クリスタ・ルートヴィヒ ブラームス・ワーグナー・マーラー
九州地方を襲った台風13号、自然の猛威とはいえ、被害に遭われた方々にはお見舞い申し上げます。
かたや、日本中懲りない面々が横行している。
一度楽をすると、一度味を覚えると、人間は同じことを繰り返す。
飲酒運転や痴漢行為などは、人間の性(サガ)云々する以前の問題であろう。
モラルや恥、我慢を忘れた日本人は、もう日本人を捨てているのだろう。
今日は懐かしめの1枚を選択。ドイツ系メゾ・ソプラノの代表的な作品が3作収められている。
ブラームス 「アルト・ラプソディー」
ワーグナー 「ヴェーゼンドンクの詩による5つの歌」
マーラー 「リッケルトの詩による5つの歌」
Ms:クリスタ・ルートヴィヒ
オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団
ルートヴィヒまだ30台後半の62~64年の録音。クレンペラーも高齢ながらウォルター・レッグのプロデュースで続々と名録音を残していた頃。
ルトーヴィヒは素顔もわれわれには馴染み深く、カラヤンやベーム、バーンスタインにも重用され数々の録音にも恵まれている歌手だ。
私は、小学生の頃に父親にせがんで厚生年金会館で行われたカラヤンのビデオ映画を観に行ったことがある。ユニテルの音楽ビデオだが、モノクロの第5とカラーの第9の二本立てで、初めて見る目をつぶったカラヤンのカッコよさに引きつけられっぱなしだった。
第9の終楽章で、ソロが入ってはじめて目を「かっ」と開いた。
そして熟睡していた、父親もバスの一声で、驚いて目を覚ました。
もう遥か大昔の話であるが、このバスがルートヴィヒの夫君「ワルター・ベリー」であり、メゾを歌っていたのが、「ルートヴィヒ」だった。ちなみに、他の独唱は「ヤノヴィッツ」と「ジェス・トーマス」というワーグナーでもやれそうな豪華版だった。
その時の何故か気になる美人であり、母のようでもあったルートヴィヒは、ソプラノの領域まで楽々とこなす知的な名歌手で、知的なだけでなく声に温もりや優しさも兼ね備えた万能歌手だったのだ。
ブラームスはともかくとして、ワーグナーの諸役、マーラーにR・シュトラウスにおいては、彼女以外を思い起すことができないほどの名唱を残した。
ここに収められた3作品は、いずれも諦念と満たされない思い、そして慰めに満ちたものばかりだが、ルートヴィヒはクレンペラーの描き出す重厚ながら枯淡のキャンパスに、抜群の安定感をもって格調・気品溢れる歌を聴かせてくれる。
マーラーなどは、今の水準をもってすればもっと精緻な演奏が望まれようが、ここに聴く演奏は、世紀末のややモッタリとした雰囲気に満ちていてなかなかに味わい深い。
さらに秋が深まれば、もっと心の奥底まで響くであろう。
ルートヴィヒもおそらく80歳を超えたあたりの年代。
このところ、往年の歌手達がいなくなってしまう中、われわれの思い出のためにも、ずっと元気でいて欲しいと心から思う。
自宅から眺めたこの秋一番の夕暮れの情景。
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コメント
ルートヴィヒは格調高くてあたたかい声が魅力でしたね。
当然でしょうが何を聴いてもまったく破綻が無いところがすごいですよね。
投稿: びーぐる | 2006年9月20日 (水) 09時27分
そうですね。オクタヴィアンからマルシャリンまで、何でも完璧なルートヴィヒでした。
完璧なのに嫌味のないのは、人柄のよさなんでしょうね。
投稿: yokochan | 2006年9月20日 (水) 22時25分