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2007年7月 7日 (土)

ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」 ラニクルズ指揮

2008年にやって来る、ウィーンのオペラ2団体の、公演案内が送られてきた。
5月が「フォルクス・オーパー」で、「こうもり」「マルタ」「ボッカチオ」の演目、指揮は「ハーガー」の名前だけだが、何と「ルネ・コロ」「ツェドニク」「「コワルスキー」らの魅力的な名前が。
10月は「シュターツオーパー」で、「コシ・ファン・トゥッテ(ムーティ)」「フィデリオ(小沢)」「ロベルト・デヴェリュー(ハイダー)」の演目と指揮者、歌手は当然「グルベローヴァ」や中堅実力派。
う~~ん。こりゃ、フォルクスオーパーの方が魅力的だぞ。
「ティーレマン」の指揮で、「マイスタージンガー」か「トリスタン」じゃなかったの??
「ウェルザー・メスト」の音楽監督決定で、ティーレマンが降りちゃったの?
「フィデリオ」は、「ヴォイト」「D・スミス」「ドーメン」と、ワーグナー級の歌手が並んでるぞ、
おかしいな??
ムーティのコシに人気が集中しそうだな・・・・・。といろいろと勘ぐってしまう来年のウィーン・フェスト(と主催のNBSが名付けてます)
オーケストラ・コンサートの指揮者も二人決定なんだろな、Mはともかくとして、う~む。

Tristan_runnicles 七夕の今日は、「トリスタンとイゾルデ」を聴きましょう。
私のブログで「トリスタン」が登場するのは、これで、7度目。ほんと好きだねぇ~、と言われそうだけれど、好きなものはしょうがない。
「ワーグナーの作品で、いちばん好きなのは?」と聴かれたら・・・・・。
こりゃ難しい。
「トリスタン」か、いや「ワルキューレ」もいいし、それこそ「リング」だよ。まてよ、「パルシファル」だぜ。じゃあ「マイスタージンガー」は・・・、もう選べない。
ロマンテック3作は、ちょっと分が悪いが、ここは、今聴いている作品が一番
ということで。

今のところ一番新しい「トリスタン」が、これ。
結構高くて躊躇してたら、ある中古店で、未開封で何と3000円で発見!!
小躍りしそうになったが、値付け間違いだったらどうしようと、ドキドキしてしまったよ。

これは「ブリテッシュ・トリスタン」だ。
2002年から翌年にかけて、ロンドンのバービカンホールで、3幕を別々に演奏会形式で上演したもののライブ録音。
これが、なかなかいい「トリスタン」なのだ。

  トリスタン:ジョン・トレレーヴェン      イゾルデ:クリスティーン・ブルーワー
  マルケ王:ピーター・ローゼ         クルヴェナール:ボァーツ・ダニエル
  ブランゲーネ:ダグマール・ペチコーヴァ メロート:ジャレッド・ホルト

      ドナルド・ラニクルズ指揮   BBC交響楽団

まず、驚くのはオーケストラの充実ぶり。ロンドンのオケでも一番機能的でクールなサウンドのBBCだが、ここではその印象はそのままに、ワーグナーのうねりをも見事にとらえ、時に荒れ狂うような音の洪水を浴びるようで、驚きであった。
なんといっても、指揮の「ラニクルズ」の功績である。
左手に指揮棒を持つ、スコットランド系のこの指揮者は、バイロイトでシノーポリの後を受けて「タンホイザー」を指揮した。このタンホイザーがなかなか熱かった。
ミュンヘンやウィーンで、ワーグナーとシュトラウスで腕をあげ、サンフランシスコ・オペラのポストにある。胸に熱いものをもった男っぽい指揮だが、じっくりとした堂々たるテンポで、オーケストラの機能性も充分意識して、精緻で目のつんだ響きも聴かせる、なかなかの指揮者と見た。

トリスタンのトレレーヴェンは、もうお馴染みの英国産ヘルデンだが、その声はちょっとモッサリ君に聴こえる。でも中低域の余裕をもった力強い声域は魅力的で、3幕のモノローグはかなり聴き応えがあった。3幕が別に演奏されたスタミナ面のメリットは、この人が一番享受しているみたい。
そして、歌手のなかで、一番気に入ったのが、イゾルデのブルーワー
売り出し中の、アメリカ生まれのドラマテックソプラノだが、決して馬力ばかりの声でなく、細やかで女性的な歌は次世代のポラスキを思わせる。
マルケ王には、先だっての「新国のばらの騎士」のP・ローゼ。あの姿がいやでも浮かんでしまうが、なめらかで深々とした声のマルケ王はいい。
他の諸役も初見ながら、みないい。
ロセッティ風のジャケットも美しく、CD収納のカートンは色とりどりの花、CDレーベルにも同色の花や剣が刷り込まれていて、センスがとてもいい。

              Ⅰ      Ⅱ       Ⅲ      トータル
 ベーム         75分    72分     71分     218分   
 カラヤン(旧)    80分    75分     74分     229分
 クライバー      77分    79分     76分     232分
 バレンボイム    82分    77分     76分     235分
 カラヤン(新)    85分    80分     74分     239分
 ラニクルズ     87分    81分     80分    248分
 フルトヴェングラー 85分    92分     75分     252分
 グッドール      81分    93分     83分     257分
 バーンスタイン    92分    90分     93分     275分

こうして見ると、テンポだけなら、ベームとバーンスタインは両極にある。
このタイム差、実に57分!
マーラーやブルックナー、1曲いけます。ご参考まで・・・・・。
  

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コメント

お晩です。ラニクルズですか…。そこまでいっちゃうと、病恍惚にいるですね。
ベームってこんなに短かったんだ…。僕の「トリスタン」のCDはフルト、カラヤン、クライバー、バレンボイムなので比較はしてなかったんですが。ベームとバーンスタイン(買いなおしになるけれど)、買わなくっちゃならないですね。
DVDのほうが忙しくってかまけていたなぁ。DVDだとコルトのフリードリッヒの演出がすっきりしていて好きです。デイム・グィネスのイゾルデですし。ジョルダンの「水」が印象的な舞台は刺激的です。それに比べると、ビリーのは御伽噺風。でも、ポラスキーのイゾルデの「愛の死」はとんでます。いってます。グィネスとの比較ですが、僕はグィネスのほうの舞台姿の美しさに参っていますので。
本命はマイアーとバレンボイムの舞台。早くDVDになることを渇望しています。

投稿: IANIS | 2007年7月 7日 (土) 23時45分

yokochanさま こんにちは

ヴァーグナーから一曲っていわれたら、困りますよね
私は、『マイスタージンガー』を選ぶかもしれません、『ヴァルキューレ』も捨てがたいですし~。

イギリスの『トリスタン』では、グッドール盤を思い出します。

色々とご心配をおかけしました
お心遣い、本当にありがとうございました。

ミ(`w´彡)

投稿: rudolf2006 | 2007年7月 8日 (日) 12時14分

IANISさん、こんにちは。
お褒めいただき恐縮です。もう病気の一種であります。
タイムが演奏の優劣ではありませんが、ワーグナークラスの巨大さになると、テンポの取り方で印象が全然変わってきますし、忙しい生活の時間配分にも影響を与えそうです(笑)密度濃いベームを是非。
リングだともっと顕著です。こちらもベームが最短、おそらくレヴァインが最長?
DVDの方は、まだまだこれからです。VHSの焼き直しの作業をすれば、さらにトリスタンは充実するはずですが・・・。

投稿: yokochan | 2007年7月 8日 (日) 12時42分

rudolfさん、こんにちは。
ワーグナーから1曲は、ほんと、選べません。
自問しながら、困ってしまいます(笑)

ラニクルズのトリスタンは、先輩グッドールを思い起こすような、じっくり型の本格ワーグナーでした。
オケもうまく、歌手も旬の人たちで、大いに楽しめました。

お気をつけていってらっしゃいませ。

投稿: yokochan | 2007年7月 8日 (日) 12時46分

グッドールのCDを持っている者です。
今までバーンスタイン盤とのテンポ比較で各幕の演奏時間が気になっていました。なるほどですね。ありがとうございます。

投稿: sac | 2012年3月 5日 (月) 08時24分

sacさん、こんばんは。
コメントどうもありがとうございます。
ワーグナーは長大なものですから、テンポが少し違うだけで、出来上がりの演奏時間が1時間単位で異なる結果も出かねません。
どちらもワーグナーの真髄を味わえるところも、ワーグナーたる由縁でありましょうか!
またよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2012年3月 5日 (月) 20時54分

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