ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」 カラヤン指揮
「トリスタンとイゾルデ」で検索していたら、「イゾルデ」というダイニング・バーがあることを発見。東京神田の店で、こ、これは・・・、と大いに期待してチェックしたら、ロック系のライブハウスも兼ねる、そちら系のお店であった。これだと、ちょっとキツイな。
清里には、森のレストラン「イゾルデ」があってこちらはいい雰囲気。でも遠いわ。
ちなみに、「トリスタン」は光学関係の会社や「ビンボール」(笑える)まであり。このビンボールは、それ風で唸らせるけど、こんなの誰がやるかっての。
そこで今日は、こんな、みんな大好き「トリスタンとイゾルデ」を登場させてしまおう。
一度聴き出したらやめられない、媚薬中の媚薬。前奏曲が始まったら、その後は「愛の死」ではガマンがならぬ。無伴奏による、若い水夫の悲しげな歌がこなけりゃダメ。
惚れたものの弱み、地獄の底まで、死ぬまで付き合うぞ。
ワーグナーだらけのこのブログでも「トリスタン」は5度目の登場、ご苦労さん。
1952年、戦後新バイロイト2年目の貴重なライブで、オルフェオ・レーベルのバイロイトお宝復刻の第1弾にもなったCD。
カラヤンがバイロイトに登場したのは、51年と52年の2年間だけ、リング、マイスタージンガー、トリスタンを手掛けたのみで、以降は全く出演しなかった。ヴィーラント・ワーグナーとの対立や、独特な音響に手を焼いたともいわれる。後年、ヴィーラントの死後、再登場の声もあがったらしいが、完璧主義のカラヤンは臨時編成の祝祭オケに我慢がならず、ベルリン・フィルを引き連れていくなら・・・などと、のたまったとか何とか。
結局、ザルツブルクで自分の音楽祭を開催することになり、ベルリン・フィルをピットに入れてしまった。まさに、「帝王」様の成せるワザ。
70年代に、そのザルツブルクで自分の思い描くビューティフルな「トリスタン」を実現したが、52年若干44歳の壮年カラヤンの「トリスタン」は覇気とオペラティックな盛上りに満ちた演奏である。
地方オペラ劇場から、叩き上げてきたカラヤンにとって、手の内にはいった音楽であろう、ひとつのドラマの中にいくつもの山場を作って、そこに向かって突き上げていくような気合を感じる。後年のものもそうだが、低音域のうなりをあげるような迫力も素晴らしい。
トリスタン:ラモン・ヴィナイ イゾルデ:マルタ・メードル
マルケ :ルートヴィヒ・ウェーバー クルヴェナール:ハンス・ホッター
ブランゲーネ:アイラ・マラニウク メロート :ヘルマン・ウーデ
歌手の黄金時代の幕開けでもあった、新バイロイト。
私の好きな「陰りあるヘルデン」、ヴィナイには泣ける。フランス系だが、南米に生まれ、メキシコで勉強しそこに没したが、バリトンでスタート、テノールに転じ、名オテロとして鳴らしバイロイトに登場した。50年代終わり頃、高域に支障をきたし、再びバリトンに復帰。
こんな珍しい声の遍歴を重ねた。エスカミーリョ→オテロ・トリスタン→イャーゴ・テルラムント・・・。バリトンの下支えがあるから、声は力強いが決して重ったるくならないは、ラテン系の出身と南米での勉学経験ゆえか。このような声を持った歌手は今はいない。
しいて言えば「ホセ・クーラ」であろうか。
メードルのイゾルデも予想以上に素適だった。優しさと暖かみのある声は、同世代のヴァルナイやニルソンとはまた違った独特のイゾルデを歌いだしている。ニルソンの凛としたイゾルデもいいが、メードルの等身大の女性的なイゾルデも気にいっている。
後年の録音の「デルネッシュ」にカラヤンが求めたものがわかるような気がする。
ホッターのクルヴェナールがユニークだ。ユニークと言えるには、ウォータンのイメージを我々が強く持ちすぎているからであって、こんな気品と友愛に満ちたクルヴェナールは知らない。でも1幕でのいたずら気のあるクルヴェナールは、ホッターだと真面目すぎて、深刻なヴィナイとの掛け合いは、ウォータンとジークムント親子のようだ。
今から55年も前のライブながら、演奏・録音ともに新鮮で、深夜ヘッドホンでしんみり聴いていると眼前に、ヴィーラント演出の素晴らしいバイロイトの舞台が蘇えってくるようだ。
カラヤンが、自分のトリスタンをどう進化させていったか、再度取上げてみたい。
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コメント
1968~9年頃にタカラズカでも「トリスタンとイゾルデ」をやったみたいです。阪急電車の車内刷りを見たのをうっすら憶えています。その後、再び上演したかどうかわかりませんがどんな舞台なんですかね(笑)
投稿: einsatz | 2007年2月18日 (日) 19時50分
einsatzさん、こんばんは。タカラズカのトリスタンとは一体?
妙に興味がわきますな。それこそ、ズボン役のトリスタンだったのでしょうかね(笑)
投稿: yokochan | 2007年2月18日 (日) 22時55分
モノーラルの「ワーグナー」は買わないのがモットーの私です。
でもフルトヴェングラー&フィルハーモニアは例外的。大体からフルトヴェングラーを買うこと自体例外でありますが。
それでも、まだ持っていないのも多い。ベームとバイロイト。バーンスタインとバイエルン放響。ティーレマンとウィーン国立歌劇場。パッパーノとドミンゴ。ティーレマンはニュー・ナチの噂もあり僕はその一点で「買い」は無しですが。
そんなかんなで、カラヤンとベルリン・フィルのはヴィッカースの悪声は別にすれば、デルネシュの女性の情感がフューチャーされ、ベルリンの唖然とするほどの美音と陶酔に溢れた演奏は大好きなんであります。
投稿: IANIS | 2007年2月19日 (月) 00時12分
IANISさん、こんばんは。
モノラル・ワーグナーを購入されないのは、賢明といえるかもしれません。
何故って、それこそ膨大・遠大な音源がひしめいているからであります。
このオルフェオのバイロイト・シリーズはモノとはいえ、非常に音楽的で、長大な作品の試聴に充分耐えられるものであります。
デルネッシュのイゾルデは素晴らしいの一言ですね、次回取り上げようと画策中です。
投稿: yokochan | 2007年2月20日 (火) 00時30分
こんばんは。この「トリスタン」は未聴ですが、ヴィナイ&メードルってことでずうっと気になってはいます。写真がかっこいいですね。カラヤン、私の父の若いころに似ています。(私はぜんぜん似てません)
ところで、文京区湯島には「トリスタン」ってホテ・・・いや、こちらの品位が下がるので詳しくは書きません。
投稿: naoping | 2007年2月20日 (火) 00時48分
naopingさん、こんばんは。
カラヤン似の父とは、またカッコエエですね。カラヤンの娘さんも美人だし、さては、naopingさんもさぞかし・・・・・。
このヴィナイ・メードルはすっごくいいですよ。ヴィントガッセンとニルソンは、おっさんとおばはんの感ありますが、この二人はなんだかお洒落で素敵なカップルであります。
ホテ・・・「トリスタン」はすごいものがありますね(笑)
タンホイザーやジークフリートよりはいいですがね。
投稿: yokochan | 2007年2月21日 (水) 17時18分
yokochanさま お早うございます。
いつもコメントありがとうございます。
ヴィナイとメードルの「トリスタン」ですか、良さそうですよね、メードルさんは、最近まで活躍されていましたよね、息の長い歌手だったですよね。
カラヤンがもっとバイロイトに出ていたら、他にも色々と名演が聴けたように思います。やはり、ザルツブルクでは歌手も契約とかで限られていたように思います、歌手は、バイロイトの方が、良い歌手を集めていたように思います~。
ミ(`w´彡)
投稿: rudolf2006 | 2007年2月22日 (木) 08時22分
rudolfさん、こんばんは。
メードルは、幅広いレパートリーで長く活躍しましたね。
バイロイトは実験・登竜門的な抜擢をしますが、スター偏重に陥らず結果として歌手を育てる劇場でもあったように思います(現在も)
カラヤンのバイロイトは、短期間でほんとうに残念でした。
投稿: yokochan | 2007年2月22日 (木) 23時12分
連投失礼いたします。
迷いに迷いましたが、アバドのDVDトリスタン
第二幕を購入することにしました。
トリスタン全曲は、ベームとクライバーくらいしか
聴いてないというお粗末振りですので。
感想はまた後日書かせていただきます。
投稿: 越後のオックス | 2010年1月18日 (月) 09時37分
越後のオックスさん、こんばんは。
アバドのDVDは、なかなかのものですよ。
ただウルマーナのお顔がちょっと怖いですが(笑)
トリスタンは、片手・両足でも数えきれなくなるほどになってしまいました(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月19日 (火) 00時38分