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2007年7月15日 (日)

ヴェルディ 「トロヴァトーレ」 セラフィン指揮

Verdi_trovatore 私のオペラ道は、中学生時代のワーグナー体験によって目覚めた。バイロイト放送をだらだら聴きして、「カラヤンのトリスタン」をFMで聴いて、そして「ベームのリング」のレコードを拝み倒して買ってもらって・・・・。
同時にモーツァルトのオペラも聴き始めた。
魔笛→フィガロ→コジ→後宮→ドンジョヴァンニ、なんて具合に。
R・シュトラウスは、サロメとばらのみ、その全貌を楽しみだすのは、ずっと後年、大人になってから・・・。

というわけで、ドイツ系から入ったオペラ道。
イタリア・オペラは、プッチーニから入り込んだ。忘れもしない、中3の多感な少年(?)が「カラヤンのボエーム」を聴いて涙したのであ~る。
プッチーニからヴェルディへの逆流の道のりは、たやすかった。
おりから、「アバドとムーティ」のライバル対決が、ヴェルディにおいて次々と実現したものだから、こちらもヴェルディに徐々にはまっていった。
70年代は、経費や資材の関係から、オペラ録音はロンドンのオケを起用することが一般的だった。ムーティも当初EMIゆえにロンドン録音であった。
DGがアバドが監督を務めるスカラ座を起用できたは、極めて偉大なこと。
イタリアオペラ、ことにヴェルディにおいては、イタリアのオーケストラの存在は絶大なものがある。輝かしいカンタービレ、言葉に付随した音色の深さ、ともに伴奏が充分に語りかけてくれる・・・・・。

このヴェルディ熱は、マーラーを聴き始めると急速に醒めてしまった気がする。
ズンチャチャ・ズンチャチャが鼻に付きはじめ、劇の内容もワーグナーに比べ、深遠さに欠けるなどと思いはじめて。

ということで、この流れはいまのオヤジ時代まで引きずっている。
プッチーニは、後期ロマン派・マーラーの延長として聴きつづけているが、ベルカント系やヴェルディ後期以外は、なかなかプレーヤーにかかることがなくなってしまった。

前置きが超長くなってしまったが、昨日どうしようもなく暗いロシアオペラを聴いたものだから、今日は久しぶりにヴェルディを登場させよう。おりから台風も峠を越えたみたいだし。
中期の名作「トロヴァトーレ」は、吟遊詩人の物語でもある。スペインを舞台に生き別れた実の兄弟が、それと知らずに一人の女性を奪い合い、ジプシーの魔性の女の罠にかかってしまう、という他愛ない物語??

  レオノーラ:アントニエッタ・ステッラ   アズチェーナ:フィオレンツァ・コソット
  マンリーコ:カルロ・ベルゴンツィ     ルーナ伯爵:エットレ・バスティアニーニ
  フェランド:イヴォ・ヴィンコ

    トゥリオ・セラフィン指揮  ミラノ・スカラ座管弦楽団/合唱団(63年録音)

もう10年ぶりくらいに聴く「トロヴァトーレ」である。
シンジラレナ~イ物語の陳腐さに比べ、音楽の素晴らしさにはやはり感嘆せざるを得ない。次々とくめども尽きぬように繰り出される、美しい旋律と歌の宝庫。
さらに、スカラ座オケの由緒正しき純正なる響き。
あぁもう、耳が洗われるくらいの鮮度のよさ。どんなところにも目が行き届いているセラフィの歌心をくんだ見事な指揮。
 そしてそして、ここに名を連ねた名歌手たち。
414pt69z8kl なかでもバスティアニーニの素晴らしさ!勘違いの憎まれ役ながら、常に気品を保ちながらも役になり切り没頭したかのような歌。言葉の明瞭さも驚きで、イタリア語会話の勉強ができそうなくらい。この名ヴェルディ・バリトンが44歳にして世を去ってしまったのは痛恨。
 ベルゴンツィの正統的な折り目正しいマンリーコ、強靭な声の絶世期のコソットのアズチェーナ、少し不安定ながら、そのお姿とともに美しいステッのレオノーラ。

いやはや、やはり聴いてしまうと、ヴェルディ、ほんとにいいや
だから困ってしまう。オペラばかりに、うつつを抜かしていると、時間と資金の浪費が・・・・・。おっと、FM放送では、ヤノフスキの指揮で「パルシファル」なんてやってるぞ。
もう堪忍して。

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コメント

こんばんは、はじめまして。

セラフィンの「トロヴァトーレ」。
もはやこれを凌駕する録音の登場する可能性など
限りなくゼロに近いんじゃないか、とまで思っています。
カラヤンの様にシンフォニックに鳴らすのも、ジュリーニの様に
格調高いのも面白いのですが、何か重大なものが欠落している様に
思われてしようがないのです。
セラフィン盤以外だといま一つ、「血」が沸き立ってこないんですね。
ヴェルディはアドレナリンが出てなんぼ、と思っています。

投稿: 花岡ジッタ | 2007年7月15日 (日) 22時03分

花岡ジッタさま、こんにちは。そしてようこそおいでくださいました。
<もはやこれを凌駕する録音の登場する可能性など限りなくゼロに近いんじゃないか>
まさにおっしゃる通りですね。多くを聴いてませんが、トロヴァトーレ随一の名演でしょうね。
バスティアニーニとステッラの二重唱には、まさにアドレナリン出まくりました!
コメントありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2007年7月15日 (日) 22時55分

この盤、アナログLP時代に再発された際に、『レコ芸』1976年4月号月評で、故高崎保男さんが演奏者への限りない尊崇の念に満ちた推薦文を、書いておられましたね。
実は愚生のCD棚に落ち着いたのは、『カルロ-ベルゴンツィ/ザ-グレート-ヴェルディ-テナー』と言う17枚組の、478-7373なる番号のセットでした。指揮、歌手、オケ全て理想的な一組で、後年に大手レーベルがしばしば陥る、配役が一見豪華でも何かしら纏まりを欠き、画竜点睛を欠いた首を傾げるような不手際を感じさせる出来に陥っていないのが、素晴らしいですね。制作者側のプロデューサーの理念もしっかりしていた店のと言う訳でしょうか。

投稿: 覆面吾郎 | 2019年10月 6日 (日) 19時06分

最終行の『店の』を削除させて戴きます。

投稿: 覆面吾郎 | 2019年10月 6日 (日) 19時08分

このときの、DGのスカラ座シリーズ、少し年月を置いてのアバドの同シリーズ、ともにイタリアオペラのレコーディングのなかでも燦然と輝く名録音だと思います。
ことに、セラフィンのトロヴァトーレと、サンティーニのドン・カルロ、アバドのマクベスにシモン、この4つは音楽史上の最高録音かと!

投稿: yokochan | 2019年10月 9日 (水) 08時38分

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