フィンジ 「不滅の暗示」 ヒコックス
1901年ロンドンに生まれ、1956年イングランド南部のニューバリー(ハンプシャー州)で白血病で亡くなった作曲家「ジェラルド・フィンジ」。
あまりにも美しい「クラリネット協奏曲」は聴かれた方も多いであろう。
その生涯に書いた作品は40数曲、じっくりと自己を見つめながら、感情を込めて残した作品は、ナイーブで抒情的なものが多い。イングランドのなだらかな情景にも大きく影響を受けているであろう。
フィンジが書いたカンタータ「不滅の暗示」は50分あまりの大作。
テノール・ソロと合唱、オーケストラによるもの。
「Intimations of Immortality」というなかなかに哲学的なタイトルは、イギリスの自然詩人「ウィリアム・ワーズワース」の同名の詩集に音楽をつけたことによる。当然、この詩集やワーズワースの世界と音楽は不可分の内容になっている。
原題は「幼少時の回想にもとづく霊魂不滅のオード」。
私の英語力では全貌を読解するのは至難の業だが、第1曲目にその雰囲気の大要が収められている。
かつて牧場と 森と 小川と
大地と あらゆる周囲の風景が
わたしにとって
天上の光に包まれて、見えた時があった
「幼い日々に過ごし、記憶した情景や思い出は、記憶の回路にしっかり刻まれ、後年それらが啓示的な暗示をもって蘇えり、癒しや精神的な慰めをももたらすとする」という考えのもとに、当初は幼い時に体験した自然の中での至福の光景が描かれる。
成長とともに、そうした光景の記憶は薄れて、やがて去ってしまう。
しかし、大人になって再び自然に身を置き、春の花を摘むとき、鳥に耳を傾けるとき、それらの自然の中に精神的再生を見出すと歌う。
歌詞の内容は気にせずに、だいたいこんな雰囲気が歌われているんだぐらいの感覚で、フィンジの素晴らしい音楽を虚心に聴くのがいい。
デリケートな響きのイメージのフィンジとしては、この曲では大規模なオーケストラを大胆に鳴らす場面も多い。しかし、基調は親しみやすい穏やかな旋律が多い。
フィリップ・ラングリッジのテノールの全霊を込めた素晴らしさ、ヒコックスとリヴァプールのオケと合唱も気持ちがいい。
フィンジの音楽はいつも耳ざわりが優しいが、生と死、自然を見つめたものが多い。
昨秋のコスモス畑の写真。
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コメント
フィンジは声楽曲もいいですね!
私もこのディスク持っていますがいい雰囲気です。
フィンジはショップではマイナーなので、
なかなかディスクが入手しにくいのが困りますね。
投稿: びーぐる | 2006年9月18日 (月) 11時38分
こんにちは。そうですね、クラリネット協奏曲だけはよく見かけますが、それ以外は作品数が少ないこともあってあまり売ってませんね。
投稿: yokochan | 2006年9月18日 (月) 14時56分