シューベルト 交響曲第1番 アバド指揮
2~3cmくらいの小さな黄色い花が咲き乱れる棘のないバラ。
垣根に垂れ下がる様子が美しい、
5月の庭。
シューベルトの交響曲第1番 ニ長調は、16歳の若書き交響曲だ。といっても、35歳の生涯だから若いも何もないけれど。
1番の前には習作的な序曲がいくつか書かれ、神学校を卒業するにあたって満を持して書いた本格交響曲。
重厚さを出そうとした部分などがあって、力みが見られかえって微笑ましく思う。
でも何と言ってもそこはシューベルト、やさしくたおやかなメロディが汲めども尽きぬようにあふれ出てくる。
重い序奏を持つが、いきいきと楽しい1楽章に続く、アンダンテの2楽章が美しい。
いかにもシューベルトを思わせる、伸びやかな抒情がいい。そして、時おり気分転換のように短調に転調し、ふっと悲しみがよぎるところなどたまらなくいい。
楽しいレントラー風のトリオを持つ3楽章。繰返しの弾むようなリズムにのった明るい終楽章。
アバドが87年にヨーロッパ室内管と、一挙に録音したシューベルト全集は全編、歌う喜びに満ちたアバドならではの演奏である。
4番以降は、自筆稿をもとにした初の録音だったが、グレイトなどは聴きなれないフレーズが出てきて驚いたもんだ。
アバドは、この1番を昔から得意にしていて、若き日のウィーンフィルとのFMライブなどは、すがすがしい美演だった。
このCDでは、若い室内オケの抜けるように明るく、透き通った音色を充分に活かした演奏で理想的なシューベルトを残してくれた。
この全集が発売された頃、アバドはこの手兵と来日して、シューベルトの交響曲全曲チクルスをやった。ペライアを伴なって、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲との組合わせで。
私は協奏曲の2番と「グレイト」のコンサートを聴いたが、あまりに精妙かつ新鮮な演奏に、ずっと耳を澄ましっぱなしだった。ペライアのピアノの美しさにも驚きだったし。
シューベルトの交響曲、5月の晴れた1日に相応しい音楽であり、演奏である。
あ~気持ちがいい~。
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コメント
こんにちは。このD.82はいい曲ですよね。木管がおもしろく書かれていて、その点、2番以降にない特徴です。機会があったら、スイトナーかリリンクのCD聴いてみてください。終楽章の一部が別ヴァージョンになっていて面白いです。演奏も両極端ですがたいへん良いものです。
投稿: guuchokipanten | 2007年5月20日 (日) 18時50分
guuhokipantenさん、こんばんは。
この曲はアバドとサヴァリッシュしか知りませんが、リリンクの録音もあるのですか。スィトナーとともに興味シンシンです。
そういえば、木管はこの曲で特徴ありますね。2番とともに日陰者ですが、いい曲であります。
投稿: yokochan | 2007年5月20日 (日) 21時13分
こんにちは
モッコウバラ大好きなお花で、確か眞子様のおしるしでしたよね。
シューベルトしばらく聞いていませんでした。
素敵な日記ありがとうございました。
シューベルト聞いてみたくなりました。
投稿: おぺきち | 2007年5月21日 (月) 21時04分
おぺきちさん、こんばんは。
モツコウバラは、遠めにも見ても、近くで見ても、チャーミングなバラですよね。私も気にいってます。
野ばらじゃありませんが、シューベルトに会う花々のような気がしました。
ピアノ曲なんてのもいいですよね。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2007年5月22日 (火) 00時20分
yokochan様今晩は。
私にとって何とも懐かしく、思い入れもあるアルバムなのでコメントしたくなりました。高校時代に乏しい小遣いを貯めて買った初めてのシューベルト交響曲全集でした。ロザムンデ序曲とグランデュオの管弦楽版が入っているのも嬉しかったです。アバドはヨーロッパ室内管を指揮すると必ず名演をしますよね。珍しいオペラ「フィエラブラス」の全曲もそうでした。「フィエラブラス」全曲は日本では何故か不評で、冗長とか平板などと評論家のセンセイ方からこき下ろされていました。序曲もアリアもコーラスも素晴らしいオペラなのに・・・交響曲第1番は歌心に満ちたアバドと機略縦横なアーノンクール&コンセルトヘボウをそのときの気分で聞き分けています。
余談ですが、文学的戦闘力(笑)が無事復活したようです。マルセル・プルーストの大長編「失われた時を求めて」を読んでいます。あまりに長い作品なので何時読了できるのか自分でも分かりませんが(笑)
投稿: 越後のオックス | 2009年5月18日 (月) 22時10分
越後のオックスさん、こんばんは。
この曲はいいですね。清々しいです。
アバドの全集は、私も出てすぐに購入。
当時のオーボエ君が校訂したりしていて、アバドは何もしてないとか、うるさい評論家先生には批判を受けていましたが、私には余計なお世話でしたね。
こんな気持ちいいシューベルトはありません。
このあとすぐの日本でシューベルト・チクルスは地味だったので、あまり話題になりませんでした・・・。
文学的戦闘力復活、おめでとうございます。
その方面には暗いわたくし、タイトルだけで卒倒しそうなオヤジですが、その気力がとてもうらやましく存じます。
投稿: yokochan | 2009年5月18日 (月) 23時48分