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2007年10月25日 (木)

マリナー指揮 NHK交響楽団演奏会

Nhk10_2  サー・ネヴィル・マリナー客演のNHK交響楽団定期演奏会を聴く。
1924年生まれのマリナー、いつも若いイメージがあるけど、もう83歳。
経歴や盤歴から、大巨匠とも言われていいのに、そういう言われ方をしない、いやそういう肩書が似合わないマリナーなのだ。
録音魔と言われるくらい豊富な盤歴ながら、ここ数年は新録音がなかった。
マリナー好きの珍しいワタクシ。当ブログでもカテゴリーを設けてるほど好きで、数多く聴いてきたが、実演は10年ほど前の都響で、ヘンデル・ブリテン・エルガーを聴いたのが唯一。
その時の、シンフォニア・ダ・レクイエムとエニグマの素晴らしさが忘れられない。
マリナーはここ10数年で、確実に変わってきている。90年代半ば以降のヘンスラー・レーベルへの一連の録音でもそれを感じとることができる。
そんな期待を抱きながら、サントリーホールに向かった。

  べートーヴェン  ヴァイオリン協奏曲
              Vn:アラベラ・美歩・シュタインバッハー
  ブラームス    交響曲第4番

    サー・ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団

日本人を母に持つドイツのヴァイオリニスト、麗しき美女アラベラ・美歩嬢の後から、マリナーは元気に登場。全然変わってない。83歳とは思えないしっかりした足取りで颯爽と指揮台に上がる。譜面を眼鏡なしで、めくりながらの指揮ぶりは、腰掛けて指揮をしていた、サヴァリッシュ(1923)やプレヴィン(1929)と同年代または先輩とは思えない。
もちろん、彼らは持病があってやむを得ないんだけれど、マリナーは元気一杯で嬉しい限り。

Arabella2 ティンパニの連打で協奏曲が始まり、その長い序奏が実にまろやかで雰囲気がいい。
そして、アラベラ・美歩嬢のソロが上昇する音形で入ってくる。
その音色たるや、実に美音である。おっ、そう来たか!とこちらも頬が緩む。
ストラディヴァリウスを奏でる彼女、全編に渡って音色が豊穣で、屈託がなく、美しい。
ともかく美しい。その美しさが艶やかさにならずに、青竹のようにスクッとした清々しい美しさに聴こえるのだ。技巧も抜群で、両端楽章のカデンツァなどは唖然とするほどの見事さ。
技巧だけで、空回りしないのは、彼女が音楽を感じたままに嫌味なく表現できるから。
深みやベートーヴェンの難解さなどとは、無縁の美しい演奏に、これもあり、との思いだった。昨年のノリントンN響と庄司沙耶香の同曲は、ノリントン・イズムを奏者にまでも徹底させた指揮者ありきの、コンチェルトだった。
 今日のベートーヴェンは、若い美女が、思う存分に音楽を屈託なく楽しむ姿を、合わせ名人マリナーが優しく見守って、絶妙の伴奏を付けた演奏に思う。
2楽章の歌心に満ちたヴァイオリンがとりわけ素晴らしかった。
アンコールに、イザイの無伴奏ソナタ2番の終楽章が演奏された。グレゴリオ聖歌のお馴染みのディエスイレが顔を出す超越技巧の曲。難なくスラスラと弾く彼女の後姿を見ていたら、ムターを思い起してしまった。ドレスもそっくりで、オジサンもうメロメロよ・・・・。

休憩後のブラームス、これが実に素晴らしい名演だった
誰しも、え?これ、マリナー?と思ったことだろう。

Photo_2  早めのテンポで、何気なく始まる1楽章。
フレーズとフレーズのつなぎが、素っ気ないマリナー節。指揮姿を見ていてよくわかる。
でも、音の一音一音に気合が漲っている。ホルンの強奏、ティンパニの強打、かなりのインパクトを感じる。
古雅なブラームスの4番が、こんなに明晰で一気加勢の雰囲気で鳴り響くとは!
第2楽章の明滅するような古風なメロディーのやり取りも、細部に拘らずに流れが実に良い。N響の管の名手達の腕前も完璧だった。そして、さすがに弦へのこだわりはマリナー。
ピチカートひとつとっても、洗練されているが、最後にユニゾンで第2主題が熱く奏されるところは、目頭が熱くなるほど素晴らしかった。
続く、第3楽章も勢いが溢れ、ティンパニとトライアングルが大活躍。
テンポも動かし、終楽章に向かってどんどん盛り上がる。
アタッカで始めたその終楽章、インテンポのマリナーらしからぬテンポの揺り動かしかた。
ここでも金管とティンパニの強奏で、メリハリも充分で、最終変奏の全合奏による場面では、じっくりとテンポを落とし、着実なエンディングを築き、熱き中にも品格あるブラームスのエンディングをむかえた。

会場にブラボーが飛び交ったのは言うまでもない。

これを期に、たびたび日本でも指揮台に立って欲しいサー・ネヴィル。
巨匠然として欲しくない、いつまでも爽やかマリナーでいて欲しい。
でも今日の演奏を聴いてしまうと、マリナーも高い次元にステップアップしていることが認識できた。

Marriner_brahms4 ヘンスラーから、アカデミーを指揮したブラームス全集が出ていて、今も確認のため聴いているが、こちらは97年の録音。ブラインド試聴したら、絶対当てられない!
それだけ立派なブラームス。今回のライブは、このCDよりさらに素晴らしかった。
来週も、演目はイマイチだけど、マリナー&N響行きます。


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コメント

こんにちは。
ナンナンと申します。
私も筋金入りのマリナーファンと自負しています。
このコンサート私も聴きに行きました。
本当よかったですよね。
ここ最近新録音がない、ということですが、そんなことはありませんよ。
ちゃっかり、しっかりと新譜はだしていますよ。
最近はスペインのカダケス管弦楽団との録音や、
息子のアンドリューとのモーツァルトのクラリネット協奏曲などの録音があります。
マイナーすぎて、ほとんど雑誌ではとりあげられることはありませんが・・・。

これからも、時折よらせていただこうと思いますのでよろしくお願いします。

投稿: ナンナン | 2007年10月26日 (金) 03時15分

ナンナンさま、こんにちは、ようこそ。
マリナーの本格ファンの方がいらっしゃって、とてもうれしいです。久方ぶりの来日と、来るテレビ放映で、見直しの機運でも高まるといいのですが。

それにしても、よくご存知ですね!
最近の録音はないものとばかり思ってました。
スペインのオケとの共演など、極めて興味深いです。
彼のディスクは膨大ですから、私など、まだまだ未知のものばかりです。いろいろお教え下さい。
しばらくまた、マリナー特集でもしようと思ってます。
またどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2007年10月26日 (金) 23時39分

僕これ行きましたよ。うーん僕はもっとアラベラという人は美女かと期待してたんだけど、写真はごまかすっていうじゃない。前の席にいてよく見えましたが、顔の輪郭がどうも悪いし、頬がくぼんで、ちっとも綺麗じゃありませんでしたね。ドレスは肌を露出しすぎて下品な雰囲気でしたし、どこかのホステスみたいなかんじで、鼻はお団子のように大きいし。それと華が無い!と感じました。で演奏は?なにか2つも3つも足りない。ドイツで売れてないってききましたけど、なんか解るようなきがしました。音楽的に良くないんです。音もストラドとは思えない音で、そこそこの演奏会を聞いたかんじでした。あのときの指揮も悪くは無いが、僕には感動を与えませんでした。日本人は日本人に厳しく外来に甘いのでは?あまり良くないときがあってもブラボー。情けないです。

投稿: ドレミファ | 2008年8月20日 (水) 01時44分

ドレミファさま、コメントありがとうございます。
いやぁ、そうお感じになったのですね。
私は彼女の美音ばかりに酔いしれてました。
遠目の美女というレッテルがあって耳もどうにかしてたのでしょうか?
私は音楽の感じ方は、その人の音楽歴や受容史によって千差万別だと思っておりますので、ドレミファさんのご意見もごもっともと存じます。
 当日はサイド席からの視聴でしたので、彼女のご尊顔はよく窺えませんでした。写真ではお鼻を隠しちゃってますね。

投稿: yokochan | 2008年8月20日 (水) 22時35分

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