「デュオ・イン・ザルツブルク」 キュッヘル&プレヴィン
浅草「尾張屋」、永井荷風が愛した「天ぷら蕎麦」。
明治3年創業、浅草の蕎麦屋の顔。打ち合わせを見事11時30分に終え、12時前にすべりこむ。
器からはみ出る「くるま海老」の天ぷらは、揚げたてなので、汁に浸されパチパチと美味しそうな音を立てながら出てきた。あとは、言葉ありません。
今日もプレヴィンとウィーン・フィルの幸せなコラボレーションを1枚。
プレヴィンはピアノにまわり、コンサートマスターのライナー・キュッヘルがソロを受け持つ、クライスラーを中心とした粋な「ウィーン・アルバム」。
曲はクライスラーの有名どころと、「ばらの騎士」ワルツの編曲ものに、ジーツィンスキーの「ウィーン、わが夢の街」。91年、ザルツブルクでの録音
この顔ぶれと曲目から想像できるとおり、思わずニンマリのウィーン情緒溢れる1枚だ。
その姿(頭)に似合わず、常に若いと思っていた「キュッヘル」も、もう56歳。
事故死してしまった、「ヘッツェル教授」から、ウィーン・フィルの顔を引継いでもう15年以上が経つ。私が始めて、ウィーンフィルを聴いたのが1975年。あの伝説のベーム来日の折りだが、ベームは抽選にもれてしまい、若獅子「ムーティ」の日本デビュー公演を聴いた。
その演奏会で、ブラームスの二重協奏曲のヴァイオリンを弾いたのが若き「キュッヘル」であったのだ。まだ25歳の「キュッヘル」は、栗色の髪がまだかなり健在で、チェロの「シャイワイン」とともに、ベテランが多かったこのオーケストラにあって、新しいウィーンを感じさせる爽やかさを滲みだしていた。
あれから30年が経ち、キュヘルも(私も)変貌してしまった。
でも音楽は変わらない。ウィーン・スタイルがしっかり身について、嫌味にならない上品なポルタメントや洒落た音の切り上げ方。
ウィーン風といっても、ネットリと時代を感じさせる遺物ではなく、ウィーンフィルが普通に「春祭」や「ショスタコ」を演奏するようになったように、このヴァイオリンもさりげなく現代風で、スマートなのだ。
プレヴィンのピアノがまたイイ。キュッヘルと表裏一体でありながら、単なる伴奏を超えた独特の風情を醸し出している。指揮の時と同じく柔らかな音色ながら、歌いまわしやリズム感がちょっとスゥイングするようで、味がある。
「愛の喜び」、「ばらの騎士」、「ウィーン、わが夢の街」・・・、何とチャーミングなんだろう。
「ウィーン、わが夢の街」は、原曲の歌が大好きで、クンツ、シュワルツコップ、M・ホリディなどなど・・・ああ、ため息がでちゃう。
ウィーンは一度きり行ったことがあるが、思いのほか大都会で、滞在中はちょっと怖いイメージがあるものの、次の都市へ移動してみると、妙に懐かしく思い起こされる「あとを引く」街だった。
そんな「あと引く」きょうの1枚であった。
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コメント
こんばんは。浅草、頻繁に行かれるようでうらやましいです。
尾張屋はどんぶりからはみ出たエビてんぷらをよく見かけるのですが、いまだに店に入ったことがありません。店の前は通ったのですけどね。
行きたいなあと思っているのは、ここの他にはヨシカミです。今半も行きたかったのですが、一緒に行った友人が「肉はちょっと・・・」とか言ってダメでした。モルモン教じゃないんですけどね。
すいません、音楽の話がないですな。ウィーン、今年こそは行けるといいな、と思っています。
投稿: naoping | 2007年1月27日 (土) 00時22分
こんばんは。庶民的な浅草は食のワンダーランドです。
浅草オペラなる世界があったなんて、夢物語みたいですが、田谷力蔵の写真なんかが、デン助さんらと一緒に飾れていて楽しいものです。
「ヨシカミ」はいいですよ。ここのハヤシは絶品。
以前、私の別館の「東京」カテゴリーで紹介しました。カツサンドも最高!
投稿: yokochan | 2007年1月27日 (土) 01時36分