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2007年6月19日 (火)

ヴェルディ 「ファルスタッフ」 新国立劇場

Falstaff 新国立歌劇場の今シーズン最終演目「ファルスタッフ」を観劇。6月19日19:00@オペラパレス(??)

同じ「ジョナサン・ミラー」が手掛ける、新演出「ばらの騎士」とともに、交互に上演されている「ファルスタッフ」は2004年プリミエのもの。

当初観る予定はなかったが、観劇した「I」さんのお薦めもあって、急遽決心した公演。
「ばらの騎士」と連チャンとなるが、以外や安値席も残っており、軽い気分で初台に参上した次第。

結果は上々。
音楽の素晴らしさはいうまでもないこと。舞台、演出、歌手、観客ともに満足・満足の出来で、帰宅の足取りは喜び勇む「ファルスタッフ」よろしく、飄々たるものであった。

何がいいか。

音楽の素晴らしさ・・・・・ヴェルディ晩年のハ長調の喜劇は、真面目な音楽だ。
 人間の悲劇を書き尽くしたヴェルディが到達した世界は、無駄のない簡潔な音楽。
 中期以前のヴェルディ特有のジンタ調や、心ときめかせる躍動感はないが、屈託のない
 明るさが酸いも辛いも知り尽くした達人の様相を呈している。

演出の素晴らしさ・・・・・医学博士の称号まで持つジョナサン・ミラーの演出は、自然体。
 むやみに考え込ませる演出ではなく、我々がイメージするシェイクスピアが描いたファル
 スタッフの世界を見せてくれているように思う。
 それでいて、登場人物の動きは実に考えられたもので、指先の動きひとつひとつに、そ
 の意志や意図が感じられるきめ細かいものに感じた。
 舞台はフェルメールの絵画を見ているような遠近感豊かな感じだった。

F1_1歌手達の素晴らしさ・・・・・プリミエ時のメンバーは一新されているが、アンサンブルが大切なこのオペラ、そのあたりは見事だった。女性4人の重唱は、ひとりひとりの声がよく聞き取れるほど。
脇役の日本人達も演技とともに唸らせてくれる。
売出し中の樋口のフェントンと中村恵理のナンネッタのコンビがフレッシュでベテランの中に混じっても輝いていた。
ドイツではワーグナーを歌うような3人。
タイトスのファルスタッフ、ブレンデルのフォード、アームストロングのクイックリー夫人。
この3人については何もいうことがないほどの素晴らしさ。ことにタイトスがいい。
最初は私としては、ウォータンのイメージを引きずったが 、途中からタイトスの自在な歌と演技に引き込まれてしまった。憎めないファルスタッフ!
 あのバイロイトのエルザだった、アームストロングは、メゾになったし、体格も立派に・・・・。
F2  唯一イタリア人、アリーチェのファルノッキアは、このオペラの準主役とも目される役を無難に演じたが、もっと歌う場面が欲しく、ヴェルディの他のロールでじっくり聴いてみたいと思われる。フレーニのように舞台を引っ張る華が欲しいところかな。

観客の素晴らしさ・・・・新国の観客も年とともに、練れてきて、無駄な拍手やガサガサ音も少なくなってきた。
平日だからかもしれないが、仕事帰りにふらっと来た風情の方がたも多く、熱心に観劇していていい雰囲気。
オペラを楽しむ環境がこうして出来つつあるんだなぁ。

オーケストラの素晴らしさ・・・・今日は東京フィルがピットに入った。連日、シュトラウスとヴェルディを弾きわける、ウィーンなみのスケジュールだが、日本でも一番オペラ経験
F3 が豊かなこのオーケストラ。アンサンブルに不安は残しながらも、伸びやかなヴェルディ・サウンドを出していた。
この功績は、なんといっても「ダン・エッテンガー」の指揮のゆえ。バレンボイムの秘蔵っ子とも言われるこの指揮者。
なかなかに統率力が豊かで、舞台もよく把握しながら振っているので、歌手もオケもやりやすいであろう。
それ以上に、音楽が生き生きとしていて、ヴェルディの音楽のよさがストレートに伝わってくる。
いい指揮者だ。

まだ、21日の昼公演がありますよ。時間の許す方は是非、観劇あれ!

  ファルスタッフ:アラン・タイトス        フォード :ウォルフガング・ブレンデル
  アリーリェ  :セレーナ・ファルノッキア   ナンネッタ:中村恵理
  クイックリー夫人:カラン・アームストロング メグ    :大林智子
  フェントン  :樋口達哉            カイウス:大野光彦
  バルドルフォ:大槻孝志            ピストーラ:妻屋秀和

          ダン・エッテンガー指揮   東京フィルハーモニー
                       演出:ジョナサン・ミラー
         

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コメント

うわ?煽られちゃいました。明日は振替休日なんですよ。ささやかながらボーナスも出たし…。

投稿: しま | 2007年6月20日 (水) 21時13分

しまさん、こんにちは。
へへ、煽っちまいましたか(笑)
私は今日も新国、仕事サボって白昼でしたが、驚くことに満席でしたよ。
昼から幕間に、ワインなんぞ飲むのは、ほんと、オペラの楽しみです。
是非、いらしてくださいませ。

投稿: yokochan | 2007年6月21日 (木) 00時11分

おはようございます。
『ばら』はチケット発売時からそんな予感が>満席
今朝電話してみましたら、『ファルスタッフ』はまだ結構チケットが余っていました。ついうっかり(?)良い席を買ってしまいました。

>昼から幕間に、ワインなんぞ飲むのは、ほんと、オペラの楽しみです。
女性にはお洒落の楽しみもありますヨ。舞台衣装に合わせてあれこれコーディネートするのも至福です。
ではでは行ってきます!!(。+・`ω・´)シャキィーン☆

投稿: しま | 2007年6月21日 (木) 10時26分

yokochanさん、すれ違っていたかもしれません・・
ほんとに楽しかったですね!
TBさせてください。

しまさんはきょうですか。どうでした?
楽しかったでしょう^^?
>結構チケットが余っていました。
そうですか。もったいないですね。
しまさんのような方が多いことを祈ります!

投稿: edc | 2007年6月21日 (木) 21時05分

しま さん、妙に煽ってしまつてすいません。
行かれたのですね!早速貴記事を拝見しました。
まさにフェルメールの世界でした。センスのいい、見映えする舞台でありました。
<女性のお洒落の楽しみ>、そう、皆様にはそうした楽しみもあるんですね、ある意味うらやましい。
日本の男性陣には、まだまだの世界かもしれませぬ。

投稿: yokochan | 2007年6月21日 (木) 22時31分

yokochanさん、edcさん、こんばんは。
TBしっぱなしですみません。

煽っていただいてとてもよかったです。楽しんできましたよ?。
まさに見応えのある舞台でした。フンパツしてS席で見ればよかったかナ。
これからもどんどん煽ってください(笑)

>お洒落の楽しみ
そうなんです?。ただ本日の誤算としては、午前中のヤボ用が長引きまして、炎天下のなか時間ギリギリに駆け込んだもので、汗で全身ドロドロに…(´Д`)

投稿: しま | 2007年6月21日 (木) 22時48分

euridiceさん、こんにちは。TBありがとうございました。
同じ日の公演だったのですね。
私にとって久々のヴェルディでしたし、ミラーの演出と名歌手達の饗宴は至福の時でした。

しまさんも、すっかり楽しまれたご様子で何よりであります。

投稿: yokochan | 2007年6月21日 (木) 22時56分

しまさん、楽しめた舞台のようで、私も煽りがいがあったというものです(笑)
東京ならびに近郊在住者は恵まれてますね。
初台は、大方が新宿経由でいらっしゃると思いますが、新宿の乗換えの混雑びりに辟易としますし、これからの季節、人いきれで超暑い。
ことに今日は暑かったでしょう。ご察し申し上げます。
新シーズンの「タンホイザー」はクールに決めて下さい、とひと煽り(笑)

投稿: yokochan | 2007年6月21日 (木) 23時16分

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受信: 2007年6月21日 (木) 20時31分

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※舞台写真をつかったプログラムは、歌手が変わってもそのままというのは、ちょっと困ると思いませんか。そこで、再演用に作り直しました^^;; ごらんの通り、今シーズンの最後は、ジョナサン・ミラーの新演出「ばらの騎士」と同じ演出家による再演の「ファルスタッフ」が交互に上演されています。「ファルスタッフ」は、映像、録音のおなじみ歌手、新国出演も初めてではない、ヴォルフガング・ブレンデルとカラン・アームストロングがお目当て。もうしばらくすばらしい「ばらの騎士」の余韻に浸っていたいところですが、シーズンチケッ... [続きを読む]

受信: 2007年6月21日 (木) 21時04分

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