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2006年10月20日 (金)

アバド ルツェルン祝祭管弦楽団 演奏会②

Lucerne_1 10月19日「ルツェルン・フェスティバル」の最終日。  

  ブラームス   ピアノ協奏曲第2番       ピアノ:ポリーニ
  ブルックナー  交響曲第4番「ロマンテック」

こんな、重厚だが素敵なプログラム。
50分に65分という、最近ではなかなかにお目にかかれない組み合わせ。そういえば、先般のコンサートも、マーラー1曲でも充分なのに、モーツァルトのこれまた素敵なアリアを前半に演奏してくれた。
今回は個性は違うが、最もドイツ的な2曲。ドキドキしながら、その始まりを待った。

ホルンの素晴らしいソロに続き、ポリーニのピアノが入ってくる。一瞬オヤっと思ったが、後は実に緻密でなめらかな演奏が流れるように展開される。
実は、先般のマーラーの響きがずっと頭の中にあって、リハビリ的に今日の曲目を聴いては来たが、耳が頭がブラームスに切り替わらない。自分でももどかしい思いが数分続く。
 あれよあれよで、3楽章。これにはまいった。
今日のチェロ主席のブルネロのソノリティの豊かさにである。泣けそうくらい感銘を受けた。ポリーニのピアノの硬質で宝石のような美しさも堪らない。
ここに至って、ようやくマーラーの呪縛が解かれた。
終楽章のピアノと驚異的に素晴らしい木管群との楽しいやり取りに、体が揺れ動いてしまうのを押さえようがなかった。
 同郷の朋友とめざましいばかりのオーケストラの醸し出すブラームスは、明るく、重心も少し上の方にある。こんな素敵なブラームスが大好きだ。

休憩後は、緊張をはらみながら、ブルックナーの開始を待った。
メンバーも勢ぞろいし、コンサートマスターのブラッヒャーもすでに着席し、音出しをしようと立ち上がった。その時、一人遅れてきた第一ヴァイオリン奏者が小走りに登場。
聴衆は、コンマス登場と勘違いして、拍手が巻き起こった。これには、聴衆もオーケストラの面々も大笑い。ははっ。これで緊張が解け、リラックスしてアバドの登場を待てた。
結構ナイスな雰囲気が醸し出された。

アバドが静かに棒を動かすと、さりげなく弦のトレモロが開始された。ホルンが一瞬ヒヤっとしたが、ここはもう百戦錬磨のメンバーたち。以降は全く危なげなく、スムーズに音楽がスイスイと流れ行く。
お酒で言うと純米大吟醸クラスになるとピュアな「水」に近くなる感覚を覚えるが、例えていうとそんなブルックナーのようだ。アバドは、マーラーの時ほど、情熱的に振りかぶらない。
音の響きを大切にしながら、ゆったりとした指揮ぶりだった。
 圧巻は第2楽章と終楽章。2楽章の森を散策し、時に立ち止まり、思いにふけるような美しいシーンが展開された。ビオラ・セクションのツヤの良さといったらない。
そして、マイヤーやズーンといった管の美しさは、ここで最大限に楽しめた。
終楽章は、まとまりを作るのが難しい曲だが、さすがはアバド。どこまでも流れよく、よどみなく音楽が橋渡しされていくようだ。そして常に鮮度の高い響きが伴っている。
最後のコーダが始まると、心のなかで、このコンビと今夜別れなくてはならない、という切なさがこみ上げてきて、涙が出てきた。

最後の和音が充分に鳴り切って、少しの間をおいて拍手が起こった。
今日の我々聴衆も、音楽の一部となって一体感を共感していた。素晴らしい聴衆。
アバドもオーケストラもそれは、充分に感じてくれたものと思う。
舞台近くで聴いていた方の話だと、先日のマーラーでも抱き合って泣いていた奏者がいたというし、今夜もそうしたシーンがいくつかあったという。

200132 聴衆も楽員も、そしてアバドも、純粋に音楽を感じ、音楽のためにそこにあった。
これぞ、音楽を楽しむ真の素晴らしさであろう。
今回のいくつかのコンサートは、生涯忘れえぬ思い出となろう。
そして、これからも純粋に音楽を聴いて生きたいという、なにやら前向きな気持ちで一杯になった。

終演後、楽員たちを見送った。ザビーネ・マイヤーも間近に拝見し、微笑んでいただいた。ふふふ。そしてそして、マエストロを見送ることもでき大感激。
 ご一緒できた「romani」さんと、アバド大好きの皆さんとコンサートの打ち上げとアバドの健勝を祈って美酒を楽しむことができました。大感激!!
 

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コメント

こんばんは。
先日は本当にお世話になりました。
演奏も素晴らしかったし、そのあとの皆さんのお話もとっても楽しかったです。
皆さん熱いですね!
でも、そんな気持ちにさせるアバドは本当に偉大だと思いました。

P.S
やっと私も感想が書けたので、TBさせていただきました。

投稿: romani | 2006年10月21日 (土) 21時39分

romaniさん、こんばんは。先般はたいへんお世話になりました。
遅くまでお付き合いいただきましてありがとうございました。
いやはや、本当に素晴らしい思い出ができました。
出張から先ほどもどり、体はくたくたですが、心はあの晩の幸せな気分がまだ満ちております。

投稿: yokochan | 2006年10月21日 (土) 23時34分

こんばんは♪  ようやくこのコンサートのエントリーを書き上げたら、romani さんからコメントを頂戴し、「あ、そう言えば、romani さんと yokochan さんのお2人もいらしてたんだっけ!!」と思い出し、こちらにお邪魔させていただきました♪

ホント、素晴らしい演奏会でしたよね~。  個人的にはポリーニのピアノには(特に前半)、かなり???だったのですが、ブラコン第3楽章のチェロ・ソロには泣かされちゃったし、ブルックナーも最高でした。  心に残る演奏会でした。  あの日、あの時、あの場所で同じ音楽空間をお2人と共有できたこと、心から嬉しく思います♪  願わくば皆さんのおしゃべりにも乱入させていただきたかった(?)ところですが、肩身の狭い「社用族」としてはそういうわけにもいかず残念でした。  でも、その代わり・・・・と言っては何ですが、こうしてブログでお話できるのですから、いい世の中ですよね~(笑)

投稿: KiKi | 2006年10月22日 (日) 02時09分

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