ホルスト 「雲の使者」(The Cloud Messenger) ヒコックス指揮
先だって休日出勤して、三田のあたりをさまよっていたら、インド・ネパール料理の店があまりにマニアックな立地にあったので、ランチに一人潜入してみた。休日だけあって、がらがらで大いに観察し、ネパール人のニイサンにも話しかけたりして楽しんだ。
これは、ネパールでは毎日食べるお袋の味なんだそうだ。その名は「ダルバート」。
カレーやスパイスを利かせた野菜の具をご飯に混ぜながら、一見味噌汁のような豆のスパイシーなスープをかけて食べる。
これが実にうまい。ほんとにうまいよ。ネパールの定食屋には必ずあるらしくて、少なくなってくると、すぐに足されてしまう食べ放題メニューだそうな。
私は、ネパールのエベレスト・ビールを飲みながらの食事だったから、断ったけど、どーですか、どーですか?ってお代わりを聞いてくる。でもそれほどにうまい。いいよ、ネパール。
ギュスターフ・ホルスト(1874~1934)は、「惑星」ばかりが有名な作曲家であるけれど、声楽部門にも大作がいろいろある。
ホルストは英国で活躍したから同国の人と思われがちだが、父親がスウェーデン人だった。
だからグスタフなのだ。
王立音楽大学在籍中に、V=ウィリアムズと親友になり、各地の民謡を採取してまわったりして、終生仲良く付き合ったという。
いい話だねぇ。
一方で、ホルストはインド・サンスクリットの東洋思想に感化され、一時その翻訳文などを読みあさった。その時期に書かれた作品が、この「雲の使者(メッセンジャー)」らしい。1910~12年の作曲で、「惑星」は1914~15年。
神秘的な雰囲気は共通するが、ハデハデしい惑星との違いと強烈なエキゾシズムに驚く。
4世紀インドの偉大な詩人「カリダサ」の同名のサンスクリット語による詩、実際はフレイザーの英語訳(Silent Gods and Sun-steeped Lands)を原作とした5部からなるカンタータのような作品。
私の英語力では、さっぱりわからない。
聖なる河ガンジスを越え、仏教・ヒンドゥー教の聖なる山カイラスにかかる「雲」を賛美する詩のようだ。
シヴァ神のこと、大いなる神のこと、狂乱の踊りのことなどが歌われている模様。
ネットで、「雲のメッセンジャー」の原作を発見し、邦訳したが、これがまたさっぱりわからん。しょうがないから、ホルストの書いた豪快かつ繊細な音楽に浸るだけにした。
この音楽は正直おもしろい。
神妙にに始まり、徐々にもりあがって合唱が入ってくるところは実にいい。感動する。
そして第2部中間部の抒情は、惑星の金星のようだし、一転、踊りの部分は、ペタントニックな要素が全開で、欧州人が感じたまんまのオリエンタルな雰囲気満載。
東洋を舞台にしたB級映画の音楽のようで、ちょいと笑えるわ。
ダンスが終わり、最後は、思いに深く沈んでいくかのような音楽になっていき、静かな瞑想のうちに曲を閉じる。
ホルストが東洋かぶれになったのは、一時のことだったらしいが、おかげで面白い曲を残してくれたもんだ。出来れば、ちゃんとした翻訳のもとに聴いてみたいぞ。
ヒコックスとロンドン響(抜群に巧い)、メゾにデッラ・ジョーンズをむかえたこのCDは、この曲唯一のもので、今後も録音される恐れはない。
こうした曲を明快にわかりやすく聞かせてくれるヒコックス。
彼とシャンドスレーベルがなかったら、英国音楽はどうなっていたろう・・・・。
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