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2007年10月13日 (土)

上岡敏之指揮 ヴッパータール交響楽団演奏会

Wuppertal

昨日の神奈川フィルに続き、再び、みなとみらいホール。今日もこの素晴らしいホールがドイツの響きに満たされることになった。
ヴッパータールはフランクフルト北部の街でそのオーケストラはこれまであまり知られていなかった。私は、以前シュタインのブルックナー5番を聴かせてもらったことがあって名前だけは知っていた程度の知識。シュタインの出身地であり、ヴァントにもゆかりの地。
しかも、昨晩のシュナイト師も永年音楽監督を勤めたという。こんな由縁もうれしい横浜公演なのだ。
上岡敏之は2004年から市の総監督を勤めているとのこと。

上岡氏はピアノのレペティートゥアから叩き上げのいまどき珍しいドイツの地方劇場からキャリアを積み上げてきている指揮者。かつてのカラヤンもベームもみんなそう。だからおおいに応援したくなる。

     モーツァルト  ピアノ協奏曲第23番
     ブルックナー 交響曲第7番


弾き語りのモーツァルトは、ピアノを縦に置いてオーケストラに向かって振りながら弾くのでなく、通常のソリスト配置で、前に出て来て豊かな表情と身振りで指揮をしながら、ピアノに戻っては弾く、という芸当をみせてくれた。
イ長調の伸びやかな旋律の引き込まれるような表情にいきなり聞き手の心は解放されてしまった。
ピアノもオーケストラも完全に一体化している。
2楽章の短調の旋律はピアノも木管も涙に濡れているかのよう。そして楽しく弾むような3楽章は、思わず微笑んでしまった。なんたるステキなモーツァルト。プレヴィンの柔らかなピアノもまだ耳に残るが、上岡氏の表情豊かなイキイキとしたモーツァルトも心に残しておきたいものだ。

Wuppertal2 こんなモーツァルトのあとに、だれがあんな壮絶なブルックナーを予測できようか先月ライブ録音されスピード発売された7番の交響曲。演奏時間91分という触れ込みである。
ほんとうに、どんだけ~の思いで後半に挑んだが、それはホントウであった

1楽章だけでも30分。
確かに90分はウソそじゃなかった。
何故こんなに長いのか。
ハース版でもノヴァーク版でもない、上岡氏がシャルクやニキシュが手を加えたスコアなども含めて検討推敲した、彼独自の版なのだそうな。
パンフレットには、「ブルックナーが望んだであろう繊細なこの曲本来の響きに近づきたい」との氏の言葉が添えられている。

そして長いということは、遅いということで、1・2楽章でそれぞれ30分以上。
第1楽章、極めて繊細に、極めてゆったりとトレモロが始まり、第1主題がこれでもかというばかりに美しく始まる。それから、リズミックな第2主題までが長かったこと。
でも戸惑いはここまでで、あとは90分間にわたって上岡ブルックナーの呪縛にかかってしまったかのようだった。
第2楽章も大河のようにじっくりしたもので、第2主題がいやがうえにも美しい。
クライマックスでは、シンバルとトライアングルが鳴らされるが、それも必然と充分に納得できる頂点の築き方。そして私は、「ジークフリートの葬送行進曲」とだぶらせてしまった。
一転第3楽章は、目の醒めるようなリズミカルなスケルツォ。でも中間部のトリオはまたもや腰を据えてじっくりと歌うものだから、わかっていてもうれしくなってしまった。
そして、通常あっけないゆえに、座りの悪い終楽章が大交響曲の立派な終楽章として存在感を増している。中間部に現れる楽器の様々なやりとりも、ゆったりとしていて別な次元にいざなわれるような気分。ついに終結部はじっくりとものすごい盛上げを築きあげて壮麗なエンディングであった。上岡氏とオーケストラは微動だにしない。
ここで前夜の神奈フィルをもしのぐかのような静寂が・・・・。
会場がブラボーの嵐に包まれたことはいうまでもない。
私はもう感動して目頭が熱くなってしまった。

上岡氏の指揮ぶりは、動きが豊富で、顔の表情も豊か。ここぞという時は、ものスゴイ気合とともに指揮棒を振り下ろす。見ていて、俺はこう思うからこうしたいんだ!!という強い意志を感じる。その強靭な意志のもとに、楽員は一丸となり、聴衆も一体となってしまう。
豊かな音楽性とともに、稀有な能力をひしひしと感じた次第。

アンコールに、ワーグナーの「ローエングリン」1幕の前奏曲が演奏され、ブルックナーの思いを完結させてくれた。
071013_134802 上岡氏、楽員が去ったあとも拍手に応えて何度か登場。
最後に楽員をもう一度呼び戻し一同で拍手に応えて、長大なコンサートはお開きとなった。
充実極まりない土曜の午後、今日は明日にそなえて横浜を早々にあとにした。

ドイツ国旗に、横浜市章。
連日の横浜ドイツ祭り、明日からは東京に戻り、ワーグナーとシェーンベルクだ。

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コメント

情景が目に浮かびます…感動的な演奏会になったようですね。
私には、90分間じっくり聴いていられる自信はなかったですが、本当に音楽が好きなyokochanさんに行って頂いて良かったと、心から思っています。

投稿: 佐都 | 2007年10月14日 (日) 00時32分

佐都さん、こんにちは。
おかげさまで、素晴らしい体験ができました。
正面から上岡氏を見据えることができ、彼が何を訴えているのか丸見え(?)でした。
連荘は半ばですが、心地よい疲労感に満足です。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2007年10月14日 (日) 09時44分

はじめまして。
拙ブログにコメント&TBいただき、
ありがとうございました。
当方からもTBさせていただきました<(_ _)>。

昨日の公演は、立ち会えて本当に良かった
と思いますね。
ブル7、最初の2楽章は期待以上の聴き応え
でしたが、その後の2楽章もとても充実して
いて、最後まで堪能できました。
ふだんは第2楽章までしか聴かないことの
多いワタシ(^^;もグイグイ聴けました。

今後も上岡さんは注目必須ですね!

投稿: 左党 | 2007年10月14日 (日) 22時17分

左党さん、コメント&TBありがとうございます。
あんなブルックナーはめったに聴けることがないと思います。
ホールと聴衆とオケが一体化してしまったかのような集中ぶりでした。私も左党のはしくれです。またよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2007年10月14日 (日) 23時38分

オペラシティの2夜のコンサートを聴き、上岡のブルックナーのCDを聴いて、おそらくそうだろうなあ。。。と思ったようなコンサートだったようですね。うう。予定が入っていなければ行きたかった。
11日の悲愴もなかなかの盛り上がりだったんですよ。
上岡はすっかりこの手兵のヴッパータール交響楽団とのコンサートでファンの心を掴んでしまったように思います。
ヴッパータール交響楽団もスーパーオケではなかったけれど、なかなかいい働きをしていました。なんとなく、音が神フィルを思い起こさせたんですが、シュナイト繋がりだから?

投稿: ぴよ! | 2007年10月15日 (月) 11時14分

ぴよ!さん、はじめまして(ですよね)
東京の2つのコンサート行かれたんですね。
今回は、ひょんなことからチケットを譲っていただいたものですから、悲愴やベートーヴェンのプログラムは後に知りました。あんなブルックナーを聴いてしまったものですから、気になってしょうがなかったのです。
やはり、盛り上がったのですね。
仰るように、前日の神奈フィルが耳に残るうちに同じホールで聴いたものですから、よけいに音の類似性を感じました。
このコンビで今後何度も日本に旋風を巻き起こすような気がします。ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2007年10月15日 (月) 12時15分

ヴッパータールへ行ってきましたが、オーケストラとは入れ違いのようです。フランクフルトの北方の町?何処のあるかお分かりですか? むしろケルンの近所と言った方がより正確です。上岡さんのことはかなり有名ですね。同オーケストラには何人か日本人のプレーヤーもおりますので
専門家の間ではそれなりに知られたオーケストラのようですね。

投稿: 123 | 2012年11月12日 (月) 18時29分

123さん、コメントありがとうございます。

ヴッパータールへ行かれたのですか。
ドイツのさほど大きくない街には魅力を常々感じております。
あまりその場所を意識したことはないのですが、なるほど、ケルンの近所ですね。
ケルンにも有力な放送オーケストラがありまして、こちらも日本人がとても多いし、かつては若杉弘さんが指揮者を務めておられました。
上岡さんも、同地では人気のようですね。
嬉しいかぎりです。
ヴッパータールのこちらのオケは、かつて、NHK交響楽団で活躍したホルスト・シュタインも指揮者をしていてそちらでも親しみが湧きます。

投稿: yokochan | 2012年11月12日 (月) 23時59分

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