ノリントン指揮 NHK交響楽団演奏会
昨晩は、大阪より「EINSATZ」のマスターがコンサートに東京にいらっしゃったので、店の常連さんの「romani」さんと3人で渋谷でお酒を共にしました。
マスターの生き字引のような音楽体験と、romaniさんの含蓄あふれる鑑賞歴などを拝聴しながらまったく楽しいひと時を過ごしました。
お世話になりました。次は大阪ですね。
ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
Vn:庄司沙矢香
ヴォーン=ウィリアムズ 交響曲第5番
私の好きなV・ウィリアムズの5番が聞けること、N響がノリントンの妥協を許さないピリオド奏法をどう受け止めるか、が今回の注目。
ベートーヴェンがコツコツと固いティンパニの響きで始まり、ここでもう、いつものN響と違うことが判然とした。人数を刈り込んだスッキリした響きは繊細かつ美しい。
そして荘司紗矢香がノリントンが用意した背景をすっかりなぞるように女性的なしなやかさをもって登場。そう彼女も過剰なヴィヴラートをかけず、オーケストラと一体となってノリントン・ワールドを体現しているのである。
私は彼女を聴くのは初めて。その素晴らしさに感嘆した。あの小さな少女のようなヴァイオリニストが奏でる多彩な表現力。ここでは、オケが抑えに抑えられているので、彼女のソロがピアノからフォルテまで、ムラなく響き渡るさまが見事に聴き取れる。
しかも思いつきや、その場の情熱から生まれた産物ではなく、精緻で考え抜かれた音が醸し出されているのである。
ノリントンとどのような打ち合せを経ているかはわからないが、彼らの生み出したベートーヴェンは、まるで「風呂上り」のように、既存のアカを洗い落とした新鮮さに満ちていた。
アンコールにバッハの無伴奏の一部が演奏され、これも前曲の流れを汲んだ緻密な演奏だった。舞台そでで、ノリントンが立って聴いているのがチラチラ見えて面白かった。
V・ウィリアムズの5番は、多彩な彼の9曲の交響曲のなかでも、3番と並んで抒情的な曲で、私はその2曲と交響詩「沼沢地方にて」の3作をイギリス田園交響曲と呼んでいる。(勝手な決め付けだけど)
ここでも、ノンヴィブラート奏法が実に新鮮。これまで聴いてきた5番の演奏が弦をたっぷりと歌わせ、豊な抒情を表出していたのに比べ、ノリントンの指揮の元では、弦楽器は透けるように清澄で音のひとつひとつが際立って美しい。
響きの美しさ、というよりは、音そのものの純な美しさといったらよいだろうか。
この曲の白眉である第3楽章レントの素晴らしさに、涙が出てしまった。
ただ、この楽章の終わりに出るソロ・ヴァイオリンは少し怪しかったけど。
終楽章は全体をレヴューするかのようなパッサカリア風の楽章だが、最後には魂が昇華されるかのように音の純度を高めていって、(ここでのノリントンは管にもっともっと、という指示をかなり出していた。)静かに消え入るように終わる。
私は感動のあまり小さくブラボーを呟いた・・・・。
地味な作品だっただけに、みな睡魔を押さえるため演奏中でもガサガサと飴をいじくる雑音がそこここで聴かれた。しかし、最後の静寂はよかった。よく辛抱してくれてありがとうをいいたい。
N響はよく頑張ったと思う。日本にはニュートラルなオケが多いから、案外、ノリントン先生やりやすかったかもしれない。
おもしろ・ひょうきん指揮者の片鱗は、ベートーヴェンの指揮に出ていた。ほとんど客席をみて「ココ、ココ良く聴いて」とばかりに指揮していた。
この5番をN響で聴くのは2回目。数年まえに、「プレヴィン」が演奏した。
このときは5月で、あとモーツァルト・プロとブリテンの「春の交響曲」の3チクルスだったが、驚くべきことに、新日フィルにまったく同じ時期に客演した「ヒコックス」も、この5番の演奏会と、ブリテンの同曲の2つのプログラムをとりあげた。
私は「プレヴィンのV・ウィリアムズ」と「ヒコックスのブリテン」をチョイスしたが、今思うと全部行けばよかったと思う。
CD棚には4種の全集とバラがいくつかある、RVW。
なかでも、5番はプレヴィン(新)と故ブライデン・トムソンのふたつが好きである。
聴きなおしてみて、ノリントンを聴いた今、音が多すぎる気もしたが、ジャケットと表裏一体のような演奏はやはり英国音楽の真髄のひとつ。
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コメント
先日はありがとうございました。楽しい時間を過ごさせていただきました。ぜひまた「EINSATZ東京サミット」を実施しましょう。大阪にもお越し下さい。お待ちしてます。
投稿: einsatz | 2006年11月11日 (土) 08時36分
どうもお疲れさまでした。EINSATZ東京サミット、いいですね。
議題がたくさんありますね。年内必ず!伺いますね。
投稿: yokochan | 2006年11月11日 (土) 10時04分
ノリントン/N響はラジオに噛り付いて聴きました。実演で聴けた方がウラヤマシイです。
ノリントンの映像を見てみたいものです。
投稿: リベラ33 | 2006年11月11日 (土) 17時41分
りべら33さん、こんばんは。テレビカメラ入ってましたよ。
ノリントンの後頭部は円形○○です。昨晩、私の前の席にも同じ○○があってオーバーラップして、気になって仕方がなかったです。
愉快なノリントンはテレビで見ると単なるぶらぶらオヤジですよ、きっと(笑)
投稿: yokochan | 2006年11月12日 (日) 00時33分
こんにちは。
先日はありがとうございました。
あっという間の4時間でした。
来月EINSATZでお目にかかりましょう。
P.S
プティボンのガラコンサートの映像、楽しみにしておいてください。
投稿: romani | 2006年11月12日 (日) 13時41分
romaniさん、こんにちは。先日はこちらこそありがとうございました。
ほんとうに楽しかったです。PS拝見して、もうワクワクものですよ。
感謝感激雨あられです。
大阪楽しみにしてます。
投稿: yokochan | 2006年11月12日 (日) 14時22分