トマス・ステュワートを偲んで
アメリカ生まれの、名ワーグナー歌手「トマス・ステュワート」が24日アメリカ・メリーランド州で78歳で亡くなった。
私の年代にとっては、カラヤンやベーム、クーベリックに重宝され、60~70年代DG録音が多かっただけに、このところ相次いだ往年の名歌手の訃報とはまた違う次の世代の訃報だけに悲しみもひとしおだ。
ステュワートと同年代のアメリカ歌手がそうであったように、彼もドイツに渡って花開いた。
バイロイトでは、バス・バリトン歌手が大成して行く役柄を、そのまま自身の成長と結びつけた活躍をした。ドンナー→グンター→アンフォルタス→オランダ人→ウォータン→ザックス(バイロイトなし)
やや明るいが美しい声は、その厳つい姿からは想像できない。ドラマ性の欠如を指摘する向きもあろうが、これだけの声をもったバス・バリトンは彼のあと見当たらないだろう。
ワーグナー以外の音源は聴いたことがないが、夫人の名ルル歌手「イヴリン・リアー」とのR・シュトラウスのオペラ集があったはず。
復活を望む。
「ベームのオランダ人」、「クーベリックのマイスタージンガー」、「ブーレーズのパルシファル」、「カラヤンのリング」。彼の残した代表盤からそれぞれ聴いてみた。
気品溢れる、一本筋の通った立派な声にこちらも襟を正す思いであった。
蛇足ながら、この4人の指揮者の素晴らしさといったらない。時代はもう戻れない。
悲しいことに、世代交代とともに往年の歌手の次世代にも告別の時が訪れつつあるようだ。
トマス・ステュワート氏のご冥福をお祈りいたします。
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コメント
yokochanさん、こんばんは。
トーマス・ステュワートの訃報を貴記事にて知りました。この歌手も残念ながら実演で聞く機会がありませんでしたが、とても残念です。
個人的に思い出深い録音であるクーベリックの「マイスタージンガー」を聞いて故人を偲びたいと思います。
情報ありがとうございました。
投稿: Niklaus Vogel | 2006年9月29日 (金) 21時03分
私のディスクはカラヤンのリングですが、素晴らしい歌手ですよね。
投稿: びーぐる | 2006年9月29日 (金) 21時19分
そうですか。トマス・スチュアート、亡くなったですか。
この頃、往年の名歌手が次々に亡くなりますね。寂しい話です。自分もトシを取ったんだと云うことを実感します。
カラヤンの「指環」を聴きながら、スチュアートの美声を楽しもうと思います。
投稿: mozart1889 | 2006年9月30日 (土) 04時41分
Niklaus Vogelさん、コメントとTBありがとうございます。ほんとに寂しいですね。マイスタージンガー全曲が出た時は狂気したものでした。
日本には来てなかったかもしれません。
今後、ワーグナー以外も登場するかもしれませんね。
不謹慎ながら、楽しみではあります。
投稿: yokochan | 2006年10月 1日 (日) 00時05分
びーぐるさん、こんばんは。やっぱり、カラヤンのリングでのウォータン、ついでにグンターも最高でしたね。
投稿: yokochan | 2006年10月 1日 (日) 00時11分
mozart1889さん、こんばんは。
ほんとに、寂しいです。FMでレコードの新録音でステュワートを聴いていただけに、空白感もひとしおです。おっしゃるように、こちらも年とっていくわけでありますが・・・・。
投稿: yokochan | 2006年10月 1日 (日) 00時14分
こんばんは。
最近、訃報が多いですよね。
本当に残念です。
スチュアートというと、私の中では、ベームのオランダ人。
そして、クーベリックの第九(DG)のソロが忘れられません。
投稿: romani | 2006年10月 2日 (月) 01時00分
romaniさん、こんばんは。
そう、ほんとに懐かしい演奏家達が次々と去って行きます。歌手は現役生命が短いだけに、録音も少し前のものなので聴く側の思い出もたくさんつまっていて、自分も歳をとり行く寂しさと、喪失感とで何ともいえない気持ちになります。
投稿: yokochan | 2006年10月 2日 (月) 23時07分