マリナー指揮 NHK交響楽団演奏会
サー・ネヴィル・マリナー指揮NHK交響楽団演奏会へ。「ロマンチック・コンサート」と名付けられ、サントリーホール・リニューアル記念とある。
演目からして、はて、何故ロマンチックなんだろ?と思うけれど、まあいいや。サントリーホールはリニューアル以来、数回目だが、目に見えて変わったところは少ないものの、ホール内の内壁を張り替えたらしく、響きがよくなった気がする。バリアフリー化の徹底や、トイレ改修、バーカウンターの増加などをあらためて確認した次第。
あと、ホールスタッフの服が女性は変わってないみたいだけど、男性はタキシードにえんじのカマーバンドで、まるでソムリエのようになった。
前置きが長くなったけど、本日のプログラムは。
ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲集 「四季」
Vn:堀 正文
「冬」~第2楽章(アンコール)
モーツァルト 交響曲第41番「ジュピター」
ディヴェルティメントK136~第3楽章(アンコール)
サー・ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団
という訳で、モーツァルトはともかく、いまさら四季でも・・・、しかし、好きなマリナーだから、という軽いノリで気軽な気分で赤坂・溜池へ。
ホールのムードが、いつも自分が行くような雰囲気と違う。親子連れ、ご夫婦、恋人同士、女性同士・・・。私のようなクラヲタ風劇団ひとりや男同士がちょいと少ない。
てな具合で、居心地悪くなるかと思ったけれど、「春」の第一声で、ものの見事に救われた。いまでこそ、現代楽器でもピリオド奏法を取り入れ、ツーツー・・、といった響きに慣れ親しんでいるが、マリナーはそんな風潮はまったくおかまいなしに、従来の正攻法な手法で極めてさりげなく四季を演奏した。
身構えていた自分が情けない。
30年以上も前に聴いたあの「マリナー&アカデミーの四季」が、ここに再現される思いだった。当時あれだけ、斬新だった四季も今ではごく普通。
レガート風に春が始まったかと思うと、夏では思い切り強弱を付け、秋では一転ほのぼのかつリズミックに、冬のうら寒い様子は思い切り写実的に。
正直いって、四季をここ数年まともに聴いてなかったから、新鮮このうえなく響いたもんだ。
アンコールで繰り返された冬の緩徐楽章がとても美しい。
オルガンを通奏低音に加えるのもよい。
雪の東北地方、窓の外には雪がしんしんと降り、それを炬燵の中でミカンでも食べながらながめる・・・・、こんなムードの演奏。変な印象かしらん?
オケの編成は、さながらNHK室内交響楽団。
第1ヴァイオリン8、第2ヴァイオリン6、ヴィオラ4、チェロ4、コントラバス2、チェンバロ、オルガン。
後半のモーツァルトも同じ編成。ここに、フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニが加わる。
軽めの低音の上に、主旋律のヴァイオリン群が乗って、聴いていてとても気持ちがいい。
1楽章は繰返しを入れたものの、早めテンポで、おそらく30分くらいの演奏時間では。
先だってのブラームスは、かなり表現にこだわったものの、このモーツァルトにこそ、我々がイメージするマリナーの姿があったように思う。
構成的には全体をキッチリとまとめ上げていて、真面目な表現だけれど、響きが爽快で明るい。スッキリと洗練されたモーツァルトは、お堅い筋からは相手にされないだろうけど、今日の聴衆、そしてマリナーの芸風が好きな私には全面的に受け入れられるものだった。
昨年の今頃、ハーディングとマーラー・チェンバーオケで聴いたモーツァルトは、先鋭で表現意欲が満載のスリル溢れるものだった。
そして今日のマリナーのモーツァルトは、日常的にある微笑みのモーツァルトで、いつどんな時に聴いてもフレンドリーで、飽きのこないものだった。
アンコールは、フィガロをやるかと思ったら編成の関係か、ディヴェルティメントで、うれしい誤算。実に気持ちのよいアンコール。
終了後、喝采に応えるマリナー。
コンサートマスターの篠崎まろ氏を早めに連れ去り、9時前には解散となった。
日頃、重厚・長大ものばかりのワタクシの嗜好。
本日は、ローカロリーで、すっきり爽やか!
あっさりした和食にも似たヘルシーなコンサートでありました。
マリナーさん、また日本に来て下さい!
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コメント
フィンジのCDの書き込みが終わったら、このコンサートの記事があがっていたので驚きました(笑)。
僕もこのコンサートに行きましたが、本当に楽しみました。
四季は、今のマリナーさんしか紡ぐことのできない世界だと感じましたよ。ただ、刺激的になるのでもなく、手堅くまとめるのでもなく。
モーツァルトはyokochanさんが書かれているように、いかにもマリナー風味の演奏でしたね。
それにしても、今回の来日でマリナーの評価は絶対に上がったと思いますよ。
是非また、来日して元気な姿を見せてほしいものですね。
投稿: ナンナン | 2007年10月30日 (火) 01時06分
ナンナンさん、こちらでもありがとうございます。
日付を遡って更新しました。時差ではありませんよ(笑)
いいコンサートでしたね。
聞き古した名曲二つが、こんなに新鮮に聴こえるなんて、何だか嬉しくなりました。
そして、おっしゃるように、久々のマリナー、ファンの評価を得たのではないでしょうか。N響の面々もリラックスして、気持ちよさそうでしたよね。
投稿: yokochan | 2007年10月30日 (火) 01時38分
はじめまして。マリナー関連のサイトを探してたどりつきました。
私もサントリーホールでのこのコンサートを体験しました。
マリナーといえば、幼い頃に繰り返し繰り返し聞いた指揮者でした。そのせいで、スリコミのように独特のフレージング、ダイナミクス、テンポ感が頭にあり、今回の演奏会で実際にそれを目の当たりに出来るのが楽しみでしかたありませんでした。
それにしても、「四季」「ジュピター」ともにマリナー節は全開でしたね。「異国」のオケであるN響を、完全に自分のサウンドにしてしまう手腕はさすがだと思いました。
御年83歳、24歳の私は今日の演奏会が最初で最後のマリナー体験となってしまうのかと思うと、ちょっと寂しくなりましたが、、、またきてほしいですね。
投稿: dota | 2007年10月30日 (火) 04時08分
dotaさま、ようこそおいでくださいました。
昨日のコンサートにご一緒だったのですね!
コメント拝見し、マリナーを小さな頃より聴き親しんでいらっしゃる由。私なんぞより、筋金級のマリナーファンですよ!!
私は演目からして、かなり軽い気持ちでいたのですが、<マリナー節>にすっかりやられてしまいました。
音楽を自己主張せずに、こんなに自然に語ることが出来る音楽家はそれだけでも立派なものだと思ってます。
マリナー体験、あれだけ、かくしゃくとしてましたから、絶対にまた日本に来てくれますよ。
今回の来日で、札幌と東京のファンに支持されたはずですから!
どうもありがとうございました。またよろしくお願いします。
投稿: yokochan | 2007年10月30日 (火) 22時42分
yokochanさんもやっぱりいらしていたんですね!私は先週のブラームスはちょっと「?」の感想だったのですが、この日は「四季」も「ジュピター」も本当に良かったです。マリナーの「四季」ってこれまで恐らく聴いたことがなかっただけに、とても新鮮に感じました。ピリオドとかモダンとか、もうどうでもよくなりました。マリナーには是非また来てもらいたいですね。
投稿: pockn | 2007年11月 1日 (木) 09時28分
pocknさん、こんにちは。出張につき遅くなりました。
またもかぶりましたね。ブラームスは賛否両論のようですが、私はあれもまた、マリナーの最近の一面と思い楽しく聴きました。
CDではあれほど鳴らしてなかったですが・・・・。
そして、このコンサートは気持ちいい演奏でしたね。
私も極めて新鮮な気分で聴きました。
たしかにおっしゃるように、ピリオドもモダンもないですね!
TBさせていただきます。
投稿: yokochan | 2007年11月 2日 (金) 23時22分