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2006年12月 1日 (金)

ワーグナー 「神々の黄昏」 クナッパーツブッシュ

Gottergammerung_knappwetsbusch ようやくたどり着いた「バラバラ・リング」最終夜「神々の黄昏」は、もうこれしかない選択。大方の予想通りでしょうか。
 
戦後バイロイトの記念すべき出発。後に、「新バイロイト」と呼ばれるようになった、大リヒャルト・ワーグナーの孫「ヴィーラント・ワーグナー」が過剰な舞台装置や演技を廃し、簡潔で象徴的な無駄のない演出を創出した1951年。(リング通しの初演が1876年だから、75年しか経っていないことになる。)
この年のリングは、クナッパーツブッシュとカラヤンが分担した。
CDジャケットは、右から「大ワーグナーの肖像」「ヴィーラント」「カラヤン」「ウォルフガンク」「クナッパーツブッシュ」。弟ウォルフガンクだけが存命で、バイロイトの総帥として君臨してきた。今後も一族が引継ぐことになろうが、いかにワーグナーの毒気を孕んだ血統を保って行くか、目が離せない。

A1 この奇跡とも言える音源の登場は、数年前たいへん話題になった。
かのカルーショウやウィルキンソンといったデッカの録音陣が乗り込んでライブ録音を貫行した。カルーショウはバイロイトの特殊な音響を捉え切れなかったと考えていたらしい。
でもこうして復活した、CDは当然モノラルながら木質の柔らかな素晴らしい音を聞かせる。だが、何よりもこの音源の復活を阻んだのが、EMIのレッグ関係者の同意が取れなかったことらしい。このあたりは、さらに詳しい資料が多々出ている。

 ブリュンヒルデ:アストリッド・ヴァルナイ  ジークフリート:ベルント・アルデンホフ
 ハーゲン   :ルートヴィヒ・ウェーバー  グンター   :ヘルマン・ウーデ
 グートルーネ :マルタ・メードル       アルベリヒ  :ハインリヒ・フランツィ
 ウォークリンデ:エリーザベト・シュヴァルツコップ

Varnayaldenhoff 巨大な重厚なドラマをさぞかし築いているのだろうとの予測とは裏腹に、クナッパーツブッシュの指揮のドラマを見据えた即興的な柔軟さはどうだろう。重ったるい響きは一切なく、音のひとつひとつに活力があって、生命力に満ちているものだから、録音の古さなど微塵も感じさせない。
 一部の歌手に、今からすると古臭い大げさな歌いまわしを感じるが、ヴァルナイのブリュンヒルデを筆頭に、思わず背筋を伸ばしてしまうような、素晴らしすぎる歌唱が生々しく聴かれる。
ほんとうに、55年も前の録音なのだろうか?と何度も配役表やデータを確認する始末。
今年亡くなった「ヴァルナイ」には泣かされる。ブリュンヒルデやイゾルデは、ニルソンのすり込みが強すぎるが、最近のヴァルナイの復刻音源を聴くにつけ、ニルソンを唯一忘れさせる、いやそれ以上のブリュンヒルデに感銘の受け通しだ。

もう一人のブリュンヒルデ「メードル」がグートルーネというのも凄い配役。
アルデンホフは力みが古臭いが、以外とイケてる。でもルートヴィヒは以外に古ぼけた印象を受けている。

半世紀以上前の聖地バイロイトの音源が、こうして極東の自宅に蘇える。
何か非常に不思議なものを感じる。
ヴィーラントの演出では、「ジークフリートに葬送行進曲」は何もない暗闇の舞台に音楽だけが、響き渡ったという。考えただけで素晴らしいと思う。
クナの醸し出す叙事詩的なワーグナーやベームの求心的ワーグナーこそ、そうした演出に相応しいものと思ってしまう。
映像は当然残されようがなく、音楽だけがこうして現存するわけだが、現代では映像+音源で永久的に保存が可能になってしまった。
半世紀後、それらは残るだろうか?

12月を迎えると、8月と並んでワーグナー好きには胸が騒ぐ季節となる。

 

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コメント

たしかに12月は、日本人にとってワーグナーの季節だと思います。昔から、ワーグナーはFMでもっとも良く聴いています。タダですし(笑い)。そういうわけなので所持するCDはとても少ないのですが、このクナッパーツブッシュの「黄昏」は持ち合わせています。この演奏には圧倒されます。録音の古さは感じさせません。

投稿: 吉田 | 2006年12月 2日 (土) 17時36分

吉田さん、こんばんは。私もタダFMでワーグナーを聴いて育ったクチです(笑)歌詞もわからず、長大な音楽に浸ってました。
このクナのCDは、黄昏だけというのが残念でありません。

投稿: yokochan | 2006年12月 3日 (日) 00時24分

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