ディーリアス 告別の歌 サージェント指揮
何だか「告別」シリーズになってしまった。
往年の歌手達が次々に逝ってしまうので、おセンチになってしまったから。
今日の告別は(これに「式」を付けたら、葬儀屋のセリフだよ)、ディーリアスの「告別の歌(Songs of Farewell)」。
ディーリアス(1862~1934)の晩年1930年の作品で、パリ郊外のグレ・シュール=ロワンに隠棲中、忠実な弟子「フェンビー」の助力もあつて完成した合唱曲。
ディーリアスが愛し続けた「ホイットマン」の「草の葉」からとられた詩に作曲されている。
草の葉は、V=ウィリアムズの「海の交響曲」にも使われていて、過去と決裂し、海への洋々たる旅立ちを大らかにうたった場面がいい。
岩波文庫から出ていて、一時読みまくったもんだ・・・・。
上記画像は、レコードによるディーリアス・アンソロジーの1枚。「ターナー」の幽玄で漠とした海洋画がそこはかとなく美しい。
下の画像は、CD化された1枚で、ジャケットは「クリムト」の「ポピーの茂る野」。
こちらは、この曲のイメージというよりは、「田園詩曲」のものだろうか?
初演者「サー・マルコム・サージェント」指揮のロイヤル・フィルとロイヤル・コラール・ソサェテイによるもの。
節度ある音楽作りが、静かな海に夕日とともに消え行く船をあまりに淡々と美しく描いていて、泣ける。
1.黙って過去をたどっていくことの楽しさよ・・・。
2.何か大きなクチバシの上にいるかのようにたたずんで。
3.君たちのところへ渡っていこう。
4.喜べ、同舟の仲間よ!
5.さあ、岸辺に別れを・・・・・。
いずれも、静的でしみじみとした雰囲気をたたえ、オーケストラはディーリアスらしい、儚くもいじらしい背景づくり。フォルテやアレグロの場面も少なく、起伏も少ない音楽だが、合唱に励まされるようにして18分あまりの全曲を一気に聴いてしまう。
海が大好きだったディーリアスは、晩年失明し四肢が麻痺しても、海の雰囲気を味わう場所に出かけたらしい。
この曲の主役も実は寄せては帰す「海」ではなかろうか?
終曲の弦の海のうねりのような繰返しの音形が、徐々になだらかになり、その上に、合唱が「Depart・・・・」と歌いつつ静かに曲を閉じる。
ディーリアスが海に心を託した、「人生への告別の歌」であろう。
海の見える窓から、夕日を眺めながら楚々と聴いてみたい。
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コメント
こんにちは。サージェントのはレコードですね。コレ、中古屋さんで買いました。「やっぱりディーリアスはレコードで聴くにかぎるわい」と、とっくにCD期になってから一時期集めていました。ここらへんのは何百円とかで売っているのですよ。休日の昼下がりになんとなく流していると癒されますね。
投稿: naoping | 2007年7月13日 (金) 06時14分
こんにちは。
へぇ~、何百円なんですかぁ。LP時代現役盤で2800円、このシリーズで1800円。全部集めちゃったので、結構な出費でした。
このあたり隔世感も私にとって、ノスタルジーの世界です。
このシリーズは、三浦先生の名解説がまたディーリアス理解に一役買ってました。
レコードはインテリアとしてもエエですな。
投稿: yokochan | 2007年7月13日 (金) 23時59分