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2007年8月 5日 (日)

ドビュッシー 歌劇「ペレアスとメリザンド」 アバド指揮

Paris_1_3 ヨーロッパの各国は、島国の我々からすると、驚くほど近く、そして遠い。
陸続きなのに、言語・文化がまるで違う。
河川や山脈による分断は、海以上に大きい。

フランスとドイツも国境を接していながら異質といえるほどの違いがある。もちろん、ストラスブールのように両者が融合したような都市もあって、緩衝材みたいだけれど。

こんなことを今更に思うのは、音楽紀行シリーズがフランスに至ったから。
ことに、オペラや歌曲になるともう、フランス語の語感は、ドイツのそれと極端に異なる。同じ語源ながらイタリア・スペインとも違う。
すべての文字を発音しなくては気が済まぬドイツ語、書いてあるのに?なんでそう発声するの?のフランス語。
私にはさっぱり、わかりません。あの鼻母音の特徴を覚えれば、それっぽく聞こえるけれど。
画像は、大昔パリに行ったときのもの。凱旋門あたりの公園にて。

Abbado_pelleas そんなフランス語の魔力が満載なオペラが、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」。
10年の歳月(1892~1902年)をかけて作曲した、ドビュッシーの最高傑作は、ワーグナー後の新たな音楽の地平線を築いたとされる。

もともと、熱心なワグネリアンだったドビュッシー、トリスタン的な、半音階和声やライトモティーフなどの影響は伺えるものの、ワーグナーから一線を画し、いわばワーグナーからの決裂と旅立ちをこのオペラで実践した。

音楽はフォルテの部分は決して多くなく、嫉妬に狂ったゴローの場面くらいで、全体は緩やかな波のように、押しては引いていく極めて微妙なもの。
歌唱も絶叫する場面や聴かせどころのようなアリアもない。レシタティーボでもない、歌唱ともいえない歌(朗唱)が全編にわたって展開する。ここにフランス語の絶妙でニュアンス豊かな語感がどれだけ寄与していることだろうか!
ワーグナーには、リアルなドイツ語こそが相応しいが、ドビュッシーの切り開いた世界はフランス語あってのものと痛感する。

歌ばかりに気を取られてばかりいると、背景のオーケストラの千変万化する精妙かつ繊細な響きを聴き逃してしまう。
森の深さ、木々のざわめき、泉の清冽さ、清らかな愛の囁き、実際の闇と人の心に巣食う闇の恐怖、生と死・・・。これらをドビュッシーは見事な筆致で描き尽くす。
そのキャンパスは、淡いが耳には実に鮮やかなもんだ。
なんて素晴らしい音楽!

  メリザンド:マリア・ユーイング    ペレアス:フランソワーズ・ル・ルー
  ゴロー  :ホセ・ファン・ダム     アルケル:ジャン・フィリップ・クルーティス
  ジュヌヴィエーヌ:クリスタ・ルートヴィヒ イニョルド:パトリシア・パーチェ

    クラウディオ・アバド指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

アバドは、特定のオペラ作品に異様に入れ込み、執念のように没頭し名演を極めることが多い。シモン、ボリス、ヴォツェック、トリスタン、そしてペレアスもそのひとつ。
ウィーンフィルのあたたかくもニュアンス豊かな響きを手にいれて、アバドはしなやかな指揮ぶりで、音の強弱をいくつもの段階に渡って紡ぎ出している。
恣意的な要素はひとつもなく、あくまで自然に、感じたままが音になっていると思わせる。
欲をいえば、ベルリンフィルとも録音して欲しかった。

Abbado_pelleas2 歌手はいずれも良い。若いル・ルーは繊細でその若い熱さがペレアスそのもの。
ファン・ダムは押し付けがましいゴローになり切っていて見事なはまり役。
ことさら、よかったのは、クルーティスの慈悲深いアルケル。
肝心のユーイングのメリザンドは、悪くはないが、少し濃いかもしれない。
F・シュターデだったら・・・・。

最後の場面は、アバドの押さえ込んだ弱音の美しさが、レクイエムのように悲しくもあり、優しくペレアスの死を包み込むようでもあって、心に響く。

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コメント

そう、このCD、メリザンドがシュターデだったらどんなによかつたことか・・・。でも、カラヤンで使われてしまったのですね。
今メリザンドだったら誰がいいんだろう。

投稿: IANIS | 2007年8月 6日 (月) 22時45分

そうなんです。カラヤンは聴いたことないんですが、さぞかし人工美に満ちた演奏なんかなと・・・・。
そこに使われてしまったシュターデ、口惜しいですな。
スカラ座の非正規盤にはでるようですが。

今メリザンドは? そうですね、ナタリーが神妙にうたったらいいかも。
イメージとして芸達者のプティボンも??
間違っても、フレミングはいかんです。

投稿: yokochan | 2007年8月 6日 (月) 23時40分

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