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2007年5月 5日 (土)

ワーグナー 「ラインの黄金」 ブーレーズ指揮

Kawawa_jinjhya 相模の国、第二の宮、「川勾神社(かわわ)」。たぶんこれは読めないだろな。

相模の国、一宮は「寒川神社」、そして「川勾」のある町は「二宮町」と呼ばれることになった。
ちなみに第三は「伊勢原」、第四は「平塚」、以下六つの宮があって、年1回、大磯町の国府に六つの宮が集まる祭が5月に行なわれる慣わしとなっている。

第11代の天皇にまで遡り、秀吉や家康にも縁のある宮。なんだかんだで重厚な歴史があって郷里ながら驚き。

Boulez_reingold 心が体がそろそろ聴けと言い出した。
英国系にも後ろ髪引かれつつ、ワーグナーの魔の手は容赦がなく私を捕らえる。

「リング」行きます!

1976年、バイロイト100年を祝うはずの「リング」新演出は、罵声と激しいブーが乱れ飛ぶ波乱のプレミアとなった。
即刻、特集が組まれた雑誌などの写真で、「新バイロイト」系の簡潔な舞台写真に親しんでいた私の目は、舞台に溢れる近世の事象やこまごました小道具に唖然となったものだ。
年末のFM放送で聴いた「ブー」や野次の凄まじさは、今でも覚えている。
録音したものを消してしまったのが悔やまれる。
現在上演中の、クソ「フシュルゲンジーフのパルシファル」なんて目じゃなく激しかった。

指揮者「ブーレーズ」の推薦もあって起用された、フランス人「パトリス・シェロー」の演出である。舞台・衣装、そして指揮も、ともにフランス人で固めた「フランス・リング」。
主要な歌手がブリテッシュであるところがまた面白い。

 ウォータン:ドナルド・マッキンタイア   フリッカ:ハンナ・シュヴァルツ
 アルベリヒ:ヘルマン・ベヒト        ローゲ  :ハインツ・ツェドニク
 ドンナー :マルティン・エーゲル     フロー :ジークフリート・イエルザレム
 ミーメ   :ヘルムート・パンプフ     フライア:カルメン・レッペル
 ファゾルト:マッティ・サルミネン        ファフナー:フリッツ・ヒューブナー
 エルダ  :オルトルン・ウェンケル    ウォークリンデ:ノルマ・シャープ
 ウェルグンデ:イルゼ・グラマツキ     フロースヒルデ:マルガ・シムル

  ピエール・ブーレーズ指揮 バイロイト祝祭管弦楽団(1980)
               演出:パトリス・シェロー
               演奏時間:2時間21分

シェローが目指したのは、伝統の打破。旧習と逆のことを行なうこと。
時代設定は、神話の時代から産業革命の時代に置換え、神々は没落貴族に、ライン川のほとりは、近代的なダムに。アルベリヒはそのダムの技師、ラインの乙女たちは娼婦になってしまった。一方、巨人達は、二人ばおりのような見た目にも滑稽なほんとの巨人。
Boulez_reingold2 小人は子供達が登場して、それぞれあえてリアル感を出していた。
アルベリヒが身代金で差し出す宝も、ビニール袋に詰められたおもちゃのような安物。
CDで聴いても、ビニールの安っぽい、カサカサした音がする。
 歌手の動きも激しく、演劇的才能すら要求された。
ウォータンがアルベリヒから、指輪を奪うところでは、指が切り落とされ血が吹き出る。
虹がかかり、晴れてワルハラ城へ入場するというのに、没落を前にした神々は、手をつなぎながら、酔ったかのように、いや麻薬にラリったかのように、よたよたと入場して幕となる。

それもこれも、抽象的・静的演出の裏返しであったのだ。
当時、ドイツを中心に読替え的演出は登場していた。
しかし、よりによって聖地バイロイトで、しかも記念の年にやらかしたフランス人たち!
ここから、昨今の演出優位の舞台が始まった。

Boulez_reingold1 ブーレーズの指揮は、最初は散々だった。FMで聴いたときは、騒然とした雰囲気に耳が奪われるばかりだったけれど、ベームがお手本だった私の耳には重心が上のほうにあって新鮮に聞こえたものだ。
5年目のライブ録音は、音楽を完璧に把握したブーレーズの説得力ある響きに驚く。
録音の優秀さもあってか、ともかく鮮明。
ラインゴールドのプリミティブな模糊とした雰囲気など、これっぽっちもない。
明るい響きのもとで、面白いようにライトモテーフが鳴り渡る。

歌手の優秀さは、次回以降書きたい。ここではいわずとしれた「ツェドニク」の天才的なローゲにただただ感心。

「ブーレーズのリング」、ゆっくりと残る3作を聴いて行きたい。

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コメント

またまた今日、偶然『ラインの黄金』サヴァリッシュ盤自家製DVDを見たところです。リングの他の曲と違って、気に障るところがなくて、思ったより楽しめました。ローゲとアルベリヒに、みんな翻弄されているんだ、とあらためて思いました。いつか、余裕があったら、ブーレーズ盤も見てみたいと思っています。

投稿: にけ | 2007年5月 5日 (土) 23時54分

にけさん、こんばんは。
サヴァリシュ=レーンホフの映像は、私もNHK放送のビデオのDVD起こしです。顔の上で展開するリング。伝統あるバイエルンの劇場がこのあたりから変貌していったように記憶してます。

ブーレーズ=シェローの映像もNHK放送のものを見てます。
現在の過激演出からすると大人しく感じるのが30年の歳月の重みでしょうか?

投稿: yokochan | 2007年5月 6日 (日) 01時11分

いやはや絶倫ですねぇ。グレの次はフランス・リング!
僕の「リング」は、サヴァリッシュとハイティンクのCD以外、全部映像です。
ブーレーズの映像、LDとDVD(5.1サラウンドの音響で楽しみたく、DVDも買いました。当然、日本語字幕は付いてません)で持ってます。観ることに関しては「リング」の中で最も面白いものですね。「神話」の世界から「劇画」の世界へ。それがシェロー=ブーレーズの狙いじゃなかったでしょうか。というか、シェローの演出した「ルル」や映画監督をした「マルゴ」(イザベル・アジャーニのぞっとする美しさ!)を観てるとシェローが大勢の人間を動かして劇的緊張を高めることに長けた人だと思います。きっとヴィーラントの新バイロイト様式に対する反撥があったんじゃあないかと密かに思ってます。
当然、演劇端の人ですから、登場人物たちの細かい演技も凡そオペラの範疇を超えてますが(もっとも、クプファー=バレンボイムの演技はもっと動きの激しいものでした)。
続く「ワルキューレ」以降のコメント、楽しみにしています。

投稿: IANIS | 2007年5月 6日 (日) 01時37分

こんにちは。この映像がなかったら、ワーグナーをそれほど聞くようにならなかったと思います。4作共、ごく普通の感覚で楽しめますが、特に前半2作は突出しているのではないでしょうか。以前の記事ですが、TBさせてください。よろしくお願いします。

投稿: edc | 2007年5月 6日 (日) 08時10分

IANISさん、こんにちは。
絶倫とお褒めいただき嬉しいような・・・(笑)
大曲を聴くのは、時間と体力・集中力が必要です。まあ私が暇人なのでしょうね。

音楽ではありませんが、「イザベル・アジャーニ」はほんとに美しいですね。「ザ・ドライバー」というカーアクション映画で初めて彼女を見たときからそのお美しいお姿と名前が脳裏に刻まれました。
ワーグナーと関係ない話でした。

投稿: yokochan | 2007年5月 6日 (日) 12時31分

euridiceさん、こんにちは。TBありがとうございました。
今回はCDでしたが、拝見して映像も見たくなりました。
(NHK放送の自家DVD化ですのでちょっと貧弱ですが)

ご指摘のとおり、後半の2部、特にジークフリートは動きの少ない作品もあってかいまひとつのような気がしますね。

投稿: yokochan | 2007年5月 6日 (日) 12時36分

こんにちは
いつも楽しく拝見させていただいております。
相模の二ノ宮緑が多くて気持ちよさそうですね。
神社に行くと自然と音楽が流れてきませんか?(私だけでしょうか)
ワーグナーは得意ではなく、「ラインの黄金」は尚更わからず・・・でしたが、こうやって解説いただけると聞いてみたくなりました。
ブーレース版があったら是非購入してみます

投稿: おぺきち | 2007年5月 8日 (火) 16時50分

おぺきちさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
二宮は、緑と海に恵まれたいいところですよ。他に何もありませんが(笑)
私は神社へ行くと、この「ラインの黄金」の長大な物語の始まりを意識させる模糊とした前奏曲を思い起こします。
リングはやたらに長いですから、映像をじっくりご覧になることをお薦めします。

投稿: yokochan | 2007年5月 9日 (水) 23時08分

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バイロイト音楽祭で1976年から1980年まで上演されたパトリス・シェロー演出、ピエール・ブーレーズ指揮の「ニーベルングの指環」「ラインの黄金」(1980年収録)の映像。第二話の「ワルキューレ」は何度か話題にしていますが、「ラインの黄金」も気に入っています。 こちらのライン河は巨大な発電用ダムです。 アルベリヒが大蛇とカエルに変身する場面、こちらも大蛇というよりは、キンキラキンの大型カメレオンみたいですが、なかなか愛嬌があります。アルベリヒが変身する様子もおとぎ話っぽい意外感があります。カエル... [続きを読む]

受信: 2007年5月 6日 (日) 08時12分

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