メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」 アバド指揮
前回ご紹介の「しろつめ草」 の群生。
これだけ一斉に集まると、にぎやかな初夏がいちどきにやってきてしまったようだ。
花々は春から夏にかけて思い思いに咲き乱れるけれど、冬にも少しはその彩りを分けて欲しいものだな。
実は、アバドが録音した交響曲の数々を、年代を追って取り上げている。
今日は、メンデルスゾーン。
アバドはデビュー当時から、メンデルスゾーンを好んで取上げ、複数のレーベルにその録音を残した。
ロンドン響とのデビュー間もない67年の3・4番の録音、同じロンドン響との全集、そしてベルリンでの95年のジルヴェスター。
今回の4番は、ベルリンフィルとのジルヴェスター・ライブのもの。
思えば、我々日本国で、大晦日はベルリンのジルヴェスター、数時間後の元旦の晩は、ウィーンのニューイヤーがテレビで楽しめるようになって何年経つだろうか?
カラヤン時代からと記憶するが、カラヤンのジルヴェスターは、有名曲のオンパレードで、通常のコンサートの延長のように思われた。
アバド時代は、シーズン定期に大きなテーマを定め、その関連芸術をベルリン市をあげて取り組むようになった。こうしたコンセプト計画のうまさはアバドのマルチぶりを示していて、アバドの偉大な業績のひとつでもある。心無い人は、アバドの音楽を無能呼ばわりするけれど、ウィーン時代から続くアバドの音楽を藝術の総合と捕らえる思考をよく見極めて欲しいものだ。
ジルヴェスターも同様に、毎年テーマを定めて選曲がなされた。
こうしたコンセプト造りは、ラトルにも引き継がれている。
音楽の嗜好が似ているため、今のところ録音も同じような曲が続いている。
ラトルはデビュー当時、尊敬する指揮者として、「アバドとハイティンク」を挙げていた。
寡黙だが、音楽に語らせる・・・というような意味ことを言ってたはずだ。
寄り道しすぎたけれど、95年のジルヴェスターのテーマは「メンデルスゾーン」。
「真夏の夜の夢」と「イタリア」が演奏された。
この真夏の夜が実にロマンティックでよろしいが、今晩は、「イタリア交響曲」を。
一口で言うと、こうした名曲を隅々まで知り尽くしたコンビによる自在な演奏。
軽やかで、音色はどこまでも明るく、嫌みをまったく感じさせないスリムな響きに満ちている。初期LSO盤の、はち切れるような歌にみちた演奏もいいし、大人のコンビが素直に楽しむかのようなベルリン盤も実によろしい。
5月とは思えない暑い陽気も、アバドのメンデルスゾーンは爽やかな一陣の風でもって、リセットしてくれたようだ。
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