R・シュトラウス 歌劇「インテルメッツォ」 サヴァリッシュ指揮
R・シュトラウスのオペラ第8作目は、「インテルメッツォ」。
作曲順にゆっくりと取上げているけれど、以前に舞台や映像の3作(ダナエの愛、ダフネ、カプリッチョ)を取上げているから、都合11作品を当ブログで扱った。
シュトラウスオペラ、全作通し聴きプロジェクトは、これで2度目の試みだけれど、作品的にはそれぞれデコボコがあるし、台本の優劣にかなり左右されることが多い。
でもどの作品も、声の選択が巧みであるし、言語としての独語の美しさが後年のものほど味わえる(もちろん、その内容の多くは理解できませぬが・・・・)
そして、言わずもがなだが、オーケストラの扱いの巧みさ。
ため息が出てしまうような美しい音楽や、官能的な音楽がふんだんに用意されている。
今回の「インテルメッツォ」もそう。
1918~23年にかけて作曲。24年にドレスデンで作曲者の指揮で初演。
交響詩はほとんど書き尽くし、ほぼ歌曲とオペラに専念するようになったシュトラウス。
全2幕の節々に挿入された、場をつなぐ、いくつかある間奏曲が楽しいワルツあり、美しくも甘味な旋律ありで、シュトラウス好きを泣かせる。もうたまらん。
こうしたオーケストラ部分は、単独でも演奏され、CDもいくつか出ている。
が、このオペラの難解なところは、その言葉の洪水にある。
歌ではあるが、日常会話のような内容をものすごい言葉の数でもって歌手たちに強いている。
数年前に、若杉弘が日本初演をしたおり、日本人歌手たちだけで、原語上演したが、空前の努力を経たことであろう。いやいや、日本のオペラも進化したもんだ。すごいよ。
ちなみに、この上演はチケットを買っておきながら、都合で行けずじまいだった・・・。
オペラの台本は、シュトラウス自身。内容はお得意の家庭内秘話?のようなもので、聴衆は、たやもない夫婦喧嘩を見せ付けられることになる。完全に自分のことを作品にしているという。いやはや・・。
嫉妬深く、いつも当り散らしている妻、寛大で鷹揚な宮廷楽長の夫。
第1幕
ウィーンに長期仕事に出かける夫ローベルト・シュトルヒ。
その旅の準備で大あらわの妻クリスティーネ。
妻は仕度のかたわらもうイライラ。鷹揚な夫にキレテしまう。
喧嘩状態での旅立ち。
夫のいなくなったクリスティーネはスキーを楽しむが、そこでルンマー男爵なる金のない若者と仲良くなってしまう。
でも、この男、こずるくて、クリスティーネに金の無心の手紙を書き、彼女はそれを見て怒りまくる。
そこへ、運悪く電報が一通。内容は『オペラのチケットを2枚送ってね、いつものバーで落ち合いましょう』という女のもの!
これに悲しみ、激昂するクリスティーネ。夫に別れの手紙を書く。
そばでは、かわいい息子が『パパはそんな人じゃないよ』と慰めるのがかわいい。
(子供はお父さんの見方なのだ)
第2幕
ウィーンで仲間とトランプ中のローベルト。
ここに訳のわからん妻からの電報が到着。
仲間の指揮者シュトローが、電報にある女の名前を知っている様子だが、ともかく妻と話すべくゲームを切り上げ帰途につく。
離婚手続きに入ろうとしたクリスティーネだが、公証人もローベルトを知っているし、ルンマー男爵とのあらぬ噂も知っていので、手続きを進めない。やれやれ。
シュトローの弁明で、女が電話帳で、シュトローとシュトルヒを間違えたことを知り、誤解の原因を知ったローベルト。
シュトローから誤解話を聞いたクリスティーネだが、夫が家に到着してしても、ぐだぐだと文句ばかり。
『こんなことはいつかは起きること、もういやだ・・、私のことなんか知らないくせに・・・』と駄々をこねまくる。
これには、温厚なローベルトもぶちきれ、妻を思い切り叱る。
叱られて夫の愛みに目覚め、夫婦喧嘩を経て夫婦の絆が深まった・・・・」
いやはや、めでたいお話じゃぁないか!
こんなオペラを見せ付けられたらたまったもんじゃない。
自分の身の回りだけで、たくさんだよ。
オペラは現実から逃避して夢を見させてもらう要素もあるのに・・・・。
でも、音楽は口惜しいほどに素晴らしく、よく出来ている。
R・シュトラウス 「インテルメッツォ」
クリスティーネ:ルチア・ポップ
ローベルト:ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
ルンマー男爵:アドルフ・ダラポッツァ
シュトロー:マルティン・フィンケ
ノタール :クラウス・ヒルテ
宮廷歌手:クルト・モル
ウォルフガンク・サヴァリッシュ指揮バイエルン放送交響楽団
(1980.1 @ミュンヘン)
サヴァリッシュの整然とした指揮は、シュトラウスの複雑なオーケストレーションを見事なまでに解明し、そこからシュトラウス・サウンドの芳香がたちのぼるかのような素晴らしさ。
ミュンヘンの暖かみあるサウンドも最高。
それでもって、全盛期のルチア・ポップとF・ディースカウの文字通り、舌をまくほどの歌のうまさ。彼らの歌ともいえない会話のような歌を聴いていると、舞台で名優たちの演技に鳥肌が立つのと同じ思いがする。
そして、最終の夫婦仲直りのほのぼのとした二重唱に、ホロリとさせられることになる。
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コメント
こんにちは。
私は最近までインテルメッツォを「間奏曲」だと勘違いをしていて、じゃあこの間奏曲のオペラの名前はどういうのだ?とずーっと悩んでいました。(恥)
シュトラウスの音楽は最近ググッと好きになってきました。
投稿: ピースうさぎ | 2007年6月10日 (日) 18時22分
ピースうさぎさん、こんにちは。
実際、間奏曲だらけのこのオペラ、これから作者はこのタイトルをつけたのかもしれません。間奏曲の間奏曲、まさに??であります。
世界的にも日本人はシュトラウス好きみたいですよ。
みんなでじゃんじゃん聴きましょう。
投稿: yokochan | 2007年6月10日 (日) 22時08分
きましたねえ~。
「インテルメッツォ」、yokochnさんと奇しくも同じサヴァリッシュ盤ですよ。ポップがいいなぁ。LDでグラインドヴォーン。ロットがクリスティーネを歌ってましたが、やっぱりポップには・・・。ため息ものです。シュトラウスのオペラ、本当に贅沢な楽しみです。
投稿: IANIS | 2007年6月10日 (日) 22時47分
IANISさん、こんばんは。
きましたです、インテルメッツォ。
CDはこれしか出てないのではないですかね?
グライドボーンの映像はDVD化されてないみたいだし、この作品はやはり難物なんでしょうか?
いい音楽だと痛感しましたが。
投稿: yokochan | 2007年6月11日 (月) 00時03分
yokochanさま お早うございます
『インテルメッツォ』サバリッシュ盤、良いですよね
冒頭の部分など、沸き立つようなオケストラ、それに呼応する、ポップさんの歌声、陶然としますよね。
この素晴らしいオペラの録音がこれしかないというのは、寂しいことですよね。どうしてなのかなって思ってしまいます。
ミ(`w´彡)
投稿: rudolf2006 | 2007年6月11日 (月) 05時39分
rudolfさん、こんにちは。
今回じっくりと聴き直してみて、ほんとうにいい音楽だなぁ、と思いました。そうです、冒頭部分はオペラの開始として高ぶるような音楽ですね。
そしてポップのすてきな、自在な歌。
ポップの死が惜しまれるのと、これしかCDがないのが残念でなりませんね。ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2007年6月11日 (月) 22時57分
今晩は。yokochan様と私の出会いは実はこの「インテルメッツォ」から始まったのです。ご存知のようにシュトラウスのオペラは「サロメ」や「ばらの騎士」のようにの多くの人に愛され、親しまれている作品があるかと思えば、「グントラム」や「火の欠乏」や「インテルメッツォのように超マイナーな作品もあります。そしてマイナー作品がメジャー作品よりも内容的に劣っているということは決してありません。「グントラム」などはグローヴのオペラ辞典にも出てこないほど冷遇されています。シュトラウスのマイナーオペラに詳しい方はいないだろうかとネットで検索を続けていたら貴ブログにたどり着いたのです。かゆい所に手が届くような分かりやすい解説に感激したものです。それ以来貴ブログに入り浸りになっております。yokochan様も常連の皆様のいい人ばかりなのでゴロツキネットユーザーの私もトラブルや無益な争いを起こさずに楽しくやれています。今後ともよろしくお願いいたします。1988年に独逸でシュトラウス・フェスティバルが開催され、サバリッシュとバイエルン放送響の「平和の日」がCD化されていますが、件のシュトラウス祭りの全演目がCD化されて欲しいものです!!
投稿: 越後のオックス | 2009年11月18日 (水) 03時03分
越後のオックスさん、こんばんは。
このインテルメッツォ記事を見ていただいたのですか。
記事にも書きましたが、若杉さんの指揮する上演のチケットを無駄にしてしまったのは、悔恨の出来事です。
おそらくは、その上演機会は、当面というかほぼないのではと思いますが、沼尻さんに期待したいところです。
88年のミュンヘンのシュトラウス祭は、NHKFMでいくつか放送されました。
「平和の日々」「エジプトのヘレナ」「ダナエの愛」がそれです。
83年のワーグナー祭にも、初期3作が放送されまして、当時はNHK様さまでしたよ。
いずれも録音して、それらにより見知らぬ作品の開拓となったわけです。
いまは、CDRに焼き直して時おり楽しんでおります。
投稿: yokochan | 2009年11月18日 (水) 23時25分