ラッブラ 交響曲第4番 ヒコックス
エドムンド・ラッブラをご存知だろうか。1901年生まれ、1986年没。
コープランドやウォルトンと同世代。交響曲を11曲も残したほか、オペラ以外のジャンルにそこそこの数の作品を残している。
イングランド中央部のノーサンプトンの貧しい家に生まれ、母親からピアノの手ほどきは受けたものの、若くから労働に精を出した努力の人である。
音楽の道は絶ちがたく、シリル・スコット(今はあんまり有名でない作曲家)に作曲を学び、
才覚をあらわした。のちにV・ウィリアムズやホルストにも師事している。
なかでも、ホルストは音楽以外にも思想・宗教に一番影響を受けたといわれる。
先鋭なところはどこにもなく、いわゆる癒し系イギリス音楽の範疇に入るだろう。
厳しさよりは穏やかさ、先鋭よりは柔軟さ、音楽はロマンテックでさえあり、イギリス抒情派の系統にある。
まだ11曲の交響曲すべてを聴いてはいないが、曲によっては単一楽章で十数分程度。
コンパクトゆえに単調に陥らずに、そこそこの完結感をもって聴ける。
この人の根幹に流れるのは、敬虔なカトリックの思想であろう。オルガン曲や宗教曲などは、ロマンティックという以上に保守的な新古典主義をも思わせる。
ホルストから引継いだ、インド・サンスクリット思想や仏教思想なども常に視野にあったとされるが、彼の宗教曲を聴くと敬虔なカトリシズムを強く感じる。
4番の交響曲は4楽章形式、28分程度の作品だが、聴くほどになかなかに味わい深い。
1942年にプロムスで初演されたこともあって、かのヘンリー・ウッドに献呈されている。
全体の1/3を占める第1楽章が美しい。明滅するようなリズムに乗って主要主題が優しく、穏やかに歌われる。これを聴いていると、何か宗教的な瞑想にふけってしまいそうになる。時間はゆったりと過ぎ、不必要な言葉は一切語られない。全体に大きな音はなく、こんな基調でまとめられている。
個性的な響きがないのが欠点であり、それが個性でもある。
ヒコックスとシャンドス・レーベルあってこそ、このような作曲家を極東の地で楽しめる。
尾高氏のBBCウェールズ響が素晴らしく親密な音楽を聴かせる。
この曲に限らず、静やかな穏やかさに満ちたラッブラの作品はイギリス抒情派系がお好きな方にはお薦め。
他の交響曲、協奏曲などもこれからご紹介したい。
| 固定リンク
コメント
ラッブラの交響曲は85年以来、興味を持っているのですが未だにチャンスが無く、未体験です。
別稿のことになりますが、バレンボイムはN響に客演しているんですか?
投稿: リベラ33 | 2006年9月24日 (日) 11時27分
そうなんです。ただ一度だけですが、チャイコの4番を振ってます。72か73年頃だと思います。
音源あれば聴いてみたいです。
ラッブラは、へんてこな名前ですが、実に味のある作曲家です。是非聴いてみてください。
投稿: yokochan | 2006年9月24日 (日) 16時32分