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2006年11月 1日 (水)

モーラン 弦楽四重奏曲、ヴァイオリン・ソナタ

昨晩は、DGのビジュアル戦略にまんまと乗ってしまい、ネトレプコを堪能したが、このところご無沙汰の英国ものに回帰しよう。

Moeran_quartet


アーネスト・モーラン(1894~1950)の室内楽を2曲集めた好CD。
モーランはかつてそのヴァイオリン協奏曲を何故か近衛十四朗とともに取上げた。名前とはうらはらに、時代に逆行した英国抒情派のモーラン、V・ウィリアムズを思わせる保守派だが、作品数は少ないものの全貌はまだ明らかになっていないのでは、と思われる。
本格的に作曲を始めたのが1912年からで、病弱ゆえ1950年に亡くなってしまうので、作曲活動は38年あまり。初期には、同じ抒情派「アイアランド」とともに活動していた。

今回の2曲は1921年頃の、若い時分の作品で、両曲とも3楽章からなる。
まるで対になったかのような、姉妹作に感じる。
どちらの曲も、両端楽章はモダンな曲想を伴ないながらも、ドビュッシーを思わせる雰囲気も見せる。
しかし、なんといってもそれぞれ2楽章の緩徐部分がモーランらしい聴きもので、幻想的かつ夢想的な静けさに満ちている。
夜更けにじっと一人耳を傾ける音楽で、素直に心に染み込んでくる。

演奏は、めずらしくもオーストラリアの楽団で、メルボルン四重奏団と、その第1ヴァイオリン奏者によるもので、まずは過不足なく曲を楽しませてくれる。
いかにもシャンドスらしい、英国の湖水地方のジャケットの写真も素敵な1枚。

久方ぶりに英国音楽に戻ってきて、まるで懐かしい故郷に帰ったかのような思いに満たされた。どこもかしこも、かつて親しんだ美しい景色に満ちていた。

アバドの壮絶な演奏を体感し、音楽を愛する純粋な芸術家のひとつの到達点(まだこの先もあるであろうが)を見た思いがした。
それを全霊込めて受止めることも、音楽の偉大な楽しみ方。
 と共に、ワーグナーの人を酔わせてやまない完璧な総合芸術を楽しみ、今夜の英国音楽のように、音楽による詩的な心の旅に思いをはせることも、私の大きな喜び。
加えて、人間の声という歌の楽しみも捨てがたい。

こんなところが、私の音楽を楽しむ基幹となっていて、最近それが絞り込まれてきた気がする。

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