プッチーニ オペラ・アリア集 ライナ・カバイヴァンスカ
今日も冷たい雨の降る首都圏。
コートはもうクリーニングに出しちゃったし、困ったもんだ。
寒いぜ。
今晩は、プッチーニのヒロインのアリアでも聴こう。
「ライナ・カバイヴァンスカ」をご存知であろうか。
ブルガリア出身の愛らしいソプラノ、1934年の生まれだからもう第一線は退いてしまっている。
日本に初登場したのは、1973年。NHKホールのこけら落としに企画された「イタリア・オペラ団」の公演で、彼女はお目見えした。
もう伝説となってしまった、NHKの「イタリアオペラ」。デルモナコやテヴァルディらがやってきて本場のもの凄い歌を聞かせてくれた。
私の記憶にあるものは、71年の「イタリア・オペラ」ぐらいから。
その頃から、物語としての「オペラ」に傾倒していった。田舎ではませた中学生だった。
それはそうと、73年の「カバイヴァンスカ」は、彼女の当たり役「トスカ」。
カヴァラドッシが「フラヴィアーノ・ラボー」、スカルピアは若手の「マストロメイ」、指揮は「ファブリティース」であった。
私には無名の人たちだったが、通のあいだでは、ついに噂の「カバイヴァンスカ」登場という評判だったと記憶している。
何が噂かというと、その歌はともかく、「美しい舞台姿」と「抜群の演技力」とによってである。実際、テレビで見た彼女は、スラリと背が高く、華奢で美人。まるで映画女優のような「トスカ」なのであった。トスカの赤い衣装が、実によく似合う。
これに比して、「ラボー」は小柄なオジサンだったが、やたらに声が良かったし、情熱的だった。名前は軽いが、「ラボー」は名テノールだったのに、録音が少なすぎ。
当時のカバイヴァンスカ画像が手元になく、ご紹介できないのが残念。
来る連休に、実家の古い書籍を探して、またご案内しましょう。
ともかく、その細やかな演技には、中学生の私も感銘を受けた。
スカルピアを刺したあとのオドオドぶりなど、見事なもの。それでいて、独特の気品とエレガントな物腰。オペラ歌手のひとつの局面を突き詰めたのも彼女だろうな。
肝心の歌は、もう少し声の魅力が欲しいところだが、舞台姿が勝るから善しだ。
今日のCDは、「ガヴァッツェーニ指揮トリノ・イタリア放送響」をバックに、彼女がもっも得意にした「プッチーニ」を歌ったもの。
録音も冴えないチェトラ盤で、何年頃の録音かデータがない。
70年代後半と推測するが、「カバイヴァンスカ」の声は少し荒れていて、ちょっと苦しい。
それでも、トスカの名アリアでは、思わずジーンとさせる歌いぶりで、とても感動した。
昔を思い起こして、DVDでも購入してみよう。
テレビで見た美しい「トスカ」。
その数年後、「カラス」が復活して、横浜で「ステファーノ」と「トスカ」の舞台に立つことになった。
が、やはり歌えず、「カラス」が代役に指名したのは「カバリエ」。
これまたテレビ視聴だったが、巨「カバリエ」と爺「ステファーノ」のトスカは、ドタバタとなかなかに面白い見ものだった。
最後にサンタンジェロ城から身を投げる巨体に、目をつぶる思いだったのを覚えてる。
でも、カバリエのピアニシモで消え入るような声には、日本中が息を止めたはずだ。
カバリエとカバイヴァンスカを足して2で割ったら、最高の・・・・・・・。
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コメント
最初に見たトスカは、レーザーディスクで、この人でした。他の役も役柄とのズレがなく、普通の感覚で見られたのがよかったと思います。
投稿: edc | 2007年4月22日 (日) 08時12分
euridiceさん、こんにちは。
ご指摘のディスクは、ドミンゴとミルンズが出てるものと推察しますが、まさにトスカにうってつけの歌手たちだと思います。
ビジュアル的にいい歌手はお得です。
投稿: yokochan | 2007年4月22日 (日) 10時15分
このCDブックレット-デザイン、カラスがEMI専属になる前にチェトラに録れた‥勿論モノーラルです‥アリア集も、このような感じでした。『トリスタンとイゾルデ』からの『愛の死』、『後宮からの逃走』からの『あらゆる苦しみが』を、イタリア語翻訳歌詞で、収録していました。この『NHKイタリアオペラ』、このライナさんをはじめ、フラヴィアーノーラボ、マリオ-ザナーシ等、商業録音に恵まれぬ名歌手が優れた舞台を披露してくれたそうで、全く当時の東京のオペラ-ファンの方々がお羨ましい限りですね。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年5月24日 (金) 05時43分
カバイヴァンスカさん、ブルガリアでの録音もそこそこあって、外盤では豊富です。
日本ではビジュアル系に言われがちですが、全曲盤でじっくり聴くと、その歌も細やかでとても素敵なものでした。
投稿: yokochan | 2019年5月28日 (火) 08時22分
このお方、英米系やかつての西ドイツの資本豊富なレーベルには、あまりご縁がなかったようですね。カラヤンがタッデイを起用した『ファルスタッフ』の新盤には、登場しておられましたが。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年5月29日 (水) 07時21分
わたくしのお宝は、「アドリアーナ・ルクヴルール」とザンドナイの「フランチェスカ・ダ・リミニ」のふたつのカバイヴァンスカの全曲盤です。
投稿: yokochan | 2019年5月30日 (木) 08時16分