ジェス・トーマス ワーグナー集
聖地バイロイトでは、音楽祭真っ盛り。
悪評のカテリーナ・マイスタージンガーも今日、3度目の舞台。初日の音楽を聴いた限りでは??
まあ、毎年初物は苦労して、毎年少しづつ軌道修正しつつ、4~5年くらいで完成の域に達する、というのがこれまでだった。
でもこんな図式が通用しなくなったのは、くそシュルゲンジーフのパルシファルからだったのかもしれない。ネットで聴いたパルシファルは、A・フィッシャーの指揮が演出を無視したかのように、素晴らしかった。ホールのグルネマンツとヘルリツィウスのクンドリーが良い。あとは私には受け入れ難い・・・。こんな音の印象。演出への激しいブーイングも相変わらず。
ティーレマン・リングも苦戦の模様。ジークフリートとブリュンヒルデは素晴らしいが、以外や期待のドーメンのヴォータンがちょっと・・・・。こんなはずじゃないのに・・・・。
タンホイザーもイマイチ・・・、ルイージが振っていたら・・・・。
年末にちゃんとした音で聴いたらまた印象が変わるのかもしらん。
お口直しに、今ではおいそれと聴けなくなってしまった、正統ワーグナーテノールの歌声を。
アメリカ産のヘルデンテノール、ジェス・トーマス(1927~1993)がDGに録音したワーグナーの場面集を聴く。
トーマスはアメリカで勉強し、ドイツに修行に出かけ、見事に成功した良き時代のテノールの一人で、
残された録音もそこそこあるので、日本での実演はバイロイト67の来日のみと思われるが、馴染み深い存在だ。
そしてそれ以上に、気品と力強さに満ちた声は、トーマスより一世代前のでっぷりとした声とは一線を画したスマートで清らかな歌声となっていて、理想的なローエングリンやパルシファルとしていまだに新鮮に聴こえる。
この1枚は、1962年頃の録音で、指揮はワルター・ボルンと知らない人だけれど、なんたってベルリンフィルがバックをつとめている。
完全にカラヤン・オケになる前の頃だけあって、低弦の刻みひとつとっても克明で重厚。
一方で洗練された響きも充分で、トーマスの清潔で力強い歌にピタリと寄り添っているようだ。
「マイスタージンガー」「ローエングリン」「ワルキューレ」「(ローゲ!!)」「リエンツィ」「パルシファル」、これらから短いながらも素晴らしいトーマスの歌が楽しめる。
本当に耳が洗われるような思いで聴いた。
バイロイトに登場する昨今のテノールとは雲泥の差だ・・・・・。
私も、耳が少し保守的に過ぎるのかしら、昔ばなしばかりになってしまう。
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コメント
お陰さまで、この録音、久しぶりに聴きました。トーマスはホフマンとの関係を知る前からけっこう好きなワーグナー・テノールでした。古い記事ですが、TBしますので、よろしくお願いします。
投稿: edc | 2007年8月10日 (金) 20時30分
euridiceさん、こんにちは。
TBありがとうございました。拝読して、トーマスとホフマンの師弟のごとくお互い認めあった関係を知りました。
なんだかとてもいいですね。
トーマスは盛期を過ぎてからは、いろいろ酷評されましたが、残念でなりませんでした。70年代、カラヤンのもとで第9やジークフリートを歌っていた頃からのファンだったんです。
偉大なワーグナー歌手の一人ですね。
投稿: yokochan | 2007年8月10日 (金) 23時51分