かし去る。」
プレヴィンとウィーン・フィルとの93年のライブ。ボニーのソプラノ、ロパルドのテノール、
マイケルズ・ムーアのバリトン、ウィーン学友協会とシェーンベルク合唱団。
完璧な顔ぶれによる、生き生きとした演奏だ。リズムがやや重く感じるが、そこはウィーン・フィルの軽やかな音色がプラスに働いている。 ともかく無類に楽しい演奏で、ウィーンの良さも味わえる。そして私の好きな「バーバラ・ボニー」が最高に素敵な歌を聴かせてくれる。
プレヴィンにはもうひとつ、ロンドン響との旧盤があって、ここにジャケットを載せてみる。こちらの若きプレヴィン方が、ノリがよく、オーケストラのニュートラルな音色も良い。
なすがままに、自然に生きた中世が暗黒とはいえ羨ましい。
今のこの日本の世の中のほうが、よっぽど窮屈で「暗黒」である。
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コメント
「自然に生きた中世が暗黒とはいえ羨ましい」。
確かに、食う寝る遊ぶ、といった原始的な生き方のようなものが漂う音楽ですね。
プレヴィンの旧盤は聴きましたが、新盤は聴いたことがありません。
ウイーン・フィルの「カルミナ」は、これが初めてなのですかね?
投稿: 吉田 | 2006年6月 7日 (水) 22時36分
こんばんは。たぶんウィーン・フィルはこれが唯一ではないかと思います。ライブではムーティがやった記憶がありますが。今日思い出しましたが、アイヒホルンも三部作を録音してました。この曲は「メシ・風呂・寝る」のオヤジ語録のような演奏だったです。
投稿: yokochan | 2006年6月 8日 (木) 00時59分
食う、寝る、遊ぶとはまさに私の生活そのものですが、これは不思議な印象的な音楽ですね。
私はヨッフムのディスクを持っていますがカトゥリ・カルミナはあまり印象がありません。
投稿: びーぐる | 2006年6月 9日 (金) 08時49分
おはようございます。オルフはたまに聴くと独特な繰り返しのリズムが頭から離れなくなります。人間の本能のようなところに直接訴えかけてくるような音楽に思います。
投稿: yokochan | 2006年6月10日 (土) 09時39分