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2007年7月10日 (火)

シルズとクレスパン R・シュトラウスで偲ぶ

Sills 生粋アメリカ産の歌姫「ビヴァリー・シルズ」が7月2日に、ニューヨークにて肺がんのため、78歳で亡くなった。
この3月に、彼女のアンソロジーCDを楽しんだばかりなので、驚いた。
私は彼女の熱心な聴き手ではなかったが、かなりのオペラ全曲録音が残されており、放送を通じていくつか楽しんだ記憶がある。
「ルチア」「清教徒」「セヴィリア」「トラヴィアータ」などなど。クセのない素直な声は、とてもチャーミングでかつフレンドリー。
ベルカントものばかりでなく、フランスもの、独オペレッタ、本格ドイツもの・・・・、広範な適応力があったことが、この2枚組アンソロジーCDでわかる。
この中から、シルズの追悼として、前回も感嘆したR・シュトラウスの「ダフネ」の最後のダフネ変容の場面をあらためて聴いてみよう。
シルズの蒸留水のように滑らかで通りの良い歌声は、円熟のシュトラウスの地中海サウンドに以外やピタリとくる。後輩ルネ・フレミングの濃厚な隈取りの強さとは、かなり違う。
女声がことさら好きだったシュトラウスが、きっと気にいってしまうはずのシルズのかわいいダフネ。チェッカート指揮のロンドン・フィルも軽やかなシュトラウスを響かせている。
 さらにコルンゴルドの「死の街」マリエッタの歌も聴き、じっくりと歌いあげる、その素晴らしさに涙した。

Rosen_crespin さらに、7月5日フランスの名花「レジーヌ・クレスパ」がパリで亡くなった。こちらは享年80歳。
同世代の二人のディーヴァが次々に世を去ってしまった。
クレスパンも、マルチなレパートリーを誇った人。
お国ものはもちろん、ヴェルディもよく歌っていたが、私にとっては、ワーグナーとシュトラウスの素晴らしい歌い手だった。
ワーグナー好きなら、ショルティの「ワルキューレ」のジークリンデ、カラヤンの「ワルキューレ」のブリュンヒルデの2役をお持ちのことだろう。あとは、クナの「パルシファル」(60)のクンドリーも私は楽しんでいた。
Crespin そして彼女は素適な「マルシャリン」だった。ショルティとの全曲盤があるが、未聴。
かつて取上げたばらの騎士」抜粋を改めて聴いてみる。
60年代初頭の、クレスパンが30台の脂の乗っていた頃の録音。
ちょうど舞台のマルシャリンと同年代の等身大のクレスパンは、大人の色気も感じさせながら、艶と気品を合わせもった無類のマルシャリンだと思う。
シュヴァルツコップが言葉の一つ一つの思いのたけを注ぎこみマルシャリンの憂鬱を歌いこめたのに比べ、クレスパンは深みはないかわりに、細やかな音符の歌いこみが絶妙で思わずため息が出てしまう個所が多々ある。
スイスの名指揮者「シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ」がウィーン・フィルとオペラテックな背景を作りあげている。この指揮者もすでに亡くなった・・・・。

時の流れは止められないのは当たり前だけれど、こうして次々と名歌手たちが世を去るのを目の当たりにしていると、とても寂しい。自分の楽しんできた名演奏がどんどん過去に追いやられるようで悲しい。
シュトラウスの二つの告別の場面、「ダフネ」終結と「ばらの騎士」1幕終結、これらをしんみりと聴いていると尚更の感がある・・・・・。
ふたりのディーヴァのご冥福をお祈りします。

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コメント

こんにちは。
クレスパン、亡くなられていたのですか・・・知らなかったです、新聞とってないし。ショルティ盤のジークリンデは好きだったです。ワグネリアン・ソプラノというよりは、フランス的な気品と妖艶な色香を漂わす感じの歌手でしたね。私生活では結構あからさまな発言が多くて記者を喜ばせてたヒトだったという記憶があります。

投稿: naoping | 2007年7月13日 (金) 06時05分

こんにちは。
そう、私は車運転中のFM放送で知りました。
「気品と妖艶な色香」そうですね、この声で歌われるワーグナーやシュトラウスは素適であります。現在こんな声でワーグナー歌ってくれる人はいませんねぇ。
あからさま発言が多かったですか?頭がすごいですな、時代を感じさせます。

投稿: yokochan | 2007年7月13日 (金) 23時53分

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