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2007年1月17日 (水)

R・シュトラウス 楽劇「エレクトラ」 バレンボイム指揮

Rstrauss_elektra

今、札幌の某オフォスサポート店で記事をアップしております。
先週末に作成済みの「エレクトラ」。
札幌は、確かに寒い。マイナス気温だけど、天気に恵まれ気持ちがいい。
この冬は、市内は極度に雪が少なくて拍子抜けです。
雪祭りの作業も始まっているが、ダンプで雪を外部から一生懸命運んでいる。
またも食べすぎのメタ出張。帰宅したら、別館にておいしいものご披露します。乞うご期待??

R・シュトラウスのオペラ全曲シリーズ、作曲順に追って、今回は4作目の「エレクトラ」。1907年に完成している。シュトラウス44歳。
有名なオーケストラ作品でいくと、もうあらかたの曲は作り終え、「家庭交響曲」と「アルプス交響曲」の間にある。もうオーケストラ作品は卒業してしまっていたのである。(サロメとほぼ連続)
いかに早熟かわかる。この後に9曲のオペラが続くわけで、これもまたすごい話だと思う。

台本は、ギリシア三大悲劇詩人ソフォクレスの「エレクトラ」を演劇化した「ホフマンスタール」によるもので、ここからホフマンスタールとの完璧なるコラボが生まれたわけである。

音楽は「サロメ」の延長線上にあって、不協和音や激しい響きに満ちていて、そんな中にもシュトラウスらしく親しみやすくも甘い旋律や、陶酔感に満ちた響きも次々に現れるから、決して聴きにくい音楽ではない。
ワーグナーを経てマーラーやシェーンベルクと並ぶ世紀末サウンドなのだ。

モーツァルトの「イドメネオ」に出てくる、いつも怒っている「エレクトラ」は、この劇の後年のエレクトラの姿。
 ここでは、ミケーネ王である父アガメムノンを、その妻クリテムネストラと不倫を結んだエギストらに殺された、長女エレクトラが父の敵を討つという復讐劇となっている。
気が弱く女性的な妹クリソテミスと、復讐の実行犯である姿を変えつつ帰還した弟オレスト、エキセントリックで夢見心地のエレクトラ3姉弟の対比も鮮やか。

筋立ては簡単。宿敵の叔父と母に軟禁される姉妹、悪夢にうなされる母をもてあそぶエレクトラ。そして、死んだと自ら噂を流し帰還する弟と感動的な対面を果たすエレクトラ。
弟が復讐を実行に移す。まず母の断末魔の叫び。次いで叔父エギストも殺され、王宮内を制圧した弟が中心となり革命が成就する。
歓喜する姉妹ふたり。さらに喜びのあまり狂喜したように踊り狂い、息絶える。
 そう死が横溢する血なまぐさい劇なのだ。

注目は、エレクトラとオレストの出会いの場面。姉弟なのに、かなり情熱的である。
ジークムントとジークリンデそのものを思わせるし、シュトラウスもかなり意識していたのではないか。この姉、「オレスト~」と何度も歌うし、徐々に甘く歌う。
最後に、姉が倒れ、妹がまた「オレ~スト・・・」と叫ぶ。ここで幕となるが、この3人の姉弟はかなり倒錯している。

でもシュトラウスの音楽は、刺激的かつ濃厚・甘やかで、私には素晴らしい以外の何ものでもない。
バレンボイムのCDは、ショルティとニルソンのような強烈さはない。
オーケストラの響きは見事にコントロールされ、かなり耳に心地よく、明るい雰囲気さえ漂う。スゥイトナーの個性が伝統あるベルリン・シュターツオーパーに植え付けた軽やかさや明晰さをさらに進化させたのが、バレンボイムと言えそうだ。

歌手も今が旬で豪華な人選、といっても録音時の95年には、新鋭だった人ばかり。
ポラスキのタイトルロール、マークのクリソテミス、シュトルクマンのオレスト、ボータのエギストらがそれにあたる。バイロイトで活躍のヴォトリヒまでちょい役で登場。
みんな素晴らしい歌唱。そして、意外な要がマイアーのクリテムネストラのすごさ。

バレンボイムの成功作のひとつ。

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