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2007年10月12日 (金)

シュナイト指揮 神奈川フィル演奏会

20071012_1 神奈川フィルの定期演奏会
10月は音楽監督のハンス・マルティン=シュナイト師。
プログラムは、右のとおり、私の好きな作品ばかりの純ドイツもの。
これを聴かずにいられようか!

実によく考えられたプログラム。この演目の3曲はいずれも静かなエンディングを迎える。そして秋のムードにぴったりで、寂寥感とともに死を予感させる渋い3曲。
こんな見事なプログラミングに聴いくまえから感動の先触れが。

「未完成」は、私の交響曲フェイリバリットにも選出された(偉そうですが?)お気に入りだけれども、本日のシュナイト師と神奈フィルの演奏はほかの誰ともことなるユニークなもので、まずはそのテンポ。
だれよりもゆったりで、隅々まで丁寧。ゆっくりとは言っても、鈍長だとか重厚だとかは無縁。音はむしろ明るく柔らかい。神奈フィルの音色に毎度言えることだが、これはこのオケの個性でもある。
 がしかし、アフターコンサートでご一緒いただいた神奈フィル団員の方のお話では、なんでも合わせられるフレキシビリティが神奈フィルの得意とするところ、とのことで、これには驚き! ってことは、オケの個性でもある以上にシュナイト師の音楽性でもあるのだろうか。ミュンヘンに代表される南ドイツは、そこのオケも暖かくまろやかな優しさと明るさが

ある。この名指揮者のもとで、本場南ドイツにも劣らない音色を奏でているのが、われらが神奈川フィルハーモニーということになる!!

E_pict_hanns_martin3 35分くらいかけた「未完成」、このテンポにオーケストラもしっかりと付いていった。われわれ聴き手も一生懸命にならざるを得ない。1楽章が終わったときに、思わず大きなため息が出てしまった。いやため息というか、息継ぎのような気分。でも重々しくないから、気持ちは安らか。
2楽章ではもう天国的な気分に満ちてしまった。
弦のやさしい刻みの上に、管がたうたうように流れ、歌う。
全曲が終わり、マーラーを聴いたかのような満足感に満たされたものだ。

休憩後のR・シュトラウスのソリストは、松田奈緒美さん。沖縄出身の新鋭であるが、すでにドイツや国内でオペラとリートに実績を積んでいるらしい。
彼女の繊細にして強い発声は、まるでバーバラ・ヘンドリックスを思い起こすかのようなもので、第1声から聴衆を虜にしてしまったかのようだ。
そして彼女をやさしく包み込むかのような声楽の神様の指揮するオーケストラ。
歌が入ると音を巧みに押さえ込み、オケの間奏では心の底から歌わせる。
石田氏のヴァイオリンソロを始め、ホルンも木管も絶美の世界。
「夕映えのなかで」での日の沈みゆく空に飛ぶ鳥の鳴き声のような美しいエンディングに、松田さんも感極まって涙を浮かべる姿もあった。
 実演ではかつて一度だけ、J・ノーマンと小沢征爾を聴いたことがあるが、その圧倒感とはまた全然次元の異なる、まるで水彩画のような美しい名演であった思う。

若書きの「死と変容」は、これまたゆったりとしたテンポによる堂々たる演奏。
こんなにじっくり延ばしに延ばして、聴きなれないフレーズまでよく聴こえてしまう。
細部にこだわらず見通しが良いからもたれない。むしろここでも音色は明るく、きらめいて感じたくらい。本日の演目のなかで唯一最強のフォルテが数回ある曲に、終始腰をかけて指揮をするシュナイト師も3回立ちあがった。
死と戦う苦闘の結末というよりは、明るく澄み切った境地の死を感じさせるエンディングに、音が鳴り終ってからマーラーの第九のあとのような静寂がしばらく続いた。

071012_173812 毎度深い名演をしてのけるシュナイト/神奈フィル、いつもながらドイツを聴くなら横浜へ、「イキマショー」。
アフターコンサートも楽しいひと時でした。皆さんありがとうございました。

そして私もドイツもので固められた生涯初の、怒涛の4連荘。気が付くと手帳が連日埋まってしまった。えらいこっちゃ。

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コメント

どうも先日はお付き合い感謝です。
本当に今でも感激が新鮮に残っています。
こんな音楽が消える私は本当に幸せ者だと思います。
素晴らしいコンサートでありました。

投稿: yurikamome122 | 2007年10月14日 (日) 13時10分

こちらでは初めまして…ですね。
先日は御一緒させていただきありがとうございました。
ブログを拝見させていただくと、色々聴かれている様で勉強させていただきました。
是非フルートアンサンブルの世界も御一緒いたしましょう♪

投稿: めいぷる | 2007年10月14日 (日) 15時07分

素晴らしい演奏会でしたね。私もシュトラウスの音楽が頭の中で今も鳴っています。今もまだ夢の中のようです。
シュナイトのソプラノの声量に配慮したデリケート極まるオーケストラ・コントロールと、それに応える石田をはじめとするオケの素晴らしさ。歌い手の松田さんは初めて聞く名前でしたが、このオケに支えられて世紀の名唱をやってのけてしまったのでした。
「夕映えのなかで」のあの美しさ!聞けかった方には気の毒ですが、あれこそ世紀の名演だったと思います。澄み切った世界観こそあの四つの歌の世界だと思うのです。
書き出したら止まらなくなってしまいます。今日は風邪気味ですのでこの辺で…。

投稿: Schweizer_Musik | 2007年10月14日 (日) 15時14分

yurikamomeさん、先般はお世話になりました。
プログラミングからして名演の予感がありましたが、あれほどまでとは。神奈川フィルも聴くたびいい音が出てますね。
横浜にいらっしゃる皆さんがうらやましいです。
また是非お誘いくださいませ。

投稿: yokochan | 2007年10月14日 (日) 22時55分

めいぷるさん、先般はどうもお世話になりました。
大変素晴らしい音楽会と楽しいアフターコンサートでした。
私など、手当たり次第に聴いているだけで、お恥ずかしい次第です。故あって連荘コンサート・オペラですが、あのシュトラウスサウンドはいまだに耳に残ってます。
私のフルートは楽器も腕もさび付いてしまって、こちらもお恥ずかしいです(笑)
またどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2007年10月14日 (日) 23時02分

scweizer先生、先般は大変お世話になりました。
シュトラウスの最後に到達した世界、まさにご指摘の澄み切った世界が見事に味わえました。
あんな素晴らしい瞬間に皆さんとご一緒できて感激です。
また神奈フィルでお会いしましょう。

投稿: yokochan | 2007年10月14日 (日) 23時08分

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