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2006年12月 9日 (土)

ベートーヴェン 歌劇「フィデリオ」 新国立劇場

Fidelio


  新国立劇場にて「フィデリオ」を観た。午後2時開演で4時30分には幕となるのでコンパクトでよろしい。
このオペラは音だけで聴いても、どうもオペラらしいところが感じられずいつも違和感を覚えてしまう。交響的オラトリオのようだ。あちこちベートーヴェンらしい旋律がちりばめられているから、よけいに交響曲やミサ曲を聴いてるような心持ちとなる。聴き込みが足りないのだろうか。
舞台では台詞がたくさんあるし、合唱も活躍するから大分様子が違うだろうということで臨んだ。
プリミエは2005年のプロジェクト。

ところが、これかなかなか難しいもので、群集の変な衣装と動きが気になって仕方がない。看守達はゲシュタポみたいだし、囚人達はパン屋さんみたいに見え、独房から眩しい光りとともに出てくるところは、映画「未知との遭遇」の一場面を思わせた。
さらに彼らは一斉に太極拳をやりだしてしまった。これには失笑。
さらに夫婦愛を讃えるラスト、群集はタキシードとウエディングドレス姿で登場。この人達はいったいなんだろう?囚人だったのでは?

Fidelio4

レオノーレは聴衆の面前で服を脱いで赤い服に着替えちゃったから、フロレスタン一人がぼろぼろ。日本のお父さんのように惨め。         
こんな風になるなら、余り動きを入れず、静かな舞台に仕立てたほうがよかったのではないかな、と私は思ったが。

これだから私には、どうにも難しいオペラである。
音楽そのものはとても美しく、人間味に満ちた作品なんだけれども。

  レオノーレ:エヴァ・ヨハンソン  フロレスタン :ステファン・グールド
  ドン・フェルナンド:大島幾雄   ドン・ピツァロ:ハルトムート・ウェルカー
  ロッコ   :長谷川 顯      マルツェリーネ:中村理恵
  ヤキーノ  :樋口達哉

 

      コルネリウス・マイスター指揮 東京交響楽団
         演出:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ

Fidelio3

今回大注目の歌手は、グールド
バイロイトでタンホイザーを数年歌い、素晴らしかった。
今年はついにティーレマンの指揮のもと、ジークフリートに挑戦し見事な成果を収めた。
ネットでその成果を聴いたが、馬力も知性も充分備わった本格ジークフリートと感じた。
 今夜のフロレスタンも劇場の隅々まで響き渡る豊かな歌声を聞かせた。
とても囚われて兵糧責めにあっている男の声には聞こえないのが難点。
ヨハンソンと長谷川は、昨年の「オランダ人」コンビで、その時の不調からすると別人のように立派な歌声。中村は、素晴らしかったイドメネオのイーリアに続いて、これまた好演。
ウェルカーはアバドのローエングリンからすると、やや力が衰えた感あるが、ツボにはまっているし、樋口のヤキーノもこういう役は旨い。
 てな訳で、歌手陣はすべてOK。

指揮の「マイスター」は名前からして立派だが、やや薄味。
音楽をスッキリと見通しよくすることは大変よかったが、ドラマ性の欠如を終始感じた。
もっと緊張感に満ちた響きをつくり出さないと、フィナーレの賛歌が生きてこない。

こんな具合だが、歌に関しては完璧。舞台は?、指揮はもうひと頑張り。といった按配に終わった。やはり、「フィデリオ」の苦手意識は消えない。CDラックにひとつもないこの作品は、まだ補充できそうにない。当面エアチェック音源を聴き込んでガマンしよう。

新国は、10周年を記念して、「愛称」を募集中です。見事選ばれれば10演目ペア招待らしい。う~む。1月末が締め切り。タダ・オペラなんて、こんなチャンスは捨て置けないが、私にはそんな才覚ないし・・・・・。

10年を経た新国。オペラが普段いつでも楽しめる、こんなことはかつて想像できなかった。これは最大の功績。
ホールのキャパシティーや、オペレーションの問題は課題ながらも、我々オペラ好きの音楽生活にしっかりと根付いた。
再演ものの客足を稼ぐ方法や、外来オペラ団の利用や交流などをうまくこなしてゆくことが、次期若杉監督の責務だろうか。期待してます。

これにて、本年の音楽会はオシマイ。

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コメント

IEを11.0にしたら、どうも日本語変換が途中でできなくなったり、途中で切れたりと不安定です。「BS」と入力したのではないのですが「こと」と打ったつもりが「カナ」ではなく、そのままローマ字で残って、それまでの60文字位が飛んでしまいました。失礼しました。
それはともかく、グールド、よかっですね。新国で今まで聴いたテノールでは間違いなく最強。それと荒くなくって品もあり、これからどんどん伸びる人だと思いました。ヨハンソンの前回の不調は知りませんが、これもグールドと見合う声で、歌の面では堪能しました。ロッコが実は重要な役回りだということもステージを観て知りましたし。合唱も相変わらずいい響き。
演出の面では”?”部分が確かに多々あり。それと26歳のマイスターのベートーヴェンに対する理解と経験の不足は否めませんでした。オペラなのにオペラではないこの曲を演奏するには、交響曲をやるつもりで演奏しなければならないんですね。
来年の「オランダ人」、「バラの騎士」、「ファルスタッフ」のチケットはもうとってありますので、若杉氏就任記念の「タンホイザー」と「アイーダ」はまず観にいくと思います。リンデンオパーは「トリスタンとイゾルデ」、「モーゼとアロン」のどちらかで上京すると思います。ドレスデン・シュターツカペレはまだ未定。でも「サロメ」は観たいなぁ(ウィーンのリザネクを観ています)。ところでデッセイって本当にくるのでしょうか。情報の出所を教えてくださればありがたいです。

投稿: IANIS | 2006年12月10日 (日) 14時01分

こんばんは。私もIANISさんと同意見です。難しいオペラであります。
来年はドイツ系オペラの当たり年で、懐も忙しい1年になりそうですね。
デッセイは、5月来日と何かで読んで、ずっと思い込んでますが、何で読んだか憶えてません・・・。

投稿: yokochan | 2006年12月10日 (日) 23時44分

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