ファビオ・ルイジ ウィーン交響楽団 演奏会
ファビオ・ルイージ指揮ウィーン交響楽団を聴く。
ルイージは最近の活躍ぶりから、要注目の人で、私は昨年のN響、今年の新国に続いて3回目の実演。
飛ぶ鳥落とす勢いの彼は、グラーツに始まり、ウィーン・トーンキュストラ、ライプチヒ放送響、スイス・ロマンド、ウィーン響、そして遂には、ドレスデンとステップを駆け上がってきた。この10年のことだから指揮者不足とはいえ、恐れ入る。コンクールなどで、派手な経歴を誇る人でなく、今となっては、いにしえのお決まりコースのオペラ劇場からコツコツと叩き上げてきた本格指揮者なのだ。
だから守備範囲も広大で、殆どのオペラ、オーケストラ作品がそのレパートリーとなっている。
一方のウィーン響は1975年、ジュリーニの指揮で聴いて依頼30年ぶり。以来ウィーンのセカンド・オケみたいに扱われがちだった、このオケが好きだった。
しかし、ジュリーニの後がアレレの連続で、ラインスドルフ・シュタイン・アツモンの三頭体制に続き、ロジェストヴェンスキー、プレートル、デ・ブルゴス、フェドセーエフという感じ。
何度も来日しながら触手が伸びなかった。そんな訳で今回は、待望のコンビでの来日となり、即決チケットだった。
本日のプログラム。
モーツァルト フィガロの結婚 序曲
〃 ピアノ協奏曲第22番
ピアノ:上原 彩子
マーラー 交響曲第1番「巨人」
@東京芸術会館
フィガロはさらさらっと、小気味よく、次いで真赤なドレスの上原が登場。
彼女はFMライブでチャイコの協奏曲を聴き、その目覚しい技巧と大胆さが印象に残っているが、モーツァルトはどうなるんだろうか?との思いで聴き始めた。
ところが、これがクリアーなピアノで中期のモーツァルトにいいのであった。音のタッチが初々しく、それがホールに響きわたるのは、彼女の強靭なテクニックと打鍵の正確さなんだろう。圧巻は早めのいテンポで生き生きと進められた3楽章。オペラアリアのような溜息まじりの素晴らしい曲を、聴いてて浮き浮きしてしまうくらいの楽しさで演奏してくれた。
アンコールは「ラフマニノフの前奏曲op32-12」、こちらにこそ彼女の本領が発揮されてたかもしれない。旋律を大きく歌う呼吸はラフマニノフそのもの。
ルイージも腰掛けてじっくり聴いていた。
休憩後のマーラーは、面白かった。アバドの壮絶演奏とは比較の次元が全く異なるが、通常のマーラー演奏としては表現意欲が漲り、オーケストラの丸くも時おりシャープな響きも充分楽しめた。
マーラーが普遍的になり、ことに1番などは耳にタコ状態の名曲になってしまった昨今、いかに聴かせるか。ルイージは少し工夫を凝らした独創性を見せた一方、マーラーの譜面を信じきったかのようなオーソドックスな曲作りもした。
特に耳が立ったのが、2楽章のスケルツォの緩急のつけ方の極上の旨さ。
それから、3楽章は、コントラバスがソロでなく、全員で弾いたのがビックリだったが、主部とリズミックな中間部の旋律(かなり速い)の対比。
ラストは一気にドラマティックに仕上げたが、ホルン陣は着席したまま。過度の演出はしないが、おやっと思わせる瞬間が適度にあり、聞き古した曲でも実に新鮮な響きに出会えた。
大きな拍手に応え、アンコールは「J・シュトラウスの南国のバラ」。
これの選曲はナイス。ウィーン・フィルのように喜びを満面に表わしながら演奏するのでなく、シンフォニックに正攻法にウィンナワルツを演奏してくれた。
ルイジがどんな顔で指揮してたかは、判然としないが、後姿からは、かなり真面目・真剣な演奏ぶりだった。でも出てくる音楽は、さすがはウィーン。管楽器の独特の甘い音色や、柔らかなピチカートなどは独特のものがあり、楽しめた。
ルイージは、ジェノヴァの生まれ。生粋のイタリア人。それも「シモン・ボッカネグラ」と同じジェノヴァの海の男。知的な反面、地中海の陽気さもある。亡きシノーポリの後を継ぐような気がする。
マーラーに心酔しつつ、やがてワーグナー、R・シュトラウスの世界でも第一人者になるであろう。イタリア系指揮者の先達の集大成は、この人のようなマルチ指揮者に終錬されるのではなかろうか。
| 固定リンク
コメント
ぼく、VSO大好きなんですよ。
VPOより好きかもしれませんって言うと、随分驚かれますが、そんなに驚くことなでしょうかね。
しかし今年は予算不足と、オールモーツァルトというベタなプロに断念。
またの機会を待ちます。
投稿: リベラ33 | 2006年11月 3日 (金) 09時27分
リベラさん、こんばんは。
私もウィーン響は好きですが、フィルハーモニーと比べてしまうと、どうも・・・・。VPOは別格なのでこの際置いておきましょう。
でもVSOはもっと録音があってもいいと思うんですけどねぇ。
投稿: yokochan | 2006年11月 3日 (金) 22時22分