R・シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」 バーンスタイン指揮
R・シュトラウス、オペラ・シリーズ。
オペラ第5作目の「ばらの騎士」にたどり着いた。
前作の「エレクトラ」からの変貌ぶりはあまりにも大きい。
シュトラウス56歳の作品。
ホフマンスタールとの名コンビの生み出した、爛熟のウィーンを舞台にした、「ほろ苦い火遊びの終焉と諦念を悟る大人の物語」。
「ばらの騎士」を誰の演奏で取上げようか、シュワルツコップか、クライバーか、ハイティンクかベームか・・・迷った末(あんまり迷ってないけど)、やはりこれしかないと、「バーンスタイン、ウィーンフィル」盤に決定。
↑ これこれ!
バーンスタインのジャケットのバラが脳裏に焼きついていたし、86年のウィーン国立歌劇場の来日公演で、初めて「ばらの騎士」の舞台に接し、銀のバラの贈呈の場面にウットリしたもんだから、その数年後のいまでもその一度しかないウィーン訪問の折に、市内で「銀のバラ」を探しまくった。
食器や雑貨を扱う店にありましたよ。
でもショーケースの中に入ってて、「Siver Roses!」な~んて、何度言ってもお店のオバハンに通じない。
目の前に連れてって「あれ、あれっ!」でようやく購入することができた。
ウィーンの人は、こんなもん何とも思ってないみたい。
ちなみに、この画像がケース入りで一番高いシロモノで、いまも健在です。
さらに安いものを数本買って土産物として配った。いちいち由来を説明しながらね。
そして、数ヶ月してバラを配った親戚を訪問したら、銀のキラキラがすっかりはげて、「ビニール・プラステックのバラ」に成り果てていた。「メッキがはげる」とはこのことか・・・チ~ン。
R・シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」
マルシャリン:クリスタ・ルートヴィヒ
オクタヴィアン:グィネス・ジョーンズ
ゾフィー :ルチア・ポップ
オックス男爵 :ヴァルター・ベリー
ファーニナル:エルンスト・グートシュタイン
マリアンネ:エミー・ローゼ
ヴァルツァッキ:マレイ・デッキー
アンニーナ:マルガリータ・リロヴァ
歌手:プラシド・ドミンゴ
レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
プロデュース:ジョン・カールショウ
エンジニア:ゴードン・パリー、ジェイムス・ロック、ジャック・ロウ
(1971.3~4 @ゾフィエンザール、ウィーン)
注目は、カールショウ率いるデッカの名うての録音チーム。
ゾフィエンザールという、デッカのウィーンでの録音拠点、そうウィーンフィルのデッカあの音色を知り抜いた面々によるレコーディングであること。
71年の録音で、もう36年が経過したがその鮮度は高く、音楽的。
肝心の演奏も、Good!!
まず、バーンスタイン。
有名な話だが、楽員にむかって「これはあなた方の音楽だから、私は棒を振るだけ」というようなことを言って、プライド高い当時のウィーンフィルの面々をしびれさせた。
そう、ここではウィーンフィルの滴るような美音が隅々まで味わえるのだ。
とか言いながら、バーンスタインはしっかり手綱を締めていて、弾むリズム、今にも走り出しそうな躍動感、まばゆいばかりの輝かしさ、濃厚なロマンティシズムは、バーンスタインのいつもの音楽そのもの。
そう、しっかり、バーンスタインしてるし、後年我々が驚嘆した「カルロス」も真っ青の生きの良さが素晴らしい音質で味わえる。
「音のご馳走」である。
スィートなチョコレートで、ウィスキーを飲むもよし、果肉の豊かなフルーツを摘まんでフレッシュな白ワインを飲むのもよし。
歌手も当時としては最高である。
メゾのルートヴィヒがマルシャリンのが最初あれ?であったが、葛藤に疲れた様子の、粋も甘いもわきまえた女性を豊かな声域で歌いつくしていて文句ない。
ジョーンズの低音域の魅力が私は大好きで、ワーグナーの諸役で叫ぶような高域とは正反対の真中から下のほうの声の、グローリアスな響きがたまらなくいい。
そして、そして・・、ルチア・ポップのゾフィーが絶大的に素適だ。
こちらは、レコーディングのスナップ写真。当時のレコ芸からの借り物。
若いポップは、茶目っ気たっぷりで、カメラを向けるとアカンベーをしたりしたそうだ。
そんな、彼女の気質が素直にでた、このゾフィー、古今東西のゾフィー大賞である。
第2幕のジョーンズとの銀のばらの献呈の場面、身震えがくるくらいの素晴らしさ。
この三人、「ルートヴィヒ」はかつての名「オクタヴィアン」、「ジョーンズ」は後にドラマテックソプラノとしてワーグナー歌手の大御所に、そして「マルシャリン」に、「ポップ」はシュトラウスの諸役を極め、晩年は名「マルシャリン」になった。
ウィーン生まれのベリーのオックスは、少し生真面目で、小うるさい、そこらにいるオッサンを歌い描いていてうれしい。
うれしいって、我々オヤジと等身大だから・・・・。
ちょい役の歌手で、ドミンゴが登場していて、最盛期の分別臭い歌とは思いもつかぬイキのいい歌声でほれぼれしてしまう。
そんなこんなで、誉め尽くしのバーンスタインの「ばらの騎士」。
最後に、ウィーンフィルのホルンは最高!!!
ついでドレスデンとミュンヘンだな。
今年から来年にかけて、日本は「ばらの騎士」の上演だらけになる。
「W・メスト=チューリヒ」「シュナイダー=新国立劇場」「メルクル(ルイージに交代)=ドレスデン」「琵琶湖ホール上演+神奈川県民ホール・ホモキ演出」。
新聞でも記載されていたが、これはまさに「ばら戦争」の年だ。
CDでも、最終場面を収めたものが最近やたらと多い。
時代がシュトラウスと、いよいよマッチングしてきたのかしら?
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コメント
「バラ戦争」とはうまいこといったもんだ。僕は新国の千秋楽を観にいくので、ゼンパーオーパー、どうしようかと思案しています。デッセイのリサイタルと同じ月だしなぁ(月1の上京と決めてるもんで)。
そういえば、「サロメ」も新国の新しいシーズンでは再演されるし、2月に「ダフネ」の日本初演が行なわれるところを考えると(チケット譲っていただきましたので、2/10の上演を観にいきます)、わが国のオペラ受容もシュトラウスを受け入れるレベルに達した、ということでしょうか?
投稿: IANIS | 2007年1月27日 (土) 23時29分
「ばら戦争」は私もいくつか従軍しようと企んでます。
「ダフネ」、私も10日ですよ。会場で是非お会いしましょう。
鶴首の一晩だったのです。
投稿: yokochan | 2007年1月28日 (日) 00時23分
yokochanさま お早うございます。
バーンスタイン盤の『薔薇の騎士』、私が初めて買ったLPでした。LP時代はよかったですよね、写真集のようなリブレットが付いていました。解説も多かったし~。
懐かしいです。今でも、よく聴きます。
ルートヴィヒさん、ジョーンズさん、ポップさん、ベリーさん、本当に良いキャストだと思います。録音は大変だったようですけどね
オクタヴィアンからマルシャリンに役を変わっていくのが多いですよね、ルートヴィッヒさん、ジョーンズさんも。ポップさんがマルシャリンを歌っておられるとは知りませんでした。CDも出ているのですか??出ていたら、欲しいです~
ミ(`w´彡)
投稿: rudolf2006 | 2007年1月28日 (日) 08時46分
っていうことで、TBさせていただきました。
私もクライバーの「バラ騎士」見てウィーン旅行に行っちゃったクチなんですが、銀のバラを購入するなんて頭のすみっこにも浮かばなかったです。国立歌劇場に持ってくハンドバッグを探すのに一苦労、友人は合う靴を探すのに一苦労て・・・。
ほんとに、このポップを超えるゾフィーはいないですね。もう私の生きてるうちには出ないんじゃないかな、と思うくらい。ポップ、ほんとにいい歌手でした(涙)。
投稿: naoping | 2007年1月28日 (日) 09時40分
rudolfさん、コメントありがとうございます。
LPはジャケットやカートンBOXが豪華で、所有する喜びが味わえましたが、CDは味気ないですね。第一字がちっちゃくて目がしょぼしょぼして見えません(笑)
ポップのマルシャリンは残念ながら、残されていないようです。
ミュンヘンで演じてたはずですが、クライバーが彼女をつかわず、フェリシティ・ロットだったことが面白いです。
投稿: yokochan | 2007年1月28日 (日) 14時03分
naopingさん、コメント・TBありがとうございます。
「かぶり」すいません。
私の観たバラ騎士公演は、シュナイダー指揮のものでした。
ウィーンに着いたら「銀ばら、銀バラ・・・」と唱えてました。
今ではお宝ですよ、これ見て酒が飲めます。そういえば、テレビでヤンソンスのブルックナーをやってましたが、観客が客席からヤンソンスに「銀のバラ」を手渡してました。ええもんです。
ポップの死は痛恨ですね(涙)。
投稿: yokochan | 2007年1月28日 (日) 14時08分
レコーディングのスナップ写真、当時のレコ芸を持ち合わせてはいないのですが、どうもポップでなくジョーンズのような気がします、いかがでしょうか。
投稿: TG | 2014年12月13日 (土) 23時02分
TGさん、こんにちは、コメントありがとうございます。
当時の切り抜きで、あらためて確認しましたが、間違いなくポップでした。
いくつかのショットがあり、デイム・ジョーンズは服装も、髪は銀で別に並んで写っておりました。
しかし、もうありえない組み合わせに隔世の感がありますね。
投稿: yokochan | 2014年12月14日 (日) 12時36分
お手数をかけました。口のあたりがジョーンズのようにも思えたのですが、ポップと並んだ別のショットがあるということであれば間違いないですね。ありがとうございます。
投稿: TG | 2014年12月17日 (水) 13時47分
TGさん、こんにちは。
ご丁寧にありがとうございました。
あの頃は、スリムでしたね・・・
投稿: yokochan | 2014年12月18日 (木) 00時05分