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2006年9月 6日 (水)

ワーグナー 「ワルキューレ」第1幕 ノリントン

Norrington2 涼しいのだか、蒸し暑いのだかわからなかった一日、想定内の慶事もあったことだし、今宵はまた、ワーグナーの森にさまよおうか。
昨晩はサー・ロジャー・ノリントンの愉快指揮だが、深遠な音楽に酔いしれた。
続いては、ワーグナーの「ワルキューレ」である。

2004年7月のライブの非正規盤であるが、音質はまったく素晴らしい。最近の放送音源はへたな正規録音よりいい音がする。まあ、安い装置で聴いていることもあるが・・・。
「ワルキューレ」の第1幕は、演奏会形式で単独で取上げられることも多い。
1時間という時間、3人だけの登場人物、ロマンテックであり最後の盛上りも上々、こんな要因からであろう。
このノリントンの演奏会の前半に何が取上げられたかは不明だが、この1時間だけでも充分に緊張感と叙情性に満ちたドラマを堪能できる。
ノリントンのオペラは今のところ、モーツァルトだけと思うが、彼はワーグナーに多大の感心を寄せていて、声なしのオーケストラ曲集は何度か録音している。
そこでの印象は、テンポが速く、情感を削ぎ落としてしまったかのようなアッサリしたものだ。

        ジークムント:ポール・エルミング
        ジークリンデ:メラニー・ディーナー
        フンディング:マティアス・ヘレ

        シュトゥットガルト放送交響楽団    

ところが、この「ワルキューレ」はどうだろう。心持ち早いテンポで進められるが、なかなかに美しく、ハッとする場面が多い。一例をあげると、始まって早々、ジークムントとジークリンデが出会い、水や蜜酒を交わす場面のオーケストラの静やかな背景。
例によって、ノンヴィブラート奏法が冴え透明感に満ち満ちていて新鮮だ。
こうした具合で、全体にやや重心が上の方にあるが、抒情的な部分が引き立った素晴らしい演奏に思う。
最後は、猛然としたアッチェランドをかけ、かなり劇的に幕を閉じる。

ジェイムズ・キングと並び最高のジークムントと思っているのが、ポール・エルミングであるが、ここではどうしたことか不調だ。やや音程も不安定だし活気がない。こんなはずでない人だが、やや残念。49年生まれだが、まだ老け込む年ではなかろう。
それと、ノリントンの指揮がスイスイとしてしまうものだから、歌いづらそうに感じた。
この録音の2年前の日本における「パルシファル」は完璧だっただけに、アレ?であった。

相手役のディーナーは今が盛りの生きのいい歌声を聴かせてくて、ひとつの発見である。
バイロイトでのエルザも良かった。今年のメトでも来日している様子。
注目のドイツソプラノであろう。
ヘレのフンディングは定評あるもので、安定感充分。この人で締まった。

これで全3幕が舞台上演されたらどうなることか?
頭のいいノリントンのことだ、きっと音楽の本質をしっかり捉え、劇場的な上演にもなることであろうが、出てくる音は全体が透けて見えるようなユニークなワーグナーが誕生することであろう。
私は諸手をあげて歓迎、という訳ではないが、「ワルキューレ」に限らず、ワーグナーの全曲を何とか手掛けて欲しいものだ。

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コメント

これは見かけたことないですけど、正規盤でないんですか・・・。なかなか凄そうですね。
エルミングっていうと。
私が1997年のベルリン国立の引越公演の「パルシファル」を見に行った時に、エルミングはインフルエンザで当日ドタキャンしたんです。その4日前の「ワルキューレ」は出演してたんですけど、ほんと調子悪そうだったんで残念でした。

投稿: naoping | 2006年9月 6日 (水) 23時40分

そうです。非正規盤なのです。
エルミングの不調がなければ・・・なんですが、なかなかのものですよ。
エルミングは私もパルシファルで振られたことがあります。波のあるヒトなんですかねぇ。

投稿: yokochan | 2006年9月 8日 (金) 00時50分

こんばんは。
昨日は、本当にお世話になりました。
もう最高に楽しかったです。
また、機会があれば是非よろしくお願い致します。

アインザッツでお目にかかる日のほうが早いかもしれないですね。(笑)

投稿: romani | 2006年9月 9日 (土) 00時32分

romaniさん、こんばんは。昨晩はこちらこそお世話になりました。至福の時を過ごせました。
また企画しましょう。
そして、大阪でまずは、お会いしましょう。

投稿: yokochan | 2006年9月 9日 (土) 00時43分

 yokochan様今晩は。私が咽喉から手が出るほど欲しいCDの一つがこのノリントンのワルキューレ一幕なのです。非正規盤だったのですね。手に入りにくいわけだ・・・57分という驚異的な速さで演奏してますよね。ジークムント役の人が不調と言う弱点があっても聴いてみたいですね。速いことで知られるベーム&バイロイトでさえ62分ほどかけているのに・・・ノリントンは、前にも書いた覚えがありますが、ガーディナーに次くらいに好きな時代考証系指揮者です。ロンドン・クラシカルプレーヤーズを指揮したワーグナー管弦楽曲集はお気に入りのCDの一つです。バロック時代の祝典序曲のように聴こえるマイスタージンガー前奏曲にも、新ウィーン学派を先取りした音楽のように鋭利に聴こえるトリスタンやパルシファルにも初めて聴いた時は仰天したものです。こういう解釈でワーグナーオペラの全曲が聴いてみたくなりますよね。「本当に19世紀の指揮者やオケはこんなにスイスイ演奏してたの?もっとノンビリやってたんじゃないの?」という疑いが頭をよぎることが無いでもないですが、こんな面白い嘘(失礼!)ならこっちから積極的に騙されたくなるぐらいノリントンの解釈と演奏は面白いですね。ベートーヴェンの交響曲全集(旧盤)やメルヴィン・タンと共演したピアノ協奏曲全集も大好きですよ。
 私が欲しくて仕方が無いもうひとつのワルキューレ第一幕はメータ&ニューヨークフィルの85年の演奏会形式上演のライブです。バイエルンを指揮してワルキューレ全曲を後に録音していることはもちろん知っておりますが、NYフィル盤も欲しくて仕方がないのです。こういう名演をすぐに廃盤にしてしまうソニークラシカルは全くケシカラン会社ですね(笑)

投稿: 越後のオックス | 2009年8月10日 (月) 20時03分

越後のオックスさま、毎度ありがとうございます。
古い記事を掘り起こしていただき恐縮です。
すっかり忘れていたノリントンのワルキューレです。
ノリントンはいまや、ブルックナーやマーラーも手掛け、オールマイティ指揮者となりつつありますが、あの個性は相変わらずですね。
昨年のプロムスでは、B・ターフェルのバックを務め、いつものポーズで、トスカを指揮してました。
ほんと、わけのわからない愉快なヒトであります(笑)

このワルキューレは非正規のCDRですが、録音は記事のとおりまったく素晴らしいものです。
エルミングは、ジークムントとパルシファルにおいて、私にとって最高の歌手の一人ですがここではやや不調です。
速いけど、結構サマになってるノリントンのワーグナーです。
メータ&NYPOも、国内で出て即購入してます。
もう20年以上前となりましたが、こちらは驚くほど滑らかで、美しい演奏です。それとP・ホフマンが素晴らしすぎです!

投稿: yokochan | 2009年8月10日 (月) 22時17分

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