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2007年1月13日 (土)

「ルネ・コロ」 ワーグナー集 スゥイトナー指揮

Kollo_1 ご存知「ルネ・コロ」をば。

ワーグナー好き、テノール好きなら、知らぬ人はいない、ヘルデン・テノール。ごたぶんにもれず、私もこのテノールが大好きで、70年代始めの本格デビュー時から聴き続けてきた。
最初のメジャーレコードは、ショルティの「魔笛」の武士役ではなかったろうか。その後、カラヤンとショルティに重宝され、いきなり主役に抜擢され、バイロイトでも「オランダ人」の舵手や、「ラインの黄金」のフローといった、ちょい役の登竜門から起用され、70年代半ばには、バイロイトになくてはならぬ人気歌手となった。

そんな「ルネ・コロ」も今年は70歳になる。(1937年生まれ)こちらも歳を重ねるわけね。ベルリン生まれ、祖父は多作家のオペレッタ作曲家、父も作詞・作曲・実業家、という家庭に育ったわけだから、音楽家として恵まれた環境にあった。
最初はポップス系でヒットを飛ばし、同時にクラシックの勉強も重ね、ドイツの地方オペラであらゆる役柄をこなしながら上昇気流を待ちつつ、大指揮者やバイロイト当局の目にとまることとなった。

Kollo_2 コロが登場するまでは、ワーグナーのヘルデンテナー役は、ヴィントガッセンに代表されるような肉太で、骨格豊かなたくましい声の持主が多かった。先輩格のジェームズ・キングやジェス・トーマスらのアメリカン・ヘルデンは、クリアーな声を聞かせたが、もともとのバリトン系の音域が力強さと陰りを与えていたのに対し、ルネ・コロは、明るく伸びきった鮮明な歌声に独特の甘さを加えた、それまでにない声の持主だった。

こうした声で歌われる、「ローエングリン」や「マイスタージンガー」「パルシファル」が悪かろうはずがない。自我も強いコロは、声をセーブしつつ歌手生命を長く保つことを心掛けつつ、さらに重い役柄へも慎重に手を広げていった。
「タンホイザー」「ジークフリート」「トリスタン」の諸役は、ヴィントガッセンを忘れさせてくれる名唱を残してくれた。

今回の2枚のCDは、1973年、まだ大役を手掛ける前の初々しい「コロ」をフィーチャーし、ワーグナーのテノールの主要な役柄をすべて網羅したもの。
 
  「リエンツィ」「オランダ人」「タンホイザー」「ローエングリン」「マイスタージンガー」
  「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」「パルシファル」

さすがにトリスタンはないが、素晴らしい企画である。このところ、いくつか類似の企画が出てそれらを楽しませてもらったが、出っ張り引っ込みが多すぎたし、伴奏がヘナチョコすぎた。
 そこへ行くと、コロの明るくめざましい歌は実に鮮やかで、今聴いても実に鮮度が高し、どの曲もムラなく素晴らしい。前期のものほど誰も太刀打ちできない滴るような魅力がある。唯一全曲盤のない「ジークムント」は声のハリは素晴らしいが、少し甘口にすぎるのもコロらしいところ。
 こうしたコロの歌の魅力に加えて、オーケストラが特質大に素晴らしい。
スゥイトナー指揮のベルリン国立歌劇場が贅沢にもバックをつとめている。
この雰囲気豊かで、舞台の1シーンを感じさせてくれる演奏を何と例えたらよいか。
もっと、もっと続いて欲しいところで、フェイドアウトしてしまう。
でも「パルシファル」の最後の場面と「ジークフリート」の森のささやき、そしてそして、「ジークフリートの葬送行進曲」が聴けるのである。
これらは極めて音楽的で、コロの明晰な歌と通じる世界を持っている。
スゥイトナーのワーグナーは、日本でもいくつか上演されたが、明くるく開放的な響きの印象があり、ここでも確認できる。

コロの舞台は、「タンホイザー」「マイスタージンガー」「リング」「パルシファル」と来日公演で経験でき、本当に貴重な思い出となっている。年々、横に大きくなり、上のほうも寂しくなり、苦悩の吟遊詩人が良く似合うようになった。
今は現役を引退し、自適の生活にあろうが、いつまでも元気に過ごしていて欲しい歌手だ。

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コメント

yokochanさま
お早うございます。

ルネ・コロは、私の時代のテノールです。カラヤン盤の「マイスタージンガー」、サヴァリッシュの「リンク」、バースタインの「フィデリオ」など、たいていのドイツもののオペラの主役のテノールは、ルネ・コロさんだったですね~
もう70歳なんですか、こっちも年を重ねていますから、当然のことでしょうが~
いつも若々しい声ですよね~。
東京で「パルジファル」を聴いたのを覚えています。指揮者は忘れましたが、爆~
ミ(`w´)彡 

投稿: rudolf2006 | 2007年1月15日 (月) 08時58分

rudolfさん、コメントありがとうございます。
私もコロと一緒にワーグナーにはまっていった世代ですので、何でもかんでも「ルネ・コロ」でした。
ウィーン国立歌劇場のパルシファルは、私も観ました。
指揮は、亡き「ホルライザー」でしたよ。アンフォルタスが「グルントハーパー」で、ほかのキャストもなかなかだったです。
ああ、あの頃(!)に戻りたいです。

投稿: yokochan | 2007年1月15日 (月) 23時40分

ルネ・コロが頻繁に来日してた頃は、「また、ルネ・コロか。他にテノールっていないのかな?」とか今では信じられないような贅沢なことを考えていましたっけ。
コロを初めて聴いた「リング」もよかったですが、「トリスタン」も忘れられません。確かジャニス・マルティンのイゾルデ、ハンナ・シュヴァルツのブランゲーネだったと思うのですが。ベルリン・ドイツ・オペラの。

投稿: naoping | 2007年1月16日 (火) 00時29分

naopingさん、こんばんは。
そうそう、ほんとに贅沢なことでしたね。日本でローエングリン以外全部やってくれたんじゃないですか?
唯一、トリスタンだけ行かなかったのが悔やまれますが、NHKで放送され、ビデオに撮りました。
つい先日、DVD化しましたが、イゾルデは盛りを過ぎた「ギネス・ジョーンズ」でしたよ。相変わらず叫んでましたが、中域から低域にかけての声は私好きなんです。

投稿: yokochan | 2007年1月16日 (火) 01時09分

yokochanさま

NHKホールの『パルジファル』は、ホルライザーの指揮だったんですね、すっかり忘れていました。前日は、アバド指揮のロッシーニを観ました。それは覚えています。もう20年も前のことですね~。

私のブログにリンクを張らせていただきました。
宜しくお願いいたします。
ミ(`w´)彡 

投稿: rudolf2006 | 2007年1月16日 (火) 14時02分

rudolfさん、こんにちは。
ロッシーニって、ランスへの旅ですよね。あれを行かなかった自分に腹がたちますが、当時(今も)極貧でしたので、涙を呑んだんです。

リンクに張っていただき、ありがとうございます。
嗜好が似てらっしゃいますので、毎度拝見して頷いております。
私のほうも、リンクさせていただきました。こちらこそよろしくお願いします。

投稿: yokochan | 2007年1月17日 (水) 16時52分

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