スクリャービン 交響曲第4番「法悦の詩」 スヴェトラーノフ指揮
滋賀県と岐阜県の境にある、「伊吹山」。
当地ではまるで人の名前のように「イブキサン」と呼ぶ。
今年は雪がほとんどなかったが、新幹線で岐阜と米原の間、毎冬徐行運転をして遅れるのは、この山が吹き降ろす「伊吹降ろし」による雪によるもの。
彦根・米原と東近江が雪国なことも、この山がそびえているから。
麓で行なわれる歴史を見つめてきた山。
こうして見ると実に美しい。
冬は厳しいが、夏は高山植物が咲きほこる
癒しの山。いいもんだ。
ロシアの個性的な名匠「エウゲニ・スヴェトラーノフ」が亡くなって、もう7年も経つ。晩年N響に毎年来て、テレビでもお馴染みになったけれど、実演では一度も接することなく、帰らぬ人となってしまった。
73歳は早すぎる死だった。かなり昔から活躍していたので、もっと歳かと思っていた。
あのお腹の出た体、いかにも酒を飲みそうな顔、血圧も高そう・・・。
そんな見た目イメージは、爆演系の指揮者としてイメージ通りのド迫力を生み出す。
同時にその強すぎる個性は、どんな作品をも、自分に引き寄せて、スヴェトラ流にしてしまう。マーラーしかり、今日のCDのカップリング曲、ドビュッシーをも。
「フランス国立管弦楽団」を指揮しながら、やたらにドビュッシー臭くない、重ったるい演奏をしてしまった。恐るべき海、海フェチの私でも、この海には引いてしまう。ひぃ~・・。
でも、スクリャービンともなると話は別。
ねっとりと、じわじわと、むっつりと、この淫靡な曲が演奏されている。
スヴェトラおじさんの唸り声も随所に聞かれる。
フランス国立管、この機能的ながらフランスの香りを持ったオーケストラから原色のドギツイ音色をふんだんに引き出してしまった。でもロシアのオケと違って、金管はヴィブラートは少なめだし、管も上品なアンサンブルを聞かせてくれる。
ところが、驚きは最後に控えていた!
最終の盛上りの前、大爆音のあとオーケストラが完全休止するが、この休止たるや、10秒以上におよぶ。まるで音楽が終わってしまったかのような10秒間。
そしてそのあと、いやがうえにも、弦楽器が官能的な調べを紡ぎ出し、それが徐々にクレッシェンドして行き、全楽器にそれが拡張されて、途方もないクライマックスに突入する。
このクライマックスの最終音が、なんと20秒近くもフォルテのまま引き伸ばされるのである!! これには誰しも度肝を抜かされるであろう。
もう止めて、と途中で思うくらいの凄まじさ。
こんな演奏ばかり、拳を振り上げて指揮していたら、燃焼しすぎだよな。
アバドとボストン響の輝かしくも歌いまくる演奏が大好きだが、このスヴェトラ盤も時にはよろしい刺激となった。
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