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2006年8月31日 (木)

ディーリアス 「夏の歌」 バルビローリ

Barbirolli_english 去る夏を惜しんで聴く音楽といえば、ディーリアスに限る。
日差しは夏だが、空気は秋を先取りしている。秋は秋で、本格的な高い空を望めるまでにはまだかなり間がある。それまで、台風は長雨もある。

よけいに、夏の眩しさをいとおしみたくなる。
そんな気持ちに寄り添ってくれるのが、ディ-リアスの「夏の歌」。
「夏の歌」はディーリアス(1862~1934)の晩年、若き頃の放蕩がたたったのか、失明し、四肢も麻痺してしまった状態で、1929年に大好きな海辺で弟子のエリック・フェンビーに口述して書かせた。

「海をはるかに見渡せる、ヒースの生えている崖の上に座っていると想像しよう。高弦の持続する和音は澄んだ空だ。・・・・・・」こんな口述で作曲が進められたらしい。

11分程度の作品だが、交響詩と言うほどのものでもなく、「音による風景や若き日々への回想」といった感じだ。冒頭まさに、高弦の和音が響くなか、低弦で昔を懐かしむフレーズが出る。矢継ぎ早やに、フルートが遥か遠くを見渡すような、またほのかに浮かんだ雲のようなフレーズを出す。この木管のフレーズが全曲を通じで印象的に鳴り響く。
ついで、懐かしいディーリアスらしい郷愁に満ちた主旋律が登場し、曲は徐々に盛上りを見せ、かなりのフォルテに達する。
海に沈まんとする、壮大な夕日。沈む直前の煌々とした眩しさ。これがこのフォルテか。
そして、曲は徐々に静けさを取り戻し、例のフレーズを優しくも弱々しく奏でながら、周辺を夕日の赤から、夜の訪れによる薄暮に染まりながら消えるように終わってゆく・・・・・。

Imgp3728_a 画像は、数年前に旅行した秋田の「夏の海の夕暮れ」。
海に沈む夕日は、まさにディーリアス。そしてこの「夏の歌」の世界だ。
こんな壮大で、人生の夕暮れをも思わせるような光景をディーリアスは思いながら作曲したのだろう。彼の作品の根底にあるのはこんな絵かもしれない。

バルビローリロンドン交響楽団と録音したこの1枚は「English Tone Poems」と題され、詩情に満ちた作品ばかりが収められた素敵なCD。

      1.アイアランド 「ロンドン」序曲
      2.バックス   交響詩「ティンタジェル」
      3.ディーリアス 「村のロミオとジュリエット」~「楽園への道」

      4.  〃     「イルメリン」前奏曲
      5.  〃     「夏の歌」

いずれも、指揮者の唸り声が時おり聞かれる。サー・ジョンの慈しみに溢れた愛すべき名演である。

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コメント

夕日の写真素晴らしいですね!!

投稿: びーぐる | 2006年9月 1日 (金) 23時14分

びーぐるさん、こんばんは。コメント一部消えてしまいまして、本当に申し訳ありません。
夏の終わりを飾る憂愁の作品であります。
写真は、びーぐるさんに比べると足元にもおよびませんが、じっくり構えて撮りました。

投稿: yokochan | 2006年9月 2日 (土) 00時08分

TBさせていただいたところ、早速折り返しありがとうございます。エルガー、ブリテンなどのイギリス作曲家を含め、このところマイブームになっています。これからもよろしくお願いします。

投稿: yskw | 2006年9月16日 (土) 17時40分

これはようこそ、おいで下さいました。
ディーリアス以外も英国ものは、バラエティー豊な作品に満ち溢れています。是非いろいろとお試しください。
こちらこそ、よろしくお願いします。

投稿: yokochan | 2006年9月16日 (土) 23時40分

こんばんは、コメントとTBをどうもありがとうございました!
ディーリアスの音楽はまだ聴き始めたばかりですが、何回か聴いていると心地よさなのか懐かしさなのか、体に自然と入ってきますね。エントリーを拝見していて、本当に夏が去ってゆく時のあの寂しさに納得しました。彼には季節にちなんだ作品も結構あるようですし、あれこれかじっていきたいと思います。yokochanさんのエントリーを参考にさせていただきますね!

投稿: stonez | 2007年8月 4日 (土) 01時58分

stonezさん、こんにちは。TBもありがとうございます。
おっしゃるとおり、ディーリアスは四季それぞれに季節を思わせる桂品が多く、年中楽しめます。
中でも夏にちなんだ曲はいい作品が多いです。日本と違って、英仏の夏はもっと過ごしやすいのでしょうけれど、このくそ暑い日本で、少しでもクールダウンができるような音楽のひとつですね。
いろいろと聴いてみて下さい。

投稿: yokochan | 2007年8月 4日 (土) 11時06分

はじめまして。
ネットサーフィンでたどり着きました!
ディーリアス、とても好きです。
きっかけは20年近くも昔、ケン・ラッセルがBBC時代に作った『夏の歌』って作品ををビデオで見たときからです。
E・フェンビーがディーリアスの音楽に惹かれて献身から弟子入りするけど、会ってみると梅毒に犯された老人だった...そんな内容でした。
それ以前に聴いていたケイト・ブッシュの『魔物語』に邦題『デリウス(夏の歌)』ってのがあって、ずっと何のことかさっぱりわかりませんでしたが、そのとき点と点が走った衝撃は今でも憶えています。
訳した人は、ディーリアスを知らなかったのかも知れません。 on the waterも海の上でって訳されてましたけどもしかしたらこれはロワン川かも知れないなーって思いました。 でも、今では海の上って訳で十分いいって思っています。 わずか2分49秒の短い音楽ですが大好きです。 真相はケイト・ブッシュの方が、ケン・ラッセルの『夏の歌』を見て影響を受けて作ったようですね。


デリウス(夏の歌)

Ooh 彼は気むずかしい老人
その手に 夏の歌を隠しもってる
Ooh 彼は気むずかしい老人
その手に―
”フム”

いつも夏の歌を口ずさむ
海の上で過ごす夜
Ooh 海の上で―
”Bで弾いてくれ、フェンビー”

投稿: 瞬夏 | 2008年7月30日 (水) 21時14分

瞬夏さま、はじめまして。
素晴らしいコメントありがとうございます。
ケン・ラッセルの映画は、実はまだ見る機会をもっておりません。一時必死に探したのですが、諦めてしまいそれっきりでした・・・。

そして、ケイト・ブッシュの歌に歌われているんですか!
彼女はデビュー時によく聴きました。元祖不思議少女ですね。
これは是非とも、映画とあわせて、ケイトのCDも手にいれなくてはなりませぬ。
それにしてもいい詩です。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2008年7月31日 (木) 00時16分

管理人様のこのブログは、なんという素晴らしいブログなのでしょうか。『夏の歌』の記事もあったとは! 

このバルビローリのCD、持っていました。ある事情で泣く泣く手放してしまいましたが、再び入手したいです。

アイアランドの『ロンドン序曲』、バックスの『ティンタジェル』も良い曲で、なんでこんな素晴らしい音楽が日本で知られていないのか、憤慨してしまいます。

ケイト・ブッシュの『デリウス』、You Tubeで聴けます。本当にありがたい時代になったものです。

https://www.youtube.com/watch?v=rmADS0sFCGA

の映像で、ディーリアスは車いすに乗った老人(なぜか顔が太陽)として表現されています。ケイト・ブッシュは鳥のイメージ(もしかするとカモメ? 白鳥にみえるけど……)の衣装で登場。フェンビーも登場すると思っていましたが、結局登場しませんでした。

投稿: walman | 2017年2月24日 (金) 19時41分

walmanさん、コメントたびたびありがとうございます。
ご返信遅くなりまして申しわけありません。

ディーリアスを好きになって、もう40年以上が経過しますが、いろんな想いが去来して、いつ聴いても、懐かしい自分の若き日などを懐かしんでしまいます。

バルビローリのこの盤は、そう、私も大切な1枚です。
アイアランドとバックスもフェイバリット作曲家です。
数年前にコンサートで、ティンタジェルを聴けた時は、もうドキドキの連続でした。

そして、K・ブッシュ、わたくしも、その後見ました。
あの独特の声、ユニークな彼女、こちらも、若い日の想いででもありますね。。。

投稿: yokochan | 2017年3月 3日 (金) 18時06分

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突っ走ってきたプロジェクトが今日をもって終わりました。まあ正確には契約の関係でギリギリで終了(脱出?)という感じでしょうか。カットオーバーを見届けられないのは残念な気もしますが、追い立てられる環境に身を置いた経験を今後の糧にしたいですね。 そんなわけで即..... [続きを読む]

受信: 2007年8月 4日 (土) 02時00分

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